ふふ、どうした?私のこの美脚に見惚れていたかね。
なに照れなくてもいいじゃないか!本当のことだろ?
脚は私の長所!つまりそれだけ自信があるもの。
きみに褒められると嬉しいよ。もっと褒めてくれていい!
私もきみが大好きさ。どこがって……ウーン、顔かな。
Character
"小雨"の清けき風景を彷彿とする名に似合う淑やかでさめざめとした雰囲気とは似ても似つかない陽気な女だ。人並み比べゆうに五倍の好奇心は、道端の小石に躓きすっ転んで膝を擦りむいてみたところでその勢いを衰えさすには幾分も足らず。意欲に比例する熱く積極的な感情表現はどれも嘘偽りない本音。初対面だろうが幼馴染だろうが躊躇いなくパーソナルスペースを詰めていく奔放な横暴さは、絶妙に甘えたな人懐っこさが何処か幼さを垣間見るあざとさで許容されること多々である。ただ、表裏などない開けっぴろげで快活な言動に反して、存外思考は冷静かつ堅実であると知るのは、大学進学をと決めた進路とモデルという職業を両立させた胆力にある。したいやりたいと駄々を捏ねつつも挑戦の為の爪を研ぐ間は惜しまない。手にした武器を錆びさせることなく自己研鑽に余念なく、持ち前の足の長さを長所と定め、抜群のプロポーションでモデル界にてライトを浴びる。進学先、世界中の言語の文化を学ぶ傍らで、ボディランゲージが物を言う静止画の世界に挑む二足の草鞋。決して楽な道ではないけれど、覚悟を決めてしまったらもう己を止めるものは何もない。そんな覚悟に至るきっかけは、近所に住む幼馴染──彼の気持ちをもっとたくさん知りたくて──なんて、乙女心起因の動機は誤魔化し切れない恋心以上にトップシークレット。
Sample role
(ちゃぷん。髪から落ちた水滴を飲み込んだ水面が音を立てる。深めで狭い浴槽に足を折り畳んで深く息を吐いた。浸かる白濁色のぬるま湯に疲労も憂いも苦慮もぜんぶ、全部溶かしてしまって、明日また新しい自分になるための準備をする時間だ。そのまま身体の輪郭すら揺蕩っていくのに抗わずにぶくぶくと口元まで沈んだ。あったかくて気持ちがいい。住処にしている祖父母の少し古くてけどいい匂いのする家の中、どこもかしこも丁寧に生きてきたふたりの軌跡が息衝いていて大好きだけれど、とりわけお風呂は格別で、毎日ぴかぴかに磨きあげる報酬に一番風呂を頂く手筈となっていた。肩まで浸かってたっぷり10分、ぽーっと茹で上がるのを待つみたいにじっとして、やがて緩慢な動作で湯の中に収まる爪先を掴む。今の自分の大事な武器。白く長くすんなりと伸びる足は、女にとって限りある恵まれた才能のうちのひとつだった。指先から念入りにマッサージをしながら、今日一日を振り返るひとときもまた重要なルーチンの一つ。)『SavneHAV』──…恋を、纏う靴。(呟きは存外浴室に反響しない。浴槽の隣、庭の垣根が目隠しになった程度の明け透けに開いたままの窓から夜空が見えていた。新しい仕事の話はいつも楽しみで嬉しい。『Cherry-pick』が出すラインで嫌いなものなど一つもないが、認めてしまえば日に日に焦がれ強まるようである恋心に重ねて期待もじわじわと高まっていく。私にとっての『SavneHAV』は、彼のもとへと駆け寄っていくための靴だろうか。彼の隣で朗らかに笑っていられるための靴だろうか。)……男性アイドルって誰だろうなぁ。(ぶくぶくぶくとまた沈んだ。高揚感を鎮めるべく。話題性を得るために既に高名な芸能人と共演するブランドは少なくない。はたして此度、男性アイドルを敢えて起用したのは何故だろう。そして、私はどうすることが一番だろう。いくつもいくつも作戦を練って万全を期してカメラの前に立てるようにする。そうやって生きてきた。)やっぱり、デートの為の、靴かなぁ!(ざばんと湯からあがって床に立つ。水を弾く素肌を最後の仕上げとして磨き上げなくては。そういえばデートなんて行ったことがない。もし行くとしたら、誰とどこへ何を着て。物思いに耽りながら奏でる鼻歌は大好きなアイドルの新曲の旋律。)はじめてのでぇとは きみが いい~♪(場所はどこでも良くて、"ふたり"でいることが辛くないのがいい。口遊む替え唄も捗る夜半。開いた窓から筒抜けの歌声は、風呂上がりの歓談で祖母の微笑まし気な問いかけがなされるまで。女の間抜けで幼稚な願望を垂れ流すまま、調子良くご機嫌に続いた。)