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(空に夕焼け。明日も屹度晴れるでしょう。) |
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![]() 亀井澪桜 |
(工業高校に進学すると中学時代の担任に告げた際のマヌケ顔は今でも鮮明に思い出せる。進学実績向上のためか、極めて強く、そして、かなりしつこく所謂進学校への進学を勧められたもののこの女が首を縦に振ることは無く。何故工業高校への進学なのかと問われれば、しれりと応えたことだろう。‘ 将来のため’であると。亀井澪桜という娘は、スペック厨である傍ら、先の見通しを堅実に行う人間である。娘が抱く将来の目標は、インテリアデザイナーになること。それも、若くして成功を収めた一流の、という称号持ちの。故にこそ、学生の時分より実地経験を積まんと進学先は工業高校一択であった。無論、卒業後は就職ではなく四大への進学を見越してはいるが、センス磨きの最たるは経験を積むことだろう、と。そうして入学した伊達工業であったが、改めてその男女比を見て、嘗て真面目男子に負けた経験からか、この高校でこそ生徒会長になるべきだろうと決意を新たにしたのは、もう2年ほど前のことだったか。それからこれまで。優等生の仮面を被り過ごした日々は、決して辛くなどなかった。もとより生き易くするために選んだ術である――生きにくい等と感じたことは無かったが、根を詰めれば息も詰まり、時折、深呼吸を求めるのも人の性。)ミルクティーと……あとは、(とある放課後。部活開始まで許された時間はほんの少し。そんな隙間時間に中庭の木陰に足を運ぶのがいつからか一週間に数度の決まりになっていた。ひやりと冷えた缶をふたつ胸に抱いて、娘は期待を胸に深い紫苑の瞳を揺らす。専攻に関係なく組まれるクラス編成は建築専攻の娘と運動部主将として活躍する青年との間に壁を生じさせず。故に、この縁の始点はいつ打たれたものだったか。些末な思考の傍らで、萌ゆる思索は至極単純だった。この学校に入学したことを後悔したことがないのは、彼の青年との出逢いを得られたからこそ。こつん。音を鳴らす缶を抱え直した矢先、視界の隅にひとりの影が映り込む。)……、茂庭。お疲れ様。ね、これ、貰ってくれない?間違えて買っちゃって。(なんて、しれりと嘘を混ぜこみながら青年に差し出すのはとある清涼飲料。叶うなら、このままもう少しだけ。彼との時間を得られたら、と。獅子の名を抱く娘は、恋を育む機会をいつだって虎視眈々と狙っている。教室ではないこの場なら、幾分か仮面も薄れよう。) |
Published:2019/06/02 (Sun) 17:13 [ 8 ] |
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天気が良いのは嬉しいかな。亀井さんはどう? |
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![]() 茂庭要 |
(工業高校はその内容から共学であっても男女比が男子に傾いている学校が多い。それでも女子生徒が居ない訳でもなく、男子のみのクラスがあれば女子が数人含まれるクラスもある。自分がそのクラスに当たったのは、思えば幸いな事でもあった。優等生の代名詞になっていると言っても過言ではない彼女と出会えた事はクラス編成をしてくれた教員にお礼を言いたいほどだ。そうして彼女に友人として親しくなれば当然教室で会話を交わすけれど、教室で話す時よりも自然体のような気がする中庭での会話を好んでいるのは本人には秘密にしたい所。いつだったか、強豪と呼ばれる部活の厳しさと自分の代が不作と言われた事にほんの少し辛くなり中庭で部活に行く足を止めた時、彼女に声をかけられたんだったか、かけたのだったか。どちらにせよ、その時が彼女を知る為の起点だったのだと思う。部室の鍵を開け、早々に早着替えを終えたなら後輩が来る前にと茂庭の細やかな一時を知る同輩達に後は任せて中庭へと向かう。彼女を待たせないようにと中庭へ急げば彼女の姿はまだ見えない。その事に安堵の息を吐き、最近強くなってきた日差しから隠れるように木陰へと身を滑らせて涼をとる。)何か買ってくれば良かったかな…(彼女がよく飲んでいるミルクティーでも頑張っている彼女に差し入れと渡せば良かったと揺れる木の葉の影に目を細めていれば、聞こえた澄んだ声に自然と緩む口元をそっと戻して視線を向ける。)亀井さんこそ、お疲れ様。え、そうなんだ?なら、ありがたく貰うね(彼女が買うものを間違える事はないだろうと察しても、それが彼女の気遣いであるだろうし、何よりこれから運動をする身としては嬉しい差し入れを素直に受け取ろうと手を伸ばして)そういえば、亀井さんってよくミルクティー飲んでるけど、好きなメーカーとかあるの?(彼女の手に残った缶を指差して首を傾げる。問いかけた理由は頑張っている彼女への差し入れの為と、彼女の好みの味を知りたいという思いから。) |
Published:2019/06/03 (Mon) 23:01 [ 16 ] |
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私も晴れが好き。雨の日は朝からテンション下がっちゃう。 |
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![]() 亀井澪桜 |
(始まりは、本当に偶然だった。教員から体よく押し付けられた雑用を、これもポイントアップのためなんて打算的な思索のうちにこなし、ほっと息をつきたくなった過日。中庭横に据えられた渡り廊下をゆるりと徒行していた際に見つけたひとつの影。クラスメイトに対しては、誰であっても分け隔てなく、いつだってやさしい優等生の像を結んでいたものだから不意に視線が絡んでしまったことを契機として、ゆるりと足を向けた先。他愛ない雑談の中で、日々の移ろいと共に心へ積もる瑣末な憂慮を互いに話した。真実、偶然だったのは、はじまりの1回と、続きの2回。陽だまりのようなやさしい場所は、いつしか亀井にとっての”秘密基地”となって、それからは偶然を作るために、打算を張り巡らせた。偶然が必然に変わってから幾許か。変わらないのは、その柔らかな声が耳朶に触れると自ずと頬が緩むこと。)ふふ、ありがとう。といっても、茂庭の場合は、これからが今日の本番でしょ。トラブルメーカー多いもんね、3年にも、2年にも。(青年が主将を務める排球部の面々とは、幾度か試合観戦に赴くうちに顔馴染みとなっている。一筋縄ではいかない面子を見事纏め上げる其の手腕には素直に尊敬にも似た感情を抱きながら、わかりやすい「うそ」を柔らかく受け止めてくれる姿に鼓動が小さく跳ねた。)うん。どうぞ。今日の励みにしてね。(缶の周りに滲む幾つかの雫。かすかに濡れた指先から、青年のために購入した飲料が離れる様に眦が緩む。今度は単純に、好きだな、と思った。――人は、自分に無いものを持っている者に惹かれるという――不足したところを埋めて、完璧になりたい希求を誰しも持っているんだとか。ならば、己が持っておらず、青年が持するはこうしたさりげない優しさだろう。プルタブを捻り、飲み口へと唇を添わせる。口内に広がる穏やかな甘さは、彼の優しさに良く似ていた。)うーん……、家ではよくウェッジウッドを飲んでるよ。学校ではリプトンばっかり飲んじゃうけど。あ。でも、前に、贈り物で頂いたニュイエトワーレのミルクティーはすごく美味しかった。茂庭は? 好きな飲み物とか、食べ物の好みとか。どういうのが好きなの?(雑談の延長として軽やかに問いかける。もしも視線が絡んだなら、「好きな女の子のタイプでもいいけど。」なんて、悪戯に笑ってみせた。) |
Published:2019/06/04 (Tue) 11:22 [ 20 ] |
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そっか、一緒だね。雨だと蒸すし…体育館に空調効いて欲しいな |
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![]() 茂庭要 |
(学年が上がれどクラスはほぼ持ちあがりの状態の為、彼女とのクラスメイト歴は入学式からという感じか。真面目で教員にも頼りにされている彼女は注目の的でもあって、ちょっと近寄りがたい存在でもあった為に彼女から話しかけられて驚いた記憶が確かにある。機械系の自分に対して彼女は建築系、基本教科や共通教科は共に受けられるが専攻の違いで別になる時もあるのに、クラスメイトとして彼女が覚えていてくれた事が何だか嬉しかったのも、覚えている。彼女と他愛もない話を重ね、ふとした瞬間にも中庭に足を向けるようになったのは、この開放された場所での彼女との会話に心地よさを覚えたから。それがいつしか当たり前になり、時間も放課後の隙間時間と決まり、現在へと続いているのだから面白いものだと眼を細める。)うっ、それを言われるとなぁ…でも、亀井さんが考えてる面子は心強い鉄壁だから、主将として自慢の仲間だし遣り甲斐もあるよ。(試合を観戦しに来てくれた彼女を初めは紹介したが、今となってはすっかり顔見知りとなった仲間達は既に彼女が居ようとも各々の気の向くままに行動を起こすものだから目がいくつあっても足りない。だからこそそれを思うと僅かに頭痛がする様な気もするが、一方でとても頼りになる仲間であるから、主将として仲間に頼って貰えることは何よりも嬉しいのだ。本人たちにはまだ内緒だけれど、彼女にニッと笑って胸を張ってみせて。)そうだね、亀井さんにこれ貰えたから凄くやる気でたよ。ありがとう(受け取った缶の冷たさを示すかのように濡れている表面に残る彼女の触れていた部分をバレない程度にそっとなぞる。彼女の温もりに触れられた気がして、頬を緩めては彼女の細やかな気づかいに感嘆する。そうして缶の開く音で彼女を見ればその口元に視線が惹き付けられて鼓動が静かに跳ねた。)……、うん?(誤魔化すように質問をして彼女の口元から視線を外してはみたが、得られた答えに一瞬固まった。リプトン、は今彼女が飲んでいるメーカーだとは分かるが、他二つは全く分からない。いやウェッジウッドは陶器メーカーだった気もするがもう一つの上品そうな名前は分からない。だから思わず聞いた側であるのに首を傾げてしまった)えっと、リプトンはそれだよね。他のは何だか俺が飲んでも味の違いがわかりそうな名前だね…でも亀井さんの好みのメーカーを知れて嬉しいな、教えてくれてありがとう。(心の中でウエッジウッド、ニュイなんたら、と復唱して後々調べてみようと決める。彼女の問いかけには少し首を傾げるもすぐに思い当たれば小さく頷き。)俺?あんまり意識したことなかったけど、俺は多分お茶かな…あ、抹茶の方じゃなくて麦茶とか緑茶とか!食べ物は…ごはんですよ、かな。勿論それ単体で食べる訳じゃないけどね。(そう答えながら視線が絡めば紡がれた内容に動揺して「えっ!?」なんて叫んでしまった。流石に本人を前にしては言えるわけがない。だからこそ首を横に振ると同時に腕も勢いよく振って)それは、好きな食べ物とか答えたから無しで!(と、唐突に行われた心臓に悪い質問に対して何とか答えてはみたが、チームメイトが見たら動揺しすぎだと言われてしまいそうだ。主将として、何よりもセッターとして冷静でいなければならない場面が多いというのに、こうも好きな子を前にすると冷静でいられないというのを今改めて思い知る。) |
Published:2019/06/05 (Wed) 23:48 [ 32 ] |
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梅雨の体育館とか当に地獄…。会長になったら交渉してみるね? |
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![]() 亀井澪桜 |
(単なる級友として時間をすごしていた昔日も、青年と縁を結んでからの日々も――その為人に触れるたび、誠実で穏やかな、春の木漏れ日の如き優しさに絆される。故にこそ、青年が一癖も二癖もある男子排球部の部員たちを纏め上げる部長職に就いていると知ったときは素直に驚いたものだ。排球部の練習を見学せんと食指が動いたのも、本当に彼が排球部の部長であるか半信半疑であったところもあって。けれど、実際に娘の瞳に、彼らの風景を、その日常を溶かし込めば、斯様な心地は拭われて、得心したことを覚えている。引っ張り上げるというよりも、ともに歩まんとするような。けれど、決して頼りなさを感じさせぬ己とは異なる「上」の立ち方。時折、巻き込まれ、振り回されているようにも見受けられるけれど、ボールを追い続ける彼らはいつだって楽しげで、真剣だった。)部員たちも、きっと茂庭のこと、心強い部長だって感じてるよ。二口とか素直じゃないから、絶対口に出したりしなさそうだけど。――インハイ予選、もうすぐなんだっけ? また、応援に行ってもいい?(信頼し合っていることがわかる。そして、また、全員で同じ目標に歩んでいることも伝わってくる。故にこそ、青年と言葉を交わすのは部活前の少しの時間と決めていた。笑みを刻む青年につられるように、娘も相好をやおらに崩して、湧出する気持ちを穏やかに紡いでみせる。そうして、付言するは小さなお願い。こうして隣で笑みを浮かべる青年も好ましいけれど、バレーコートの中で真摯にボールを追う姿だって久しぶりに見たいから。)ふふ。どういたしまして。あ、でも――ほかの部員には見られないようにね? 鎌先とか二口とか、特に揶揄ってきそうだし。(渡し終え、自由になった手の人差し指を立てれば、わかりやすく”秘密”と示すかのように唇に添えて見せた。その後は、口内に広がるまろやかな甘みを堪能したものだから、青年からの視線に気づくことはなく濡れた唇が娘にとっての「好き」を語る。)ん?(好きなものを語るとき、人が饒舌になるのは条理として。けれど、矢継ぎ早に紡がれた響きは高校生男子には専門用語に聞こえたとしても無理もない。首を傾げる様に、当初は娘も緩く首を傾げるも、青年の中に渦巻く疑問符を悟れば「あ。」と呼気とともに音をこぼした。)紅茶好きじゃないと呪文みたいに聞こえちゃったよね。でも、きっと茂庭も気に入ると思うから、機会があったら是非飲んでみて。でも――。ふふ。茂庭と緑茶って合い過ぎ。縁側でほっこり一息吐いてる様子、すごく想像できるし。……――ごはんですよ、かぁ。あれ、ご飯にかけるだけじゃなくて卵焼きに入れてみても美味しいよね。(「好き」の共有は、互いの心の距離が近くなったかのように感じられて心地いい。けれど、満足を覚えることはなく、もっとを求めてしまうから相当この恋の海は深さを抱いているのだろう。薄い唇の動きを逃さぬように視線を注いでは青年の反応を窺って。)ええ。かわいい子がいいとか、きれいな子が好きとかそれくらいでもいいのに。……それに、教えてくれたら、私もほかに何か答えるよ? ちょっとだけも、だめ?(無理強いをしたい訳ではないけれど、いとしく想う人の好みを知りたいと願うのは恋する乙女として当然のこと。半歩、青年との距離を詰めたなら、上目遣いとなることを意識して今一度「どうしても?」なんて強かにおねだりをしてみたり。) |
Published:2019/06/07 (Fri) 13:59 [ 42 ] |
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本当!?それは本当にありがとう!扇風機だけでも良いから! |
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![]() 茂庭要 |
(彼女と話すようになり、中庭と教室での彼女の雰囲気が違う事に気づいたのはいつだったか。中庭という何でもない場所が彼女と二人でいるというだけで宝箱のように思えるのは、彼女のそうした雰囲気の違いもあってだろう。細やかなひとときを経て部活に向かえばそこは彼女とは違い自分よりも大柄な男を相手にしないといけない。勿論、仲間のいる体育館も自分にとって大事な場所ではあるけれど、こことはまた違うもの。だからこそ、彼女の見学したいという言葉に二つ返事で頷き、自分の好きなものを知って貰えるのはとても嬉しい、というのはその時に伝えたかもしれない。最初の頃は彼女が見学していると同輩は微笑ましい物を見るかのような目をするわ、後輩は落ち着かないわで何時もよりも少々騒がしかったのは記憶に新しい。それを落ち着かせ、練習に向かわせるのに少し手間取ったのは内緒にしたいところだけれど、元々がバレー好きの集まりだからか練習が終わるまでは大人しかったが、練習が終われば彼女と部員が話しているのを見守りつつ、遅くなったら送って行く事もあった。)そうかな。それだったら凄く嬉しいな。二口が口に出すとしたら、青根が勧めてとかになりそうかな。―うん、三年はインハイで引退だから…亀井さんが応援に来てくれたら嬉しいよ。(どうにもうちの後輩たちは自分の気持ちには正直で、大体の事を口に出してしまう所が可愛くもある。そんな中でもレギュラーとして素直でない後輩と素直だけれども寡黙な後輩を思い出しては小さく笑う。いつだって、見慣れた光景だ。) あはは、まぁ確かに見つかったら揶揄われそうかもね。…ん、内緒だね(彼女の仕種を真似るように人差し指を立てて口元に添えて、笑う。こうした何気ない時間が好きだと、また心がはねる。)うーん、でも呪文っていうとちょっと違うかな?なんだかこう、高そうだなって感じだっただけだし。でも亀井さんが勧めてくれるなら…うん、試してみるね。んー、まぁ休みの日の朝とか縁側でのんびりする時もあるから、強ち間違いでもないかな。え、そうなんだ?うちは結構そのままっていうか、ご飯にかけたりおにぎりに入れるくらいだったから…今度母さんに作って貰おうかな(彼女も自分の好きなものを食べると知っただけでも驚きなのに、思わぬ好物の調理法に目を丸くする。彼女が美味しいというならばそうなのだろうと、帰ったら夕飯のおかずにと頼もうと頷きを一つ。)それはその、えぇと…(つい視線が泳いでしまうが好きな相手にこうまでされて、冷静で居られる人がいるなら本当にどうしたらいいのか教えてほしい。近くなった距離と身長差による上目遣いに緊張と彼女の可愛らしさにクラリとめまいがした気がする。眼は口ほどにものを言う、というのを体現しているような視線に抗えるはずもなく、覚悟を決めて。)……頑張りやさん、だよ。自分の目標に向かって、努力できる頑張り屋さん。(目の前の彼女の質問に答える声色は憧れと愛おしさが溢れ出ているような優しいもの。声色と同じく緩んだ眦は言外に己の思いを吐露しているかもしれないが、彼女を真っ直ぐ見つめて) |
Published:2019/06/08 (Sat) 23:48 [ 47 ] |
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