白雨
--焦がれあった連星の紡ぎ--

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(熱狂、勝利、静かなる変化。)
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岩泉一
(――試合中、外界の全ての音が遮断され、静寂に包まれる一瞬がある。その日の試合運びは順調、其れなりの点数差で以て迎えたマッチポイント。これを逃せば後がない試合相手は遮二無二ボールに食らいついて、長い長いラリーが続いていた。火事場の馬鹿力とばかりに叩きつけられたボールは拾ったピンク頭の同級生のレシーブを僅かに乱す。生まれた時からずっとその隣に在った相棒の瞳がボールを捉え、女子を騒がす甘い声音が高らかに呼んだ。「岩ちゃん!」――その言葉を待たず駆けだしていた岩泉は、呼び掛けと同時に膝のばねを使って浮き上がる。重力を無視して空を飛ぶ。瞳を上へと向けたら、まばゆい照明が視界を焼いた。ちり、僅かに瞳の奥が痛んだのは、きっとこのせいだ。――あたり一帯から音が消える。献身を絵にかいたようなセッターたる相棒の、岩泉限定でなされる無茶ぶり。出来ないわけがないだろうと挑発されているかのようなセットアップに、燃えない岩泉ではない。届くかぎりぎりの高さにささげられたボールを見て、岩泉は笑みを深めた。もっと高く、もっと、もっと――自分の最高到達点を超えんとして。バランスよくついた筋肉がしなやかにしなる。鍛えぬいた肩を軸に腕を真直ぐ振り下ろした。――ドンピシャ!)ッらァ!!!!(勝ちは堅い。けれどこのボールを逃して良いわけがない。圧倒的な勝利は次の試合へのモチベーションとなるに違いない。そうやってチームを鼓舞することが、岩泉の――背負った「4番」の仕事だからだ。確かな手ごたえと共にボールの芯を捉え、振りぬく。目の前のブロックをぶちぬいて、ラインぎりぎりに叩きつけられるボール。けたたましい音が体育館中の空気を震わせて。)っしゃあ!!!!(勝利の雄たけびと共に鳴り響くホイッスル。応援をしてくれていた部員からの歓声と、頭や背中をもみくちゃにする、チームメイトからの物理的ねぎらいに笑みをはじけさせた。――して、試合後。クールダウンを告げた監督の言葉を最後にミーティングを終え、思い思いに散り散りになる仲間たち。他の学校の試合を見るついでに、と探したのは彼女の姿だ。己の姿を撮りたいと言った彼女はきっと、ここにもいるだろうと思ったから。)見っけ。いい画は撮れたんか?(――というよりは、岩泉が来て欲しいと思ったからこそ、試合の日程を継げていた。彼女を見つけたのは一体何処であっただろうか。携帯電話という便利アイテムのちからも借りながらその姿を捉えたならば、彼女の横に陣取る心づもりで近づいた。額から流れる汗を袖で拭いつつ、小さく笑う。)
Published:2019/06/11 (Tue) 19:08 [ 9 ]
なんだか、良い試合見るとこっちまで鼓舞された気になるよ
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土井花音
(ウォーミングアップの時にカメラをできるだけコートの四方から写せるようにセット、部活から借りたハンディカムのカメラを三脚を立てて設置。そんな中正面からのカメラセットの時にかけられた幼馴染みの声に呆れついでに丁度良いとばかりに自分が離れている間のカメラの監視と予備のカメラでの撮影を頼む。自分の商売道具と言っても過言でないこのカメラは、近くにいる誰よりも自分がかける思いを知る彼に託す。)ゆき、分かってると思うけど、良い画が撮れそうだったら頼んだ!(幼い頃に彼の練習に付き合ったのだからとカメラの使い方を教えた。新しいカメラを手にすれば、部活が違っても被写体として巻き込んでカメラのクセを見つけ、ついでとばかりに教えた。そんな彼だから信頼してカメラを任せられる。後ろで聞こえる不満は後できくとして、自分は一セット目が終わればあっちへ、こっちへと他4ヶ所のカメラの設置場所へと走り出し、後輩指導を行い、タイムアウトの時は彼の画をとれる場所にいる後輩に無線で指示を飛ばす。試合中は小声でぼやく幼なじみにジュースを奢る約束をして、コート全体を視界に入れながらモニターを確認。マイクに入らないように応援しながらもカメラで追った彼の姿に、やはり目を奪われる。)いけ、岩泉…っ!ゆき、今の及川のトス!(悔しい程に二人の信頼が透けて見えて、格好良いと素直に思う。だからこそ今のシーンを使うなら二人の画が必要だと幼なじみに言葉短く聞けば、流石バレー部員。無事にセッターを画に収めたと聞けばよくやったと肩を叩く。そうして試合が終われば目的の映像を収めたカメラのデータを受け取り、カメラと共に部員を帰してしまえば応援席にいた幼馴染みに今度目薬贈る、とだけ伝えて応援席最後列の通路側に座りその場で各々の映像をノートパソコンで確認する。今ならば次回の撮影の参考にもしやすいと集中していたせいで震える携帯には気付かず、データ取り込み中は自分の撮った映像を確認している中に耳に入った声に勢いよくカメラから視線を上げて笑顔を浮かべて。)岩泉、お疲れ様!あと、良い画はバッチリ!癪だけど、最後のトス上げた及川も撮れたし…あれは使うならちゃんと繋げてやらないとね(なんて楽し気に笑って返した後、彼の額に浮かぶ汗に気付けば荷物を退けて自分の座っている隣の席を軽く数回叩き。)岩泉、座りなよ。今撮ったの確認してるから、良かったら使って欲しいとことかあったら言って?(そう言いながら、彼が座れば自分の撮った画を見てもらうつもりでカメラと、汗を拭ってもらう為にハンドタオルを差し出そう。)
Published:2019/06/13 (Thu) 14:24 [ 17 ]
応援してもらってんのは俺らだけどな。いつもさんきゅ。
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岩泉一
(彼女にたどり着くまでに電話1本、LINE3通。いずれも反応なく、既読にならない緑の画面にふっと吐息を零して双眸を緩めた。たぶん撮った動画の確認してんだろうなァなんて雑な想像を働かせつつ、宛にならない携帯電話をポケットに突っ込みぶらぶら歩く。初戦たる今日は最もたくさんの高校があつまる。学校関係者以外にも、保護者などの応援があるとなればなおのことだ。「ある程度コートが映しやすそうなところ」という目測はあれど、文明の利器なしで彼女のもとにたどり着けたのはきっと奇跡にも近かった。けれどだからこそ嬉しく思う。岩泉は運命なんて不確かなものは信じないが、この時ばかりは己の勘の良さをほこらしく思った。呼びかけた先、彼女が勢いをつけて顔を上げる。じっと画面とにらめっこしていた瞳が画面から離れ岩泉のことを映す。きらきらと輝く瞳が嬉しそうな色をしていて、思わず笑ってしまった。)おう、さんきゅ。ふはっ、癪ってなんだそりゃ。あのトスやべえだろ。無茶苦茶なトス上げやがって。(憎まれ口をたたきながらも奏でる音色は嬉しそうな、どこか誇らしそうなそれだ。「最後のスパイクは気持ちよく打てたわ」と満足そうにしつつ、彼女の言葉に甘えその隣りへと腰掛けよう。もとよりその心づもりだったが、お誘いとあらば断わる必要はかけらもない。)使ってほしいとこな……つっても、俺じゃどこがいい映像なんかもよくわかんねえけど。土井の撮った動画って、どんなもん撮っても映ってるやつらみんな生き生きしてっし。(今までに見たことがある彼女のつくった番組のことを思い出しつつ。どれどれ、と画面をのぞき込もうとしたその時、隣からタオルが差し出された。ぱちり、瞬きを二度。)………貸してくれんのか?嬉しいけどよ、汚れんべ。(多少落ち着きはしたが、さっきまで激しい運動をしていたがゆえ、汗の量はそれなりだ。いくら気心知れた友人とは言え、男のそれは嫌ではないかと、岩泉なりの気遣いで。)
Published:2019/06/14 (Fri) 23:32 [ 24 ]
どう致しまして?でも応援したいって思わせるのは凄いと思うけど
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土井花音
(後々携帯を確認する際に彼からの通知を見れば気付かなかった事に申し訳なく思うのは確実だが、そんな少し未来の事は知らずに作業に没頭していた。集中してしまえば周りの音まで遮断する傾向にある自分が、彼の声に気付けたのは彼に向ける思いがあるからか。顔を上げた先で笑う彼の姿に首を傾げるも、自分の言葉が原因だと思えば何やらくすぐったくなり、続く彼の言葉に視線を一度コートに向ければ先程の光景が蘇って来て、視線を彼へと戻した時に浮かんだのは彼を輝かせる事が出来る彼の相棒への僅かな嫉妬。故に眉間に皺がよるのは仕方がないのだ。)癪なのは癪なの。なんというか、幼馴染みの岩泉の前で言うとあれだしあいつが主将なのも分かってるけど、及川のくせに、って思ったんだよね。そのトスも無茶苦茶だったかもしれないけど、及川も岩泉もお互いを信頼しているっていう良い画が撮れた…んだけど、それが及川のおかげだと思うとなんか悔しい。岩泉だけ撮りたいのに、どうやったって岩泉を主人公にすると出てくるから……もう松川と花巻も入れて目立たせなくしたい。(バレーだからスパイカーが打つにはボールが上がる必要があるのは分かる。別に及川が嫌いな訳ではないが、好きな相手を輝かせ、満足気な表情を引き出せる人間だとして見るとどうやったって嫉妬してしまう。だからこそ隣に座った彼をじっと見つめて、映像では負けないと少し気合いを入れたのは気付かれないでいたいところ。彼が自身の創作した物を覚えていてくれたという事もそうだが、何よりも彼の真っ直ぐな言葉に面映ゆさを感じて自然と眉尻が下がる。)ありがと、そう言って貰えると制作者冥利に尽きるなぁ。まぁ無理にとは言わないけど、さっき言ってた最後のスパイクとかさ、岩泉が楽しいとか気持ちよくやれたとかの意見も欲しいの。全部使うとは言えないけど、その時の岩泉の表情覚えて他の映像からもピックアップしたりするから。(一つの試合映像だけでも使えない事は無いが、彼が頼りにされた場面や楽しんでいる場面を単純に知りたいだけなのだ。私情が混ざってる?そんなのは彼を主人公にした時からずっとだから今更だ。開き直りと言われようが、誰にも文句は言わせない。)使えば汚れるのは普通の事でしょ?そんな事より、岩泉が風邪引く可能性があるのが嫌だし…(彼の気遣いが分かり気にしないという意味を込めて言ってはみたけれど、あまり長引かせるのもという思いから彼へと軽く身体を寄せれば手に持っているタオルで未だに汗の浮かぶ彼の額に軽く触れるように拭って)ほら、これで問題なく使えるでしょ?あ、かわいい柄だから使うの嫌だって言うのは無しね。(確かに白と黄色のパステル色で描かれた花柄のタオルは男子高校生にとっては使いにくいだろうから、こうしたなら受けとるだろう、という考えで彼の汗を拭う事を気負いもせずに行い、そのまま再度彼にタオルを差し出して。)
Published:2019/06/16 (Sun) 23:25 [ 31 ]
そんなもんか?
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岩泉一
(眉間に寄っている皺は、嫌悪というよりはどこか悔しそうな色を宿して及川徹のことを語る。乙女心を解するだけの理解力もなければ話題の中心たる幼馴染にさんざん「岩ちゃんってホンッッッット鈍いよね!!」と罵られるような男には、彼女の言葉の真意を読み取ることが出来るはずもなく。「及川のくせに生意気、ってやつだな。わかるぜ」と実に大ざっぱな同意を示した。だいたいわかっていない。)まあでも及川が入ってくんのはしゃーねーべ。ずっと一緒にやってるわけだし。俺が主人公のモンであいつが目立つのは癪だから思いっきり目立たなくしてやれ!くらいには思ってッけどよ。つか、ほんと土井って珍しいよな。女子でそこまで及川のことこき下ろす奴もなかなか。(後輩にこそよくモテたとして、幼馴染の面倒くささをよく知る三年女子には邪険にされることの多い幼馴染。されども彼女のようになにやら対抗心を燃やす人間は見たことなく、ゆえにきょとんとした不思議そうな瞳が真直ぐ彼女を射抜くだろう。何やら気合を入れている様子の彼女に、何がそうも彼女を駆り立てるのかはわからぬ儘、ただ柔らかく笑みを浮かべた。ほんのわずかな、けれど確かな表情の変化に彼女は気づくだろうか。)んー、今回の試合でいうとやっぱ最後のスパイクが一番気持ちよく打てたな。序盤のブロック決めた時もまあまあ気持ちよかったけどよ。あとは、セットポイントんときの、フェイクがうまくいったときとか――……(ひとつひとつ試合の場面を思い浮かべながら言葉を重ねる。出来る限り彼女の要望に応えんとはしつつ、どちらかというと本能に忠実に生きている男だ。語彙は乏しく、結局最終的には楽しかったの一言に尽きる。――彼女のはんかちは可愛らしく、彼女と同じく、どうにも己が力加減をまちがえたら壊れてしまいそうな気がして気が引けた。が、そこは彼女の方が一枚も二枚も上手だったようで。近づく距離に瞳を丸くし、「土井?」と名を紡いだ次の瞬間、柔らかな布の感触が額に。)………ふっ、なんだそりゃ。強引かよ、(つっこみながらも彼女の差し出したタオルをそっと受け取った。壊してしまわないよう、どこまでも優しく。)さんきゅ。………なんか俺がこれ使ってると、アンバランスすぎてウケんな。(戯れを呟きながら、顔にちかづけるとふわりと甘く香る匂い。恐らくは柔軟剤か何かの其れだろう。急に照れくさくなって、隠すように顔を覆ったが逆効果だったようだ。細くふかく息を吐いて、「……洗って返すわ」と先ほどまでよりはきもちぶっきらぼうに。)
Published:2019/06/18 (Tue) 14:49 [ 36 ]
だって岩泉達が頑張ってるから、私達も応援したくなるんだしね。
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土井花音
(彼の相棒についての文句でもあったのだが同意が返され、生意気という続けられた言葉にくすりと笑う。生意気と言えばそうなのかもしれないが、あれはあれで自分の心に素直なのだろう。なんて考えれば初めて彼の相棒と相対した時の事を思い出した所で彼の言葉が耳に入れば、不承不承と言うようなため息を吐いて)そうなんだよね。しょうがない、しょうがない…という訳で、松川と花巻の出番も増やす。何なら他の部員も出す。これでよし。(自分の考えを口に出せば多少なりとも考えがまとまり、一つ頷く。そして彼の続いた言葉には目を瞬かせて)そう?まぁ確かに後輩には顔は良いとか、ファンサービスがいいとか何とか言ってる子もいるけど…三年が言ってるのは「あれは観賞用」だからね。私にとってはある意味ライバルみたいな感じだから岩泉にとっては珍しいかもね(彼の僅かに幼さを表したような瞳に小さく笑う。何で張り合っているか、なんてことは当人同士を除けば知らない人ばかりだろうし、原因は一年の頃に「岩ちゃんは俺とバレーやるから!」と宣言をされた事。当時は意味不明な宣言に対してただ頷いて好きにしたら?と答えたのは覚えている。きっとあの観察眼で当時には私が彼に向けるだろう気持ちを見抜いていたのかもしれないが、それに気付いた時に無性に腹がたちその気分のまま相手の腹部へと一発入れたくなった。離すときは相手の瞳を見るようにしていたからか、彼の表情の変化に気づくも何を思ったかまでは分からずに此方も少し口角を上げて。)ん、最後のスパイク、序盤のブロック、フェイク…ね。場面はこれで合ってる?(彼の一つ一つの言葉を取りこぼさないようにと目の前にあるパソコンでメモを取る。そうして彼から視線を外して該当の場所であると判断した部分の映像を時間からピックアップすれば彼へとパソコンの画面を向けて。)こうでもしないと、受け取ってくれないと思ったから。受け取る気になったでしょ?(と自信満々に頷けば、受け取る際の彼の様子に変化を感じて首を傾げるが、受け取った事実を見れば満足といわんばかりに笑みを浮かべて)どういたしまして。あと別にウケはしな…バレー部には見つかんないように隠してあげようか?(ウケはしない、と言い切りたかったが、バレー部の一部に見つかる事は嫌がりそうだと思っての提案だった。顔に近づけたのを見れば、ちゃんと汗を拭くのだろうと視線を逸らせば、聞こえたため息のような音に視線を戻す。「別に気にしなくて良いって」と先程までとは違う声色に目を瞬かせるけれども、気付かない。)
Published:2019/06/20 (Thu) 00:07 [ 40 ]