“恋とはどんなものかしら”……乙女ならば一度は夢を見そうな、甘い言葉ですわね。
どうかその瞳に映った夢を忘れないで欲しいと、わたくしは思います。
忘れることは失くすこと。忘れようとすることは認めないこと。それはとっても悲しいことだと、わたくしは思うのです。
ですから、どうかその胸に抱いていらして。わたくしからの、ささやかなお願いです。

Character

とある資産家の娘として生を受け、厳しくも甘やかに育てられた。その結果、願われたままにしゃんと背筋を伸ばした姿が印象的な令嬢に成長する。可憐な少女時代から今日に至るまで、お花やお茶やお裁縫は勿論のこと料理やダンスも――何だって教養と才能が許してくれた。まるでお手本のような仕草で女の子の憧れを詰めたような。そんな彼女の一番の得手はフェンシングであると、想像できるものはあまりいないだろう。時には淑女のように家庭的な一面をのぞかせてみたりして。けれど時には凛々しく、踏み込む一歩は鋭く相手から一本を奪う。見る角度によって映る色を変化させるその中でも変わらぬのは、決して乱れぬその在り方と真っ直ぐに伸びた美しい背の印象だろう。しっとりとしたメゾソプラノは柔らかさを持てどもしっかりとした芯を持ち、まろやかに笑むが常。人を飾ることは好むが自分を飾ることをあまり好まぬのは武術に深く携わる為か、それとも本質的な部分が影響してかもしれない。感受性豊かでありながら不安定、鮮やかでありながら脆く儚い。相反する一面を決して人には見せぬのは、万能の下に隠された傷とその矜持があってのこと。叶わなかったもの、失ったものさえ自らの色として、今日もしゃなりと背筋を伸ばして微笑もう。

First Love

もとより道ならぬ恋でした。あの方はわたくしだけにお優しかったわけではない。わたくしだけが特別だったわけでもない。それでもわたくしには誰よりも特別に見えていた方でした。叶わなかったことが残念と、確かにそう思います。けれど叶わなかったからといって、あの方に教わったことが一つとしてなくなることはない。もしもなくなるとするならば、それはわたくしが忘れようとした時、それを認めなかった時です。ですからわたくしにとっての初恋はけして、失うばかりのものではありませんでした。それだけは確かに、胸を張って言えることです。