逆先 夏目-Natsume Sakasaki-

君に似合う靴を選ぶ、なんだかお伽噺みたいだネ♪
生憎ボクはガラスの靴も赤い靴も用意する立場であって、
着飾った君を待つ役目は柄じゃないんだけれド。
0時の鐘が鳴っても正体を知るボクから逃げる必要はない。
……ねぇ、ボクと一緒に踊ってくれル?

Character

その場凌ぎの口唇は皮肉的で揶揄混じり。冗句を舌に乗せれば本音を匿い煙に巻き、面倒事も諍いも飄々として要領よく避けてみせる。賑やかしは遠巻きに俯瞰したがる性状は、自らを率先して前に売り出すことこそしないが、自身の役割や在るべき姿を瞬時に解して、それに相応しい態度を示してみせる利口な性格も持ち合わせている。『魔法使い』と言わしめるに、やや胡散臭めな所作は懐悟らせずに掴みどころもなく、猫のような気まぐれさも相俟って絶妙な人懐っこさを披露しながら他人との距離感は思うがままに寄って離れるマイペース。信条に由来する独特の喋り方は本人の意志で操られ、決してお遊びのおまじないなんかじゃないことはその振る舞いや真摯な眼差しが裏付けるだろう。達観して可愛げのない態度は齢に不相応な印象を与えがちだが、反面内に隠した熱量は少年らしい瞬発力に満ちていて、人並みに悩み試行錯誤して、望む未来を諦めない根性を覗かせる。高校生の時分、怒涛の日々の中で密やかに温め続けた恋は、現在重たい蕾から大輪の花へと成長しかけている最中。愛と輝きを齎すべく、幸福を届ける魔法使いとして。そして、ただの逆先夏目として。この世界で唯一の愛を語る未来は、はたしてどれほど手を伸ばせば届くんだろう。

Sample role

(ふぅん。少年は話を聞いて考えるように腕を組んだ。ソファの背もたれに深く寄りかかるようにして。目の前の机には此度の企画書、その向こうにはにこやかに破顔する『センパイ』。プロデューサーと後輩は欠席で、他には誰もいなかった。モジャモジャ頭の彼は言う。なんでも己を特に推してくれていて素晴らしい企画であったから二つ返事で説明を受けてきたとか。)……まァ、嫌な仕事ってわけじゃないカ。(「Cherry-pick」というブランド名は知っている。だが新ラインという「SavneHAV」の中に知り合いもコネも無ければ、いちデザイナーという名のある男のことも存じ上げない。大方、社交辞令を鵜呑みにした可能性も否めないが、もっと華やかで勢いのある若手アイドルを差し置いて、現状は抜擢されたというイメージモデルの名前は現状己一人だった。)様子見、或いは小手試し……なんて、純粋にボクを気に入ったのが本当かもしれないネ。(承諾の意を込めて微笑み返すと、『センパイ』は一層嬉しそうに相好を崩した。存外素直にいらえた少年に対し、普段のような皮肉も当たりの強さもなかったことを不思議に思わなかった彼の反応は都合がいい。なんと言っても、ブランド名に心当たりのある理由が限りなく私的な事情に依るものであるとは誰も知らないのだから。変に鋭く容赦がないこの厄介な男に余計な話をせずに済んだと安堵したまま、会話少なに話は終わりならばとレッスンに立つ。受けた仕事の顔合わせと本格始動の日取りを確認するべく企画書を手にすると、笑顔のままの彼は言った。聞き流していたが再三の喜びを示して、「きっと夏目くんなら似合いますよ!だってあんなに可愛い靴!」──聞くなり、瞬時に眉間の皺を深くさせ、少年は感情を削ぎ落とした単調な声でゆっくりと告げた。)うざい(やってられない。もうこの部屋に未練はない。痛くも痒くもなさそうにひどいなあと呟く彼にも興味はない。このブランドがどんなコンセプトで何のターゲットを絞ってやっているか知らないのか。否、知っていて尚心から"似合う"と言っているかもしれないから質が悪い。"言葉の代わりに愛を捧ぐ贈り物"──そんなの、ボクが受け取ってたまるものか。欲しいのは返事だけだ。贈りたいたったひとりをまなうらに描いて、無情に部屋を後にした。取り残された彼の追い縋る声を背中ごしに聞きながら、少年は"特別な靴"の姿をそっと夢想した。華奢な足先を彩る大切な一足を。)