あ、のさ。次のテストで百点取ったら言いたいことあんだけど。
いや別に大したことじゃないんだけど…けど!
そうやって決めとかないといつまでも言えないから。
だから……ちゃんと聞いて。笑ったりしたらぶん殴るからね!
Character
見た目こそ小柄で控えめな雰囲気であるが、口を開けばその印象はひっくり返る。生意気だとか態度が背の丈に合っていないだとか、黙ってればいいのにだとか。小戸森を知る者は皆そういった言葉を並べるものの、では嫌いなのかと聞かれればそれは違うとこれまた揃って否定する。それは可愛げのない態度の奥にある小戸森の本来の性質を知っているからだろう。口の悪さや無駄に大きな態度は照れ隠し、或いは強がりだとは少し距離を縮めればすぐに分かる事。こうと決めた目標には直向きに努力し、感謝や詫びは時間がかかっても伝えようとする。ただ不器用な人間なのだ。本人も自分が捻くれていることを自覚し改善を試みているものの今のところは難航中なんだとか。幼い頃から共働きの両親に代わって何かと面倒を見てくれた祖母が大好きで、自他共に認めるおばあちゃん子。茶道を始めたのも祖母の勧めである。そんな大好きな祖母、ひいては高齢者の助けになりたいと現在は介護士を目指して勉強中。今は勉強第一と言いつつ、とあるクラスメイトに惹かれているとは自分でも認めたくないところ。それでも気持ちは膨らみ続けるばかりで、無意識に目で追ってしまい視線が交わりそうになっては逸らすということも増えてきているとかなんとか。
Daily
(茶道部の活動は週三回、部活の無い日は直帰が小戸森の常であった。けれどもその日は友人とファミレスへ向かう約束をしていた為、帰り支度を整えてもまだだらだらと教室に居残っている。教師に呼び出されたその人が戻るのを待ちながら、暇つぶしにと広げたノートへ意味の無い落書きを記してみた。矢印のような、傘のような。頂点をハートで飾り、直線で簡易的に仕切られた二つの空欄をとんとんとシャープペンシルの先で突く。俯きがちに頬杖を突き、あたかもノートを見つめていますよと言わんばかりの姿勢でちらりと視線を滑らせたなら、クラスメイトであるその男子生徒が大きなエナメルバッグを背負い、教室を出ていく背中を見る事くらいは出来るだろう。チームメイトと談笑する声が放課後の喧騒に交じりあっという間に遠くなっていく。明るい笑い声、その微かな音を拾うべくそうっと睫毛を伏せた。けれど「和奏ー?」待ち人がひょこりと教室を覗き込んできたならば、慌ててノートを閉じ立ち上がる。)な、なんでもないってば!いいから行くよ、お腹空いた!!(動揺を指摘されても無視して彼女の背中を押し、昇降口へ向かおうか。体育館だけは絶対見ないようにと細心の注意を払うのは最早癖。)……は?(――運ばれてきた料理に気を取られていたせいか、話題が恋愛トークに移行していることに全く気付かなかった。動揺を隠すべく掬ったグラタンを頬張っては後悔。まだ少し熱かったそれに悶絶する小戸森を気遣いつつも「で?どうなの?」と畳みかけてくる友人へ、「このヤロ……!」なんて恨めしそうな声が這う。)……どうもこうも、無い。あほらしい。(あっさり言い放つ己へ非難するかのような視線が刺さる。更にはずいっと覗き込むように見つめられ思わず仰け反った。)~~っか、彼氏とか、今は興味ないっていうか、関係無いし…!私には勉強もあるから、…正直、恋愛とかしてる暇ない…。これ以上成績落ちたらやばいもん…。(降参。両手を顔の隣に掲げ、本心の一部を曝け出す。元々地頭が良い方では無いのだから余所見している暇はない、そう付け足したのは事実で友人もよく知っているからこそ、それ以上の追及は無かった。)でもいつかそういう機会が来たら、(――放課後、盗み見た背中が過ぎる。蓋をして見ないふりをしてきた感情は今にも溢れそうで、その名を認めるのは時間の問題。悔しいことに、既に頭の中はその人のことで一杯だ。)…その時は相談乗って。(今はまだ自分の内でだけ抱えていたい。そう願うことの気恥ずかしさを誤魔化すように、程良く冷めたグラタンを頬張った。)