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(君のとなりと初夏の宵。) |
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![]() 鹿目舞花 |
(春の暖かな陽気が生温い風に連れ去られる季節。最高学年の肩書きも随分と身に馴染み、性分上培われずに久しい威厳は然し通常運転にて。同時に随分と長く寄り添った慕情は今日とて胸裡を脅かし、何処へ居たっていっとう人目を惹いて止まないその姿を練習の合間に盗み見しては、ギュッと心臓に負荷を掛けるのももう慣れたものだった。陽が落ちても熱気蔓延る体育館の熱量はそこそこのもので、チャイムが終わりを告げる頃には彼に近寄るのも億劫だ。居残り練も厭わない体力馬鹿とて同じ場所に彼の居る折は別の話で、この時ばかりは早々に切り上げ部室へ撤退するつま先は何よりわかりやすい。汗拭きシートとシーブリーズでどうにか女子としての最低限を取り戻しつつ、後輩を差し置いて半ば強引に鍵締めの雑用を買って出るのは言うに及ばず、)……木兎っ、体育館閉めるよ〜!(ささやかな接点のそのひとつを、余すことなく行使する為に他ならない。ジャージから装い変えた制服のプリーツを正して、入念に整えた前髪を指先で梳いて。意識せずとも弾む声を投擲したら、くるりと指先で回す鍵がチャリと音を上げた。彼のチームメイトがこの段まで残っているなら「お疲れ〜」なんて気安い声を掛けて、)ほらほら早く、もうすぐ見回り来ちゃうよ!帰ろ帰ろ!(口先ばかりで急かしてみせて、なんなら片付けも手伝う所存にて。その背をぐいぐい押してみせる戯れは要は、帰路を共にせんとあわよくばを付け狙う浮ついた乙女心だ。) |
Published:2019/06/02 (Sun) 14:54 [ 7 ] |
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ハイ!夏でもとなりひっついて暑くなくなるアイテムといえば? |
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![]() 木兎光太郎 |
(薫風の誘いに攫われる干したてのビブスの裾を視線が追えば、新緑の木陰の向こうに燦々と輝く陽光が日に日に強さを増して行くのが分かる。夕暮れを過ぎてもほのかに残る熱気に助長され、練習後の蒸した体育館は暑いだなんだと文句をたれる幾名かが生まれはじめた頃合い。レギュラー陣三年などはその筆頭で、やや辟易した顔にて呆れと諦観じみた『もう終わろうぜ』の声を何度かあげるも、声かけられた先、我らが主将のミミズク頭は「やだ!」の一言で以て封じ次のトスを強請る。既に本来の練習時間より延長すること数十分。はたして説得の為の誘導を副主将らが考えあぐねる刹那、飛び込む鶴の一声は清涼感を伴っているかのような幻想の元、フロア一帯に響き渡った。)もうそんな時間!?(聞けば否やの一点張りの男の反応が頓に変わる。『鹿目~~~!!』さも救いの天使或いは女神だとばかりの歓喜の声とともに場は一斉に締めの流れへと向かい、若干不満そうにとんがった唇が振り向くも片付けを邪魔するような幼稚さは本日に限っては抑え込まれたらしい。少女の姿を一瞥しては、調子良く破顔一笑。大手を振って迎え入れた。)カノ、この後鍵閉めてからちょい待てる?つーか待ってて!帰ろ、一緒に!(急かされるまま、最後に収納すべきボール籠を用具入れに押し込みながら、返事はひとつきりしか聞かないつもりの提案を投げつける。次いで「あかーし今日俺部誌?チガウ?……おっけー!」部員との意思疎通はそこそこに、望む返事を受け取れば忙しない動作は些かの空白も挟まずに、)すぐ行くから、正門集合!(念押しの良いよな?を押し付けて、足早に部室に引っ込んだ男が再度現れるのは、すぐと言った前言通りの数分後。制服姿の結びきれないネクタイが夜風にたなびく。) |
Published:2019/06/03 (Mon) 01:52 [ 13 ] |
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ぅえっ!?…………あれだ!ニトリのひんやり抱き枕!! |
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![]() 鹿目舞花 |
(手厚く出迎えられたるげんなり顔の数々も随分と見慣れたもので、うははと思わず唇を跨ぐかろやかな笑声は薄情に他人事の比重。練習馬鹿の体力オバケたる彼の気持ちも解さないでもないから小指の先程度の同情は双方へ、けれど太陽とも見紛う笑みを浴びたら元よりちょびっとだけ抱いてた気後れも一つ残らず弾け飛んでしまう現金。心臓がぴょんと跳ねる。)!! ぅ、うんっ!待てる、待ってる!(瞬間全てを取り残し狭まる視界だって都合の良いもので、目論見叶えばキラキラが否応なく景色を彩ってしまう。ガッツポーズを心の中に押し留めたのは我ながらファインプレー、手短に告げられた念押しには「ハイッ」と背筋伸ばし敬礼見せるは浮かれた所作。駆け抜ける背に手を振り見送ってから、喜々に駆られ弛緩しきった頬にワンテンポ遅れで頓着しては気恥ずかしくなって両手でむにむにと均す。指先から伝う体温がいつもより高くて、意識せずとも彼への気持ちを自覚させられる何度目か。とんとん拍子に片付いてゆく周囲へ手持ち無沙汰にボトル回収を手伝ったりしつつに、顔馴染みのマネの『ホント仲良いよね〜』なんて一声に「そっかな?!」って上擦る声色はいくら諫めたとて笑みのかたちになってしまう。して目的果たせば口実の鍵返却は迅速に、幾度機を得たって落ち着きない心地は拭いようもなく、見慣れた背丈に飽く事なく忙しなくなる脈拍をひた隠しながら本日二度目のお疲れを手向けよう。部活生の下校も大方済んでいる時分、そう人気も多くない帰り道。ふたりきり。踏み出す一歩さえ惜しくなって、徒行は常に比べ随分と緩慢だ。連れ立つとなりを見上げる。「夜はまだ涼しいね」とか「今日のご飯なんだろ〜」とか、生産性のない言葉たちが空白を埋めては消えてゆくさなかのこと。)てゆかさぁ、木兎ってエースなわけじゃん。(何気無い切り口は突拍子もない。こんなんでも、とは言わなかった。コートの中と外でのギャップを知ってるから。)……こんなとこ見られて、ファンに突然グサーッ!とか、……ないよね?!!(今更といえば今更すぎる危惧を大真面目に宣ったら、迷子の指先がエナメルのショルダーをぎゅっと握り締める。ついでに付した「……実際いるもん??」は情勢調査の心持ちに違いない。) |
Published:2019/06/04 (Tue) 19:00 [ 23 ] |
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枕挟んで抱きしめりゃいいの?ちな満点回答はアイス食べたい! |
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![]() 木兎光太郎 |
(難儀な駄々っ子を引き剥がす最有効打は然るべき人物のお迎えを寄越すことだと、俊敏に消えていなくなる現金な背中を見遣った涼しげな眼差しは理解した。彼がそれを実用化させるべく思惟を巡らせ始めるのをよそに、完全お子様扱いのご本人は既に豪胆に身嗜み整えバレー100%の思考を帰宅モードにシフトした頃。間もなく「お待たせオツカレ!」の声が夕闇に響く。剥き出しの額と双眸が捉える彼女の姿がいつも通りに可愛いことに、隠された彼女の努力の詳細を理解せずとも理屈は分かる。好きな女が可愛くない訳がない。)おう?……おおう?! エースである俺の、ファン……!!!(耳朶を撫ぜる触りのいい言葉を先ずは拾い上げた都合良い聴覚は、素晴らしい響きとばかりに全身で味わって得意げな笑みを浮かばせる。二の次にした彼女の憂慮に応えるは「ねーと思うよ?」と呆気ない返答に加え、ううむと神妙そうに顎に指先を当てる考える仕草はわざとらしい。)ウーム……"こんなとこ"って、一緒に帰るくらい?じゃちょい物足りなくない?どうせならこう、ガッ!っとさー……(刺されたら、のIFを想定する思考は些か物騒だが、表情は真剣なものに変わっていた。傍らの少女を見定めるような不躾な視線の後、広げた両腕は物言わぬ期待込めた視線付きの懇願だ。下手な下心がない分思い切りのいいハグの要求。待ち構える姿勢で、来い!と胸中で呼ぶのは例えば飼い犬とじゃれ合うくらいの軽やかさに似ている。嬉し恥ずかしな色気こそ皆無のかなしさは、彼女の反応がなんにせよ笑い飛ばせるくらいの遣り取りだからこそ。はたして本題は何だったか。歩道をいっぱいに使った戯れは止まらない。)俺のファンにシットされて刺されるくらいのカンケイだって思ってくれてるってーことね。(漂わせる明らかな上機嫌の理由を事もなげに口にして、満足そうに細める瞳には常以上の欣喜が乗る。) |
Published:2019/06/05 (Wed) 16:46 [ 28 ] |
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抱ッ…〜っぁぁあまって今のなし!暑いねアイス食べてく!?!? |
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![]() 鹿目舞花 |
(夜行性の猛禽がいくら彼に似ていたって、真昼間を錯覚する溌剌は欲目か彼の性分か。直視に難いのは惚れた弱味に違いなく、あっちこっちと迂回して結局彼の横顔へと出戻る視線の落ち着きなさ。己の言葉に気を良くするのだってよく知れた性分、さも上機嫌な反復にフフと口許が綻ぶ。)そそ、『キャー♡光太郎く~ん♡』みたいなそーゆー……全国レベルだとやっぱさぁどっかにいそうじゃん~っ……?(ヨイショ1割憂慮9割。言ってから、自分の知らないところでモテる姿が簡単に想像出来て人知れずウッとなる。「ほんとー?」「気付いてないだけじゃない??」双眸は探り探り、少なくとも当人の自覚に及ばない程度と心にメモしながら少しだけ安堵する。彼の試合を応援に行く時は彼以外見えてないから情勢の把握はイマイチだ。何せ彼はどこにいたってよく目立つ。投擲した不躾な疑問符に思案する素振りへ、)『ガッ』?(此方も"?"浮かばす呑気は瞬時にてお役御免。成り替わるエクスクラメーションが弾け飛ぶ。物足りない?確かに。どうせなら?えっいいの?受け止め体制を映じるなり駆け巡る邪念はコンマ数秒の内側で、どさくさの端っこを引っ掴む瞬発力は培った運動神経の賜物か。ぎこちなさ残す両腕がじりりと彼との距離感測り、南無三唱え踏み込む一歩、)こっ、こゆこと、(見上げる。いや近!!)~~~っっわ゙ーーームリムリはずっ!!(ぴょいと撤退する踵は防衛本能に任せた俊敏。情けなくへたれた咆哮が彼の笑声へ帰着するのであれば戯れの比重に昇華されようから、「あっ からかってんな!?」まんまと引っ掛かった被害者面乗っけて宣おう。幾分か消耗した息入れは然しクールダウンに役立たず、次いでの暴投に活きの良い鼓動がまた跳ねた。)や!!違うじゃん言葉のアヤじゃん!?(バレたかと思って肝が冷えたら、反して舌はよく回る。)あたしたぶん一番仲良い男子木兎だしっ、こやって一緒に帰ったりできるのも木兎だけだし……けど、だから、だれかに勘違いされて迷惑かけたりしてたらヤだなって!思っただけ!(ほんとは他人を顧慮する余裕なんて微塵もないくせに。「まじ刺されたら木兎に治療費要求するし……」なんて誤魔化すような恨み言が夜風に溶ける。) |
Published:2019/06/06 (Thu) 10:36 [ 34 ] |
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ナシ!?ぎゅぎゅっとガリ棒ナシ味入りま、あオレンジが良い?? |
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![]() 木兎光太郎 |
やっぱりィ?オレもそー思う!!おしとやかな女の子たちだから普段はあんま黄色い声ってのくれねーらしいんだけど!応援って聞こえてこそじゃね?バスケもそーじゃん??(同意求めつつ意に満たぬ表情から吐き出される木兎光太郎モテの現況は、きっと部員の誰ぞの言い聞かせによる功労が隠されていて、されど微塵も疑わないのは全く嘘でも無いからだ。試合中、己に降り注ぐ全ての視線を知っている。冴えて良く見える視界には観客席すら眺望できることもあるから、コートにボールを叩きつけた一瞬にこの場の主役は己だと思えたことは何度もあった。ただし、いつでもじゃない。毎回じゃない。そのくらいの自覚が先の評価を産めば「カノの声ならすぐ分かるぜ。」なんてのたまう台詞はすぐさま続く「声でけーからな!」と一笑付きだからムード足りずに口説き文句としては生憎論外。)………………オッ?( 来るか?) や、来ねーの!?(きらめく瞳に近づく姿は可憐でも、両腕に近づく小鹿に爪立てること叶わず、鼻先で逃した獲物は大きかった。伸ばした腕はそのまま大ぶりに振りかぶってスカしてずっコケる。大袈裟な所作が一層戯れに拍車をかけて、予想に反せぬ芳しい明るい反応が面白可笑しく楽しくてやっぱり笑った。からかっていると捉えられても仕方がない結末は2割位は冗談だったから。)??? ちがくねーよ、そりゃ……そりゃあ俺も同じだしなー。(逃避を許した先刻から無害を主張するように両手を顔の横に携える白旗のポーズをして、二歩三歩の跳ねるような歩みで再度彼女の隣を位置取ろうとする。頭一つ分だけ首を傾げて、)俺も。――鹿目舞花ちゃんがいっちば~~ん!(ヘイヘイヘーイ!!大人しくなった一瞬を挟んで、人差し指を空に突き立れば緩急激しく天下でも取ったみたいな一人どんちゃん騒ぎが夜を賑わせる。勘違いも何も友情だろうと恋愛だろうと男の中で特別な一番なのには変わりなく、無論彼女の一番なら全部欲しい。どうやら仲良い男子の枠ではトップレベルではあるらしいので、目指すべき次のステージは"たぶん"なんて余計な言葉は取っ払うあたりか。彼女の声音が拗ねたように聞こえたから、ははんと分かったような顔をして)心配しなくてもカノのことはちゃぁんと守ってやんよ!だから安心してインハイも応援来てッ!オレのユウシをとくと見よ~~! |
Published:2019/06/07 (Fri) 01:13 [ 38 ] |
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んん゛~~悩ましい……いっこずつ買って半分こ、どうだ! |
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![]() 鹿目舞花 |
おしとやかな女の子が木兎見に行く~~?ミーハーか小学生とかの間違いじゃ……(偏見まみれの揶揄交じり、押し遣る勝手な印象付けは願望込みのそれだ。応援席のかわいくてきれいな子はみんな涼しい目元の彼の世話係辺り目当てだって勝手に思ってる。「まぁ好みは人それぞれだもんね……」なんていっそ気の毒そうな声色は、常に同様軽口の一環なれど誰より彼に焦がれ振り回され続ける第一人者の本気の同情だった。)あはっ、ホント聞こえなきゃイミないもんね!バスケはバレーよりもっとうっさいじゃん?木兎は応援合戦も得意そう!(自己基準に則った目算は似た性分を自覚して。まぁ曰くところのおしとやか女子なんかに声援で負ける気しないけどね、だとか口にせんとした矢先。見透かすような甘言に「へっ」、思わず眸に瞬き散らすド軽率な甘い期待は刹那に霧散、「~~っ木兎の大騒ぎに掻き消されないためだし!!」投げ遣りの弁明は限定的を装えども、事実に違いないと図星食らった怒声が語る。して頭上掠めた両腕の行く先見送って、身動ぐ羞恥の間隙に、やっぱちょっともったいなかったかも、ってよこしまな後悔はいつだって先に立たないから、被疑を肯定する笑声に軽々しいパンチをお見舞いして照れ隠し。も、たったの数歩で元通りの距離感だ。なのに、清々しく放たれる"ちがくねーよ"に、性懲りもなく心臓を強張らせているのだから、本当に始末に負えない。)……ち、 がくねーの…??(簡単に期待を透かす双眸は元より嘘や隠し事を不得手とする性分上どうしたってわかりやすい。口吻を擬えて『おなじ』の意味をさがす。本能的な言葉選びに翻弄されるのが常にしろ、何度経たって慣れるわけない。泳ぐ視線が道端へ落ちて、今にも染まりそうな眦を隠し通さんと前髪引っ張る指先は無駄な抵抗だから、淡い街頭のひかりに紛れていることを祈って。静寂ののち齎される嵐みたいな言動はこちらの心情に等しくて、忙しなく騒がしい足取りにさえ「わ!」「も~~!」ってくちびるだけで困ってみせては徒行を寄せる。あっちこっち跳ね回る前に鞄を引っ張ったりして、相対する頬は結局緩んじゃってるに違いない。いつでも眩しい横顔を見上げて、不意に、)だったら、……~~…卒業まで彼女つくったらやだ……(心の声のひとかけが零れ落ちた。「あ゛」「っじゃなくて」「なくないんだけど!!」やらかした舌先が七転八倒ののち、)しばらくあたしのこと一番にしといて! 木兎以外にコンビニのホットスナック食べ比べ付き合ってくれるひといないもんっ(まるで色気のないそれだって一緒の時間を延命せんと講じる姑息のひとつだけど。して、結するお誘いは願ってもないから、ひひっといたずらに歯を見せる。)言ったな?木兎がトチったら全力でヤジってやるから、かっこいいとこ見せてよね~!(今度はこっちが揶揄う所作で肘うりうり。)って、言われなくても勝手に行くつもりだったし!おしとやか女子の体ではちみつレモンとか仕込んでった方がいいかな?!(レトロタイプの固定観念を恥ずかしげもなく口にするのは、楽しみにしてるよって言外の主張。) |
Published:2019/06/07 (Fri) 17:06 [ 43 ] |
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