朔間 凛月-Ritsu Sakuma-

ハイヒールって、元は歩く為のものじゃなかったっていうよね。
自分を魅せるための表現技法のひとつ。だから足には優しくない。
ま、そんなものを贈ったのは他でも無い俺なわけだし……。
責任取って、あんたが疲れてふらつかないように隣にいてあげる。
支えてあげる。だから安心して、甘えてくれていいよ。
お姫さまのエスコートは、騎士の務めだもんねぇ……♪

Character

真夜中の闇を切り取ったかのような黒髪は柔く細く、柘榴石のような赤眼はいつだって眠たげに細められている。所構わず眠りこけては気まぐれに目を覚まし、甘えるように擦り寄ってきたと思いきや次の瞬間あっさりと顔を逸らす、そんな猫のような男だ。何かと無関心であるが故に温厚な性格だが、睡眠を妨げるものには容赦しない。また自称吸血鬼なだけあって日光に弱く、かつては昼夜逆転生活を送っていたものの最高学年に進級を果たしたことを機に生活リズムの改善を図っている。面倒事を嫌い、割に合わない労働を好まず、極力自分自身で動かずに済む道を模索するべく推理力を高めているとは本人談。事実、授業中も惰眠を貪っている所為で成績は芳しくないものの頭の回転は非常に早く、冷静で広い視野を持ち合わせていることもあって所属するユニット『Knights』では参謀を務める程。一方で人を傷つけることに負い目を感じてしまう優しすぎる一面も。一度懐に入れた相手を大事にするのも、そんな優しさに加えて根っこの部分が寂しがり屋であるためだ。人間は変わるものだと頭では理解しているものの、出来るなら皆変わらずに、己が傍を離れずにいて欲しい。そんなどうしようもない人恋しさに明確なかたちが生まれたのは二年ほど前の事。家族とも呼べる大切な幼馴染は一人で十分だったはずなのに、いつしか心の半分を占めるようになったその少女へここぞとばかりに甘えたを発揮しつつ、現状はまだ周囲を牽制するに留めている。大切だからこそ、愛しているからこそ、焦燥のあまり指の隙間から取り零してしまわぬように。

Sample role

(朝起きて、夜に眠る。そんな、『人間』なら当たり前の生活に体を馴染ませる最中、それでも身に沁みついた習慣が消える訳では無い。その日も賑わう校舎内に背を向けふらりと足を延ばした先、日差しを避けてお気に入りの木陰で背を丸めたなら程無くしてあどけない寝息が聞こえてこよう。幼馴染を頼ることなく登校している時点でかなりの体力を消耗するものだから、昼休みを活用し少しでも休息を取らねば後の活動に支障を来してしまう。そんな名目で芝生に横たわり睡眠を貪るその姿は、ネクタイを締める以前と相違なかった。喧騒は遥か遠く、春の暖かい空気が頬を撫でるのが心地良い。夢か現か、揺蕩う意識の中で描いた『こんなに気持ちの良い日はうっかり授業を寝過ごしてしまっても仕方ない』なんて甘っちょろい言い訳は、「見つけましたよ凛月先輩!」響いた王の呼び声に、泡のように弾けて消える。)ふぁあ、ふ……。なぁに……?俺の睡眠を邪魔する者は、たとえス〜ちゃんでも容赦しないよ……?(腕と背筋を伸ばして身体の凝りを解しつつ、不機嫌な声と眠気を孕んだ眼差しを向けるものの、返ってきたのは慣れたものだと言わんばかりの謝罪。「ですが、大切なお話がありまして。」と神妙な顔をする『王さま』を前にすれば、これ以上寝起きの八つ当たりをするのも憚られる。もう一度だけ大きな欠伸を零したなら、続きを促すように小首を傾げよう。)それは、『Knights』としてじゃなく、俺個人にってことだよねぇ……?全体に向けてだったら放課後のレッスンでも、『ホールハンズ』を使ってでも出来るし。わざわざ俺を探して会いに来たってことは、結構急ぎの、仕事の依頼とかそういう話?(予測される展開の中で最も可能性の高いそれを選び口にすれば、首肯と共に書類を手渡される。新しく立ち上げられたブランドのメインモデルを募集しているとの要項を筆頭に、コンセプトやサンプル画像、今後のスケジュールや共演予定者まで記載されている。「恋を纏う靴」と冠したそれらは主に女性をターゲットに展開されるという。言葉の代わりと成り得る愛の綴り方。それはお姫さまに傅く騎士たる己にうってつけだ。相手役にと示された名もまた。紙が擦れる音と春風の囀りが優しく奏でられる中、すべてに目を通し終える頃にはすっかり気持ちは固まっていた。)ス〜ちゃん。俺、この仕事受けようと思う。新米騎士が増えてばたばたしてる中で申し訳ないんだけど……他の人に譲りたくは無いんだよねぇ。(胸中に巣食った恋情を、仕事を笠に堂々と注ぐことが出来ると言うのなら利用しない手は無いだろう。生真面目な菫色は一瞬驚愕に丸まったものの、すぐに微笑を湛え頷いてくれた。去っていくその背へ謝辞と共に手を振れば、今一度手にした書類に視線を落とす。共演の項、無機質な字面を柔く撫でては、脳裏をよぎった愛おしいかんばせに唇を弛ませる。彼女の名前が記載されているというだけで、たかが紙切れすら愛おしい。「初めての共同作業だねえ……♪」なんて口遊んだなら、そこに柔く口付けた。)