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(好きな色合いは画面の中に) |
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![]() 土井花音 |
(あの彼の家へ訪問後、電話をして宣言した通り彼へのインタビューを敢行したのは彼も知るところ。そうして録った音と彼の使える映像を使い編集を終わらせ、迫る大会への準備は出来た。それを全体で機器のチェックと称した観賞会を昼休みに行い他の部員たちの作品を観る。コンクール提出用を見終われば、次に同じ時期に作るように指定した後輩達の作品だ。後輩達が作成した作品達はまだ完成まで漕ぎ着けていないがそれでも意識を引いたのはテレビドキュメント作品で都市伝説的な病気に纏わる内容だった。後輩達が調べて医師に何とかインタビューをしたのは良いがそれに時間を取られたという。こんな病気が実際にあるのかと感心し、総評の際に自分の作品を含め色々と良かった点と改良点を其々あげ連ね、意識を引いた後輩の作品には―)マイナーな病気をよく見つけたね、そこはドキュメントとして良い視点だし、社会問題としても認知度は高くなった方がいいものだと思う…ただ認知度についての聞き込みが無いから、そこはちゃんと入れて。あとこの―玉眼症っていうのは病気で治療法がないなら注意して作って。これはちゃんと作らないとこの病気の怖さも何も分からなくなる。(そう注意して早々に席を立てば無理やり聞き出し彼の検査確認の時間に間に合うようにと駆け出す。急いだ所でどうという事があるわけではないが、聞いた大学病院へと向かう途中に「土井!」と声をかけられて慌てて足を止めて振り返れば、そこに居たのは他校の放送部で親交のある男子の姿。)あれ、久しぶり?白鳥沢ってこの辺だっけ?(「違うけど、どうしたんだよ。そんな急いで…取材か?」なんて雑談を振ってくるものだから、違う違うと即返して友人がいる病院へと向かう事を伝えて別れようとすれば、何故か腕を捕まれた。)何?私、早く行きたいんだけど…―――は?(「お前が好きだ」と初めて告白というものをされ、その唐突さも含めて驚いたけれど返事は最初から決まっている。緊張した様子で此方を伺う相手には悪いが答えようと口を開いた所で「返事は県大会終わってからで!」と相手は言い残して去って行った)…なんだったの、あれ。(ある意味見事な迄の逃走に呆気にとられた。答えなんて、既に決まっているのだからと返事迄に言葉を選ぶ時間を与えられたと思えばそれでいいか、と現在優先すべき相手が居るだろう病院へと足を進める。道すがら、向かう病院は後輩が取材をした場所であり、教えてくれた医師が居ることを思い出せば先に先輩としてお礼を改めて伝えようと病院へ到着次第総合受付でその旨を伝え、今日は外来担当だとの事で医師の担当する部屋を教えてもらいそこへと歩みを進める。途中、医師の担当する科の受付でも伝えると、別室に通された。医師や看護師が忙しなく動いているなか、「岩泉さん」という彼の名前が耳に入れば思わず聞き耳を立てて、その内容に思考が止まった。――何故、どうして。何で。そんな言葉が頭を巡り、全身から血の気が引いた気がした時に、声がかかった)あ、お忙しい中すみません。先日お話を伺った青葉城西高校放送部です。後輩たちのお願いを聞いて頂きありがとうございます。(平静を保とうとして、すらすらと出てくる言の葉と作り笑顔は放送部で培われたもの。彼の容態は末期だという言葉が耳から離れず、思わず「治療法は、本当に無いんですか?」とすがるように医師のアメジストに似た色合いの瞳を見つめ、首を横へ振られればまるで奈落へ突き落とされた気になる。何とか礼の言葉を伝えてその場から離れ、通話可能エリアに入れば彼に連絡を入れて留守番電話になればほっと息をついて。)岩泉、結果どうだった?そろそろ出た?まだ?聞いた病院に来たけど、流石に中で捕まえられそうに無いから…良かったら教えてね。(きっと録音ならこの声で動揺を隠せただろう。そうして家へと帰り、自室へとたどり着けば様々な感情が溢れて視界が歪む。息が苦しい、何かが喉に詰まったようで、荒くなる呼吸に合わせて声が洩れる)な、で……っ、私がっ(後輩が選んだ題材で知った病気は身近で誰よりもかかって欲しくなかった人に襲いかかった。あのボールを追うときの眼も、友人たちを見る眼も、何よりも自分を見る眼が好きだ。それが、恐らく自分が原因で見れなくなる。自分が居なければ、彼は病気になんてならなかったのかもしれない、あんなに近づかなければ、違ったのかもしれない。なんて可能性をいくら考えた所で彼の病状が良くなるわけではない。それでも、解決策はあるのだ。彼が光を失わず、大切な仲間と好きな事を続けられる鍵を握っているのは、恐らく自分。―自分でなければ良いのに―一瞬浮かんだ思考は本音であり、そして同時に自分をも傷付けた。)いわ、いずみ…、ごめん、好き、好きなの……好きになって、ごめんっ(初恋なのは自分もなのに、何故自分でなく彼なんだろう、なんて思ってしまう。彼のバレーをしている姿が好きだ、何気ない表情も、自分との会話で柔らかくなる視線も好きだ。三年という月日を経てこんなにも彼の事を好きになり、その彼の隣に並びたいと努力してきたのに―都合が良いと言われたっていい、神に強く強く願う。どうか夢であれと―この病気が恐ろしいのは罹患者の心の状態で病状が悪化し、罹患者が心を寄せる相手との関係一つで回復の可否が決まるという点だ。) |
Published:2019/07/05 (Fri) 22:16 [ 9 ] |
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