[ 他の物語を読み返す ]
(色彩が足りない。) |
|
![]() 鹿目舞花 |
(青天の霹靂。退屈な現国の時間に、教師の口にした一単語は今に限って他人事じゃなかった。1年次から同じ教室内で過ごして現在までに、いつだって姿を探してしまう現金を差し引いたとしても、こんなに長く彼が居ないなんて試合の公欠を除けばまず間違いなく初めてのことだったから。馬鹿でも風邪引くんだね、なんて一過性の話題に自分を棚に上げた軽口叩いては、先の試合の疲れが出でもしたかと『カゼ?大丈夫??』って気安い文字列をトーク画面へ落とした一日目。二日、三日と経過するに連れ胸裏の空白は増す一方で、居ないと理屈ではわかっていても空席やグラウンド、体育館の隅へ落ち着き無い視線が虚しく空を切る日々。四日目。いよいよ以て深刻が思考回路を脅かす時分、不意にこの世の終わりみたいな沈鬱浮かばす女を見兼ねてか、見知った幼馴染の後押しに瞬く羽目になったのは、切欠を探して停滞していたからに違いなかった。余計な付言には「はっ?!なっなにが?!」だとか威勢良い舌先がつんのめったけれど、加えて都合のいい雑用係を見定めた担任教師からの命も重なるなら渡りに船もいいところだ。随分と溜まったプリント類とチームメイトの心配を建前に、教えられた住居まで出向く足取りが割合スムーズなのは幾度か帰路で付近まで来た経験値ゆえ。逃げられやしない状況下とて嫌な焦燥に急かされる爪先は早足から小走りに、小走りから駆け足に。呼吸を整えども落ち着かない鼓動は持て余したまま、深い呼気をひとつ置いて、インターホンを押し込んだ。)っあ!あのっ、突然すみません、木兎……光太郎くんと同じクラスの鹿目って言います!が!(無機質なカメラ越し、誰が対峙しているかも解らないから口吻は些か緊張でぎこちない。ざらつく胸裏は未だ不穏に波立ったままだ。) |
Published:2019/06/21 (Fri) 01:15 [ 9 ] |
|
カノって何色好きだっけ?俺はとりまゴールド! |
|
![]() 木兎光太郎 |
(男にとってはゼロか、イチ。正直"まだ見える"現状に不安はあれど憂いは無くて、どうしてこうなったは医者のセンセイが見つけてくれるし、己はそれまでできる限りのバレーをしていれば良かった。──そう、思っていたのだ。目が見えないことはそれだけ深刻なことだと思い知らされ、そして、ひそやかに絶望が迫っていることを漸く自覚することになる日。黄色い石が眼窩に嵌ったそこだけが異質に鮮やかで、鏡の世界はそれだけを見つめよとばかりに周囲をもやで隠していた。どえらいことになったぞと、家族に伝えて速やかに転がり込んだ大学病院はやっぱりなんだか独特で居心地が悪い。男が認識したのは、判明に時間がかかるということと5日間──つまりほとんど一週間は大人しくしておけということだった。そしてセンセイが言うところの『経過観察』が実質軟禁状態になることも知らなかった。普段通りに登校しようとしていた男を医者の勧めで保護者が止めたが、おそらく学校側も無理矢理登校しようとすれば捕獲する準備はされていた。何かがあってからでは遅いのだ、と念入りに言い含められ大人しくする3回の夜が明けた朝。どうにもこうにもじっとしていられないから、ジャージに着替えて筋トレすることだけは許可を得た。自宅敷地内のみ。異彩を放つ瞳は本人は隠す必要なしと断じてそのまま、これまでなかなか語らうことのなかった家族の団欒を思わぬ形で実現させながらリビングにて母親と居た。日暮れの朱色は分かるのに、窓ガラスとの境目が朧気な時刻に差し掛かって会話を遮るのは聞きなれたチャイム音。次いで、母親が応答したことでオンになったマイクから聞こえる少女の声。)………!カ、ッ………ぐ、 !!(すぐに誰だかわかった来訪者をまなうらに浮かべてに明るくなった顔色は卒然と歪められて衝動的に地に伏した。急にしゃがんだ息子に狼狽える母の声はマイクを隔てても伝わってしまったか。)だいじょうぶ、呼んで………。アレ、だろ。ぼくとくん、プリント持ってきたよー!だろ。(あこがれてたんだよ、コレ。双眸を両手で押さえながら、何かを堪えるように途切れ途切れの声は努めて明るく、歪んだ笑みの唇から発した。ぼたぼたと掌の端から溢れ出しているのは涙のようで、掌を外して表したかんばせは、瞳の周りは赤らむのに眼球には石の虹彩が何事もないかのように鎮座している。またひとつ何かが進んだ気がした。)俺が出る!(それでもやはり感情だけは溌溂とする男に、見かねた母に与えられたタオルでみっともない顔を拭きながら、片手を壁伝いに玄関に現状できる最も早い速度で飛んで行った。)おまたせ、カノ元気!?(扉を開ける。ドア横にあるインターホンの方を見る。きっと自分はいつも通り。そして、彼女のこともいつもみたいに見えるはずなんだ。──なあ、お前今驚いてる?笑ってる?それとも、)どんな顔してんだろ、……見えねーな。 |
Published:2019/06/21 (Fri) 17:55 [ 11 ] |
|
似合いすぎ!笑 ん~~グレー白黒~…ゴールドも…選べないっ |
|
![]() 鹿目舞花 |
(甘く強張る心地は彼に向き合うときいつだってそうだった。けれど現今それのみならず、不安と不穏の勝る状況下で、彼の親が出るかもしれないと別方向の緊張が相俟っては、単純な感情の処理しか叶わぬ胸裏はとうにキャパオーバー。全てを擁した神妙で待っていた接続が繋がれば、ひとときピッと肩が跳ねる。して、次の句を探した呼気がそのまま、 かたまった。)はぇっ……(音声情報のみで届けば余程ただごとじゃない応酬が、鮮明とは言い難い音質のみで外気を荒らす。両手が肩掛けのエナメルをぎゅうっと握るのは瞬時の所在なさ、動揺する心音が不自然な旋律で揺れている。困った様子の彼の母の応対に、)ゃ、あ、あの、~~プリント!渡しにきただけ、なので……、(気遣い模すにもへたくそな声を絞り出し、大したことじゃないのでだいじょうぶです、を伝えきる前に『待っててね』と接続が途切れてしまえば引き返すにも踏み込むにも中途半端なつまさきが扉の前で立ち往生。無意識下、まともに直視しないようにしていた彼の容態が殊の外深刻かもしれない。自ずと視線はスニーカーへ、重力に負けたように。己の支柱が崩れ去るような危惧を過ぎらせるには十分の情報量を持て余し、やっぱり愚鈍な脳は情報処理が下手なまま。開け放たれた戸の先を、咄嗟に見上げた瞳は彼なんかよりよっぽど泣きそうな顔をしていただろう。)木兎っ……(忘れ掛けてた呼吸を取り戻す。も、ぱちり、音が出そうな勢いで瞬いた。潤む双眸が、だってあまりに彼に不釣合いで、思わず伸びた指先が愚直さだけで彼の頬へ触れる。)……泣いてんの?どっか痛い!?身体だいじょぶ!?だいじょぶじゃないから休んでんのか、ってゆか出てへいきなの?!わーーもうごめんね急に押し掛けて、 ………っねえ、(投擲された問いなんぞそっちのけ、言いたいことなんか山程あって伝えきれなくて、氾濫するように声が雪崩れる。無遠慮な濁流は不意に失墜して、彼の頬を親指が拭ったら、情けなく震えたのだってバレちゃったかもしれない。見上げ慣れた双眸を見据える。眉尻が情けなく下がる。)見えないって なに…… |
Published:2019/06/24 (Mon) 12:34 [ 18 ] |
|
ピンクじゃないの? よく着けてんのは空色だよな、違ったけ? |
|
![]() 木兎光太郎 |
(何もかも些細なことなのだ。男の前に迫られるのは、いつだって二択で、此度のことも耐えられるか否かを突き付ける。目の奥の痛みなんて一過性でそのものに関しては絶望なんてない。生理現象はどうしたって我慢ならないから男泣きはやむ無しだ。ただ、漠然とただよう不安を気のせいで済ませられない情操の愚直さがいっそ、自ら首を絞めるような危篤な状況を作っているように感じていた。普段通りを演じるつもりはなくて、真に今でも変わらないと思っていた。瞳の色とか視界とか変わったことも無くはないけれど、それでも木兎光太郎となる中身のひとつも衰えちゃいないから、ドアを開けて彼女を見てもやっぱりいつも通りじゃ居られない鼓動すら日常と変わらなかった。ただ、どうにもならないことはある。彼女の感情は声音で察した。──ごめん、コレは心配かけるヤツだ。)おーおー落ち着け?!ちょっと目がな?あ、痛くはない!今は。あと、──……大丈夫だけど、だいじょばないかも。(頬に触れる指先に擦り寄りたくなる甘えを抑えて、そっと掴んだ。一回りも二回りも小さい手のひら。彼女の前では格好つけたくて、でも何でも知って欲しくて知りたい気持ちが鬩ぎ合う。指先だけを掴みながらほんの一瞬逡巡して、そして、巻き込むことを決めた。)急にすげー目ェ見えなくなってさ。や、見えるんだけどボヤけるってーか……?(二人分の腕の距離分離れた彼女のことだって見えるっちゃ見える。ただ、目を凝らそうとして眉間に皺を寄せる仕草は昨今と比べればずっとぎこちなく不自然。何より出来たことが出来なくなるもどかしさはぐるぐると腹の奥底からのたくって、自分の目じゃないような気がしていた。「中、あがってく?」そう言って顎先で室内を促して、母に声を掛けながら行先は自室を告げる。)プリント持ってきたんだろ?ありがと!ついでにソレ宿題ある?(玄関先だっていいから強く引き連れるようなことはしないけれど、未練たらしく片手を離すことは出来なかった。まだ焦点が彼女に合わせられる程度の視力に落胆と安堵を同時に感じながら、泣き止んでみれば一層目立つ陽光みたいな琥珀色の瞳が人外じみた眼差しを硬質に変貌させていた。) |
Published:2019/06/26 (Wed) 07:25 [ 27 ] |
|
ピンクも青も!スキだけどそれとこれとは、……よく見てんね?! |
|
![]() 鹿目舞花 |
(欣喜と憂慮が綯い交ぜになって、混迷するは双眸のみならず胸の内も同じこと。第一に声音の溌剌さに安堵するも瞬時にて、落涙の余韻に赤らむ眦に吃驚すると同時剥き出しの不安が声色を震わせた。捲し立てる忙しない朱唇がぴたりとおとなしくなったら、あんまりにもいつも通りな彼の挙動に安心していいのか心配していいのかわからなくなる。落ち着けって、木兎にだけは言われたくない。言葉にする手前、不満げに面積を狭めた空色を彼へと放るが、次ぐ現状報告に「目?!」「今は?!」「そんな痛かったの?!」、思わず泣きそうな声が逐一愚直過ぎる動揺を律儀に准えてしまっては弁明の余地もあるまい。)だいじょばない、~~ってぇ、……っ、(口角がふにゃふにゃとなっさけなく下がって、何から口にしていいかわかんなくなる。瞬間、息が詰まって惰弱な心臓がより一層大きく跳ねたのは、大きなてのひらの温もりを覚えたからだ。染まるまなじりばかりがあんまりにも明け透けで、いっそ捉えられていなければ良いと内心に巡る不謹慎。甘い焦燥を飼い馴らす胸中で、引力みたいに視線が惹かれるのは手慣れた仕草。涙に艶めく眼差しがきらきらしててきれい。)眼精疲労、……とかってレベルじゃないもんね、ボールぶつかったりとかした…?えぇ~~、元気じゃない木兎とかぜんぜん想像できないんだけど……(曰くの"だいじょばない"を自己勝手な解釈に挿げ替え、しょんと肩落とすはさながらしょぼくれモードの伝染だ。何時何処でだって元気120%で、オンかオフしかなくって、太陽の下を走り回ってるのが似合いの彼だから、現況の擁す深刻性に胃がちっちゃくなる心地。大袈裟、って笑ってくれたらそれで良いのに、)ぁえっ、いいの?!てこんなトコで立ち話してるほうがアレか?!あっ、そうそうプリント!宿題はねぇ、古典と世界史と数学と~…(云々、落ち着きなく弾け回る口吻は指先に疼く微熱を誤魔化したがって常より饒舌だった。指折りしながらされるがままに促されるまま、「お邪魔しまぁ~す…」を遠慮がちな声色で紡いで靴揃え、ついでにスカートの折り目も整えるド緊張。捉えられた片手はそのまんまで、無防備なつまさきが彼の部屋の戸を跨ぐ。興味本位持して見渡すより先に、振り返る彼のひとみの方が余程。目が反らせなかった。詰め寄る一歩、ぐっと背伸びで近距離が許されるなら、)……やっぱそれ、目、ヘンになってない?ヘンってゆか、(じいぃっと無遠慮な視線を注ぐ。)………きれい。(ため息みたいにつぶやいてた。) |
Published:2019/06/28 (Fri) 19:04 [ 33 ] |
|
カワイー!のが好きなのかなって、俺の観察力もなかなかだろ! |
|
![]() 木兎光太郎 |
(開口早々に己の感じたそのままを伝えてしまうボキャブラリーに今更後悔もないもないけれど、彼女のギモンに答えるには自分の持ち得る情報すら少なすぎて「痛い!!」ってとこだけ言った。泣くほど痛いというか、目が痛いから泣いてしまうような有様だったので、“大丈夫”。“だいじょばない”のは、その先の。)俺に出来ることがねーんだよな。よく食って、よく寝るんじゃ治んなそ。(不摂生が病気の発症および進行をさせていたようには思えない、不定期によく分からないところで発作が起きてそして気づいたら目が見えなくなっていた。じんわりぼやける視界は慣れないもので、色の判別はできるから大雑把にどこになにがあるのかは分かる。彼女の願望が感情に揺らぐのは辛うじて。)キズついたとかなのかな~?ボールは割とぶつかってる!そー……ろくぶんのよんくらい元気…。補習ありそなテストの発表前くらい……。(天国か地獄か、宣告を受ける前の心境はその深刻度にかかわらずおおよそ同じ気持ちで、ざわざわする心境を共有できる彼女の存在はいつだって心強い。引き寄せるか強引な囲い込みか、我が城に招き入れるのに容赦はない誘導を押し進め、「じゃあ、教えて!」の無邪気そうに悪びれない楽をする選択。視界不明瞭のために、普段よりも物をなくす方向で片付けられた部屋は大ぶりの家具以外に物がなくて、そういやテーブル無ぇなのとぼけた風情が彼女に一言物申すように向くと、思ったよりも近かった顔にまばたきを多くさせ)そ?(変容していることは知っているけどそれを確信として伝えるのは憚られ、見つめられるその視線を独占している現状にこの期に及んでもやっぱり心地が良いから、何を遮るわけでもなく少し屈んだ。「なんか黄色い感じしない?」「赤い目とかだったらヤバさもっとあったのに」楽観的な感想をあけっぴろげに、もっと見てとでも言いたげな至近距離は少しずつ彼女に近づいていく。見やすいように、を第一に反応を見るには今の己ではこのくらい近づかないといけないから、ともすれば吐息のかかる距離をして、)なぁ、(と声をかけながら繋いだままの指先を引こうとして──閉じた自室の扉をノックする邪魔が入った。安定の親フラグ、飲み物と軽いお菓子を出すとのこと。残念がった顔が一瞬正直に浮かんで、すぐさま元に戻った。何をしようとしたかなんて、)なんでもない。(チャンスを不意にすれば言えなくなることだってあるわけで。) |
Published:2019/07/01 (Mon) 19:01 [ 41 ] |
|