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(未来へ続く道しるべ) |
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![]() 岩泉一 |
はあ?ウルセーわクソ川ボケ。(平素と変わらぬ暴言が、平素よりもおとなしい口調にて紡がれ、真白の個室に反響する。「ちょっと、心配してきてあげたのに!」とわめく幼馴染に対しても岩泉の塩対応は少しも変わらず、「とっとと帰れよお前」と一蹴する姿はすっかりいつものそれである。「――そろそろ来るんだからよ」と常よりも少しばかり不安定な音にて言葉が続けば、いつもの調子で騒ぎ立てていた幼馴染も静かになってしまうのだが。「……馬鹿だねえ、岩ちゃん」「うるせえ」とゆく当てもないやりとりをしているうちに、病室の外に人の気配を感じた。ゆっくりと扉の開く音。岩泉は病室の扉へと視線をよこす。けれど、其処にだれがいるのかを判別することはできない。しかしながら、傍らにいた幼馴染が離れる気配に、正しく"彼女"がそこにいるのだと悟った。そして幼馴染が何のためにこの場に留まっていたのかも正しく理解する。美しい翠を映した岩泉の瞳に彼女の姿が映らぬと知って、そして岩泉が今日この場に彼女を呼んでいると知って、だからこそ彼は此処にいたのだろう。出ていく際に「じゃあ、あとはよろしくね」と言葉を残し、彼の気配が遠ざかる。同時に、うすぼんやりとしたシルエットしかとらえられない、彼女の姿を岩泉の視線が追いかけた。)おせっかいな奴。(一言つぶやいてから、)悪い、急に呼び出して。部活とか大丈夫だったか?(病室と岩泉一。あまりにも不釣り合いなそのふたつを、彼女の瞳はどのように捉えているのだろうか。いとおしそうに細められた瞳は、透き通る翠色をしていた。いつかの夜を思い出す。覚悟はとっくの昔に決めていて、あとはもう、踏ん切りをつけるだけだった。)どうしても土井に伝えたいことがあってよ。無理言った。(忙しい時期に悪いな、ともう一度謝罪の言葉を紡ぐ。一拍置いて、息を吸った。唇を開く。空気が震える。)土井が好きだった。(告白の言葉は実にシンプルだった。選んだ言葉は過去形だ。その音は、果たして彼女にどう響くのだろう。)いつからかなんて覚えてねえけど、好きだった――ずっと。(ふはっ、と可笑しそうに笑みを散らす。「びっくりしたか?」なんて問いかけるそれは、悪戯少年のものにも似て。) |
Published:2019/07/08 (Mon) 00:51 [ 6 ] |
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未来は選ぼうと思えば幾らでもあるけど…岩泉はどんなのが良い? |
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![]() 土井花音 |
(彼が検査入院をすると知ったのは彼の幼馴染に呼び出されたから。「ねぇ、」と珍しく歯切れの悪い姿に何とはなしに彼の事を知ったのだと悟った。そうして彼が検査入院をする旨を言った後黙り込む物だから何を言いたいのか、と首を傾げるもすぐに思い出した。彼は最初から言っていたではないか、「岩ちゃんは俺とバレーをするの」だと。何度も自分ともぶつかって、一番近くで自分と彼のやり取りを見ていたのは紛れもなく目の前のライバルだから、何か思うところもあるのだろう。)…なんて顏してんの。あんたは岩泉の味方なんでしょ?なら、そんな顔しないでよ………私の決心まで鈍りそうになる(そう告げれば驚いたように顔を上げて此方を見る。「…岩ちゃんの今の状態、知ってんの?」なんて、悔しそうに拳を握っているのだから仕方がない。拳を開かせようとその手を取り、大事な手をそんなに強く握るなと一声かければ「あんたは…それで良いの?」と囁くような声で言われた。)…及川、あんた本当にバカでしょ。岩泉と一緒にバレーするのは俺だって一年の時言ってたの忘れたの?私はあくまでもあんた達の青春の一旦の画を撮ってただけ……それだけだよ。(そう笑って言えば何か言っていたようだけれども聞き取れず、一先ず教えてくれて有難うとだけ伝えてその場を去る。) (そうして、彼からの連絡があれば指定された通りの時間に着くようにと、少し大げさになった荷物を持って向かう。ガサリと重い音を立てるのは先日の土日に行われた県大会の結果。ようやく手に出来た、夢にまで見たテレビドキュメント部門の最優秀賞トロフィー。彼を主人公にした作品で、全国に行けるのだと思えば嬉しくもあり、苦しくもある。指定された病室へとたどり着けば聞こえたある意味何時ものやり取りに、笑みが浮かぶ。)岩泉、来たよ。(と何でもないように声をかけながらライバルとすれ違いながらも彼の傍へと向かう途中、かけられた言葉には軽く手を上げて応える。部活の心配を真っ先にして来るところは自分の放送に向ける熱意を知っているからだ。だから、彼が見えなくとも安心させるように笑みを浮かべて彼の傍の椅子に座り彼の綺麗な瞳から目を離す事なく、笑う。)ん、部活は大丈夫。あ、報告遅れてごめん、岩泉を主人公にした私の作品、全国行くの決まった。昨日県大会で無事進めたから、一足先に全国行って来るね?…にしても、なんだか岩泉と病院ってミスマッチすぎて……後で写真撮っても良い?(自信満々というように大会について伝え、その後少し冗談を言うような軽い口調で問いかける。)ん、何?主人公になってくれたお礼ならするけど…(なんて誤魔化すような言葉を紡ぐのはその先の言葉を少しでも引き伸ばしたかったからだけれども、どこまでも部活の事を気にするのも彼らしいと小さく笑って彼の言葉を待つ。そうして聞こえた彼の告白に、自分の息が止まった気がした。彼は驚きゆえだと思ってくれるかもしれないが、実際は彼の選んだものが分かった事に安堵した事ともう一つ。彼の口から自分への思いを聞けた嬉しさだ。)―――――吃驚したよ。バレー一筋な岩泉だから、そんなの、気付かなかった。…ねぇ岩泉、綺麗だねその眼。その色、私好きだな。でもいきなりそんな色になったから、検査ってなったんでしょ?(応えは、まだ返さない。そんな目をしていて過去形にするなんてとも思う自分は欲が深い。見えないのならと少し距離を詰めて、此方も悪戯っ子のように笑って彼の眼を覗き込む。さて、彼の反応はどんなものか) |
Published:2019/07/09 (Tue) 22:23 [ 12 ] |
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さあな。でも、やっぱり後悔のねえようにしようとは思う。 |
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![]() 岩泉一 |
(病室の扉の方向から聞こえた彼女の声は、いたっていつも通りであるように聞こえた。離れていく幼馴染に代わり近づいてくる彼女の気配。ふわりと香るのは、シャンプーの匂いだろうか。目が見えないと違う部分の感覚が鋭敏になるというのは本当らしい。静かにみみを傾ける。)マジか!やったじゃねえか。すげえ力入れてたもんな。……嬉しいわ、マジで。おめでとう。なんか、俺が出てんだっておもったら照れくせえけどよ。(彼女の報告を受けたならば、解りやすく岩泉の声は弾むだろう。はにかみながら、まずは心からの祝いを述べよう。彼女がどれだけ情熱を傾けていたかを知っているからこそ、彼女の得た結果が喜ばしく、そして誇らしい。「一足先に」という言葉にはほんの僅かに言葉に詰まり、「……ああ、」と静かに頷いた。)そんなもん、撮ったってどーしようもねーべ。却下。(紡がれる冗句にはふはりと笑みを落とす。そうしたふたりの距離感はたいそう心地よいものではあるものの、いつまでもそうしているわけにもいかない。今日は彼女に、伝えなければならないことがあるのだから。――決意が揺らぐ前にと紡いだ言葉は、ただしく彼女に伝わっただろうか。今や視界に靄しかない岩泉の瞳では、彼女の表情を移すことは出来なくて。ただ、ほんのわずかに息をのんだ音が聞こえて、「驚かせて悪ぃな」と悪戯小僧の表情の儘わらった。)まあバレー一筋であることにはちがいねえな。ただ、土井はそれとおんなじくらい……っつーのが正しいのかはわかんねえけど。俺にとってとくべつだったんだよ。(変化球で気持ちを伝えるなんて器用な真似は岩泉には出来ない。だからこそ、岩泉の言葉は何処までも真直ぐ、ド直球だ。近づいてくる気配にぱちりと瞬きをひとつ。至近距離になれば、多少なりと彼女の表情が見えるようになった。どこか楽しそうに映るのは、岩泉の気のせいだろうか。瞳の色に言及されれば、一方の岩泉は苦笑をにじませた。)まあな。……好きって言って貰えんのは、結構嬉しいんだけど。これの所為で、俺、もうバレー出来ねえんだわ。(言い切る。)この瞳のまんまだと、目が見えなくなるんだと。だから、土井の撮ってくれた動画が俺のバレーの見納めになる。らしい。(医者から言われたことばを思い出しながら音にする。肝心なことは、まだ告げない。彼女がこの病の全貌を知っていると、岩泉は思ってもいないから。眉を下げて笑った表情は、きっと柄にもない寂しげなものだっただろう。) |
Published:2019/07/11 (Thu) 23:25 [ 20 ] |
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そっか、なら後悔しないように今できる事をやらないと、だね。 |
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![]() 土井花音 |
うん、取れたのは岩泉の協力があったからだよ。でなきゃ難しかったと思うし…だから岩泉には本当に感謝してる、ありがとう(トロフィーもあるのだと言って、取出して触らせようと持って来た箱に触れて。彼の頷きには行ってほしいという願いを込めて微笑みで返す。)えー?珍しい姿って事で良いと思うんだけどね。(そう明るく言いながらも願うのは、この光景が二度とない事。選手を続けていれば怪我もあるだろうけれど、それでも彼が健康体であれるようにと思いを込めて言葉を紡ぐ。――そうして、彼の真っ直ぐな言葉に一層心を打たれる。自分も同じだと感情を返したいけれど、それは彼に引導を渡すも同然と分かっているから一つ、深呼吸をして。)うん……私にとっても、岩泉は高校の最後に撮りたいって思うくらい、特別だよ(特別の意味を敢えて言うことはしない。この特別という言葉を彼がどうとるかは分からないけれど、自分にとっても彼が特別なのには間違いないのだ。視線があった気がして、この距離だと見えるのかと頭の隅で考える。だが応えを返さなかったのはそんな寂しそうな顔をさせたかった訳ではない。これのせい、と語るその要因は自分なのだと改めて分かった事に胸は酷く痛むけれど、それよりも先ずはと彼を見つめて、声を張る)らしい、って事は治るしバレー出来るようになるんでしょ?…なら、そんな顔しない!治る希望があって、それが出来るところにいるなら顔上げる!(バシン、と鼓舞するように彼の背を叩く。彼らしくないとは言わないけれど、寂しそうな顔を見ていられなかった。)ねぇ岩泉、あんたの幸せって何?私が叶える手伝いするからさ、教えてよ(自分が彼の幸せを考えてもそれが合っているかなんてわからない。だから彼から直接、彼の幸せを聞きたかった。この流れならバレーがしたいと答えるだろうと予想して、それに対して彼に伝える言葉はずっと考えて来たのだ。何も知らぬという体でそう笑って尋ねるけれど、本当は彼の望むだろう未来を考えると嬉しさは勿論あるけれど、同じくらい胸が苦しくて辛くて仕方ない。でも知っている事も此方の気持ちも知られてはいけないと、震えそうになる声を押し殺して紡ぐのは常と変わらない声色だろう。) |
Published:2019/07/14 (Sun) 00:21 [ 26 ] |
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お互いに、夢に向かって? |
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![]() 岩泉一 |
そっか。(特別ということばに知らず、頬が緩んだ。けれど、決定的な言葉はない。もしかしたら特別かもしれない、なんて自惚れることはあっても、彼女の感情は結局見えないままだった。けれど、それでよかったのかもしれない。本当に彼女の紡ぐ「特別」の意味を知ってしまうと、あの夜の決意が消え去ってしまう様な気がした。)はぐらかすの上手いよな、土井は。(けれども己の言葉をはぐらかされていると感じるのは本音で、だからこそ紡いだ言葉はちょっとした意趣返しの心算。「好きだっつったのは、冗談でもなんでもねえんだけど」と紡ぐ言葉は真剣だった。深緑に輝く瞳もまた、真剣な色を宿している。)――おう。でも、けっこう迷ったんだよな。治すべきかどうか。(詳細は紡がないまでも、彼女が何事か察しているのは、鈍い岩泉にもよく分かった。何も知らなければ、好奇心旺盛な彼女はどういうことかと聞いただろう。病の全貌を知っているのかは定かでないが、上手く説明できる気もしないから、彼女がざっくりとでも病について理解してくれているのは、ある意味幸運だったのかもしれない。)俺の幸せは、(一度息を吐いて、言葉を止めた。紡いでいいのか迷った。唇を閉じて、瞳を伏せて、――それから、もう一度瞳を上げる。)俺の幸せは、バレーをすることだ。(まっすぐに彼女のことをみつめて、)――そんで、土井に、見てもらうことだ。(――そして、付け足した。)なあ、土井。俺はすげえ土井のことが好きだ。でも、俺のこの気持ちが実ったら、俺の目はずっと見えなくなっちまうらしい。それが俺は我慢なんねえ。――だから、振ってくんねえかな。それで、俺も――お前のこと、あきらめるからよ。(静かな声は決意に満ちていただろう。けれど、彼女の返事を待たずして、岩泉は続ける。)――そんで。俺はずっとバレーを続ける。土井はきっと番組、つくってんだろ。俺が結果を残して、土井がプロになったら、きっと俺らは、今度は出演者と作成者として、出会うだろ。(未来を断じる声はきっと身勝手に響くだろう。けれど岩泉は紡ぐのをやめない。それは、岩泉が見つけたたったひとつの答えだった。)そしたらそんとき、また、恋しようぜ。(まっすぐに言った。言い切ってから、少しだけ照れた。赤くなった鼻の頭をかきながら、「――そしたら、お互い2回目だし。うまくいくだろ」なんて、根拠のない言葉を重ねた。)今度は――今度こそ、俺は、お前のことを振り向かせるから。(それは、岩泉が見つけた、病に対する応えであった。未来への希望に違いなかった。) |
Published:2019/07/17 (Wed) 00:20 [ 33 ] |
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それと、夢とは別の叶えたいことに向かって! |
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![]() 土井花音 |
(例え見えなくなっているとはいえ、彼の視線は雄弁に物事を語っているように見えて、返事をしろと言われているような気分になる。彼の病気の進行に関係する言葉なんて簡単に紡げないが故の行動でも、何事にも直球勝負な彼のお気に召しはしなかったようで、つい拗ねたような声がでる。)あのねぇ、はぐらかしてるって気付いたなら掘り返さないでよ…私だって冗談だなんて思ってないし、そもそも過去形でも告白してくれたのをそんな風に思ったりしないよ。(真剣な彼の眼差しを真正面から見据えて、返す。)でも、そうだなぁ…岩泉に返すんなら……思へども猶ぞあやしき逢ふことのなかりし昔いかでへつらむ、とか…明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな、って所かな。微妙に違うところもあるけどね。(返事で嘘はつきたくない。かといって下手なことは言えない。そんな葛藤の中で出したのが古典だったのは、彼が古典が得意かどうかはおいておくとして、聞いた覚えはあっても意味は直ぐにはわからないだろうと思ってのこと。ごまかしは一切ない、自分の気持ちの一部だからこそ、彼の目を見て伝えることができた。)……そこは迷わないで治す方に全力で舵取りなさいよ。ばか(迷うと言われたことが嬉しい、なんて言ったら不謹慎だろうか。最後の言葉は愛しいという気持ちが溢れての言葉だった為か存外優しいものになったけれど、気がつかなければいい。ーー彼の幸せに頷こうとしていたのに続いた言葉に驚いて目を見開く。此方に返事を与える隙もなく紡がれる彼の言葉に、未来に、同じ事を考えていたのだと分かって先程まで感じていた胸の痛みは薄らいだ。代わりとばかりに歪んだ視界に頬を伝う感触で涙だとは分かるも、止められそうにはなかった。)――作ってるのがどんなのになるかは分からないけど、岩泉にそんな事言われたら私も何が何でも番組製作会社に入らないとね。でも最初はアシスタントなんだから早くに出世しないでよ?(軽く息を吸って、涙を拭ったならなんとかそう返す。今はまだ、そうとしか返せない。だからこそ、吹っ切れたように笑って、彼をみる。)あーもう、流石というか、らしいというか…うん、それでこそ岩泉だね。岩泉はさ、やっぱり目標を決めて突っ走ってる姿が似合ってるよ(自分も同じ事を考えていた、と言うのは簡単だけれど、そんな野暮なことは言わない。彼が考えて出した結論だと言うことが、自分にとっては嬉しかったのだ。何カ所か訂正したいところもあるけれど、それもまだ、時期じゃない。ふわりふわりと浮かれる気分も、彼が望んでくれた未来のためには、と気を引き締めて用意していた言葉を紡ごうと口を開き)それにしても振る、ねぇ……良い?岩泉。私は今、ある意味恋人は放送で、放送関係以外のことはあんまり目に入らないようになってる。だから正直付き合うとかは今は考えられない。(嫌いだとも好きだとも言わないで、真実だけを伝える。これは自分に告白をしてきた友人に対してと同じ答えなのだけれど、知らぬ彼には関係のないこと。それはそれとして、彼にはもう一つ付け加えて。)それと……未来では絶対に岩泉が想像してるよりももっと良い女になってるからさ、お互いにプロとして再会するのも楽しみだけど、私と恋をする・振り向かせるって言うなら、私にまた「撮りたい」って思わせるくらい活躍してよ?(頬を染めて紡がれた彼の言葉が今後の自分の原動力になるだろうと、確信をする。彼に恋していること、ここで一度破れることも同じだと知られているような口振りが何やら気恥ずかしくて、まるで挑発するように笑って言って見せたけれど、彼ならできると信じてのことだった。) |
Published:2019/07/18 (Thu) 01:30 [ 35 ] |
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