可愛いもの、美しいもの、心を惹かれるものには触れてみたいと思うものでしょう?
………何故、それを我慢しなければいけないの。
つずらはそんな勿体ないこと、したくないよ。だから、……触れさせて。

Character

何の不自由もなく生きてきた少女は、恵まれた家庭に育ったという自覚を持っている。相応にお金持ちであったし、それなりに身なりは整っていた。容姿だって悪くはなく、何処かに不具合を抱えているわけでもない。少女は生まれ落ちてすぐその後から、ずっと恵まれて生きてきた。唯一の不幸があったとするなら、少女の他に両親には子供が生まれなかったことだ。少女を生んだ時、母親は既に良い年頃だった。女と呼べる年頃の狭間くらいの頃であったから、遅くに生まれた少女は一段と愛情を注がれて育つことになる。少女の家は由緒ある家柄であり、父親は代々続く資産家の一人息子だった。母親も相応の身分の者で、二人は恋愛を経て結婚したものの、よく聞くような家柄での騒動などは起きなかったと少女は聞いている。少女の母親は実業家の娘であり、母親の上には兄がいたものだから、母親はお咎めも無しに父親と一緒になれたのだそうだ。そうして始まった二人の暮らしであったが、資産家の跡取りである父親と、その嫁である母親は少女の祖父母と共に生活しなければならなかった。その四人の生活が暫く続き、漸くとして生まれた少女は四人の大人に愛されることになる。つずら、という名は葛籠から頂戴したらしく、これは祖母がつけた名前だった。大切なものを保管できる箱として古き昔に重宝されたものから拝借した名を、少しばかり変えて響きだけを残したという。大切なものを守ることのできる子となるように。それは、少女がこの家の唯一の跡取りとして立派に生きていくようにとの意味も込められている。それ故に、祖父母は両親以上の期待と愛情を少女に注ぎ、様々な形で少女の行動を制限してきた。それは門限に始まり、習い事を通り越し、色恋にまで及ぶ。少女は恋することを禁じられ、相応の振る舞いをするようにと躾けられ、軈ては随分と大人しい性格へと矯正されてしまった。淡々と言葉を紡ぐ様は、単語と単語をなぞってつなぎ合わせていくようにたどたどしく、けれども甘やかされて育ったが故の、大人になりきれていない子供らしさも滲ませる。大人しくもきちんと駄々を捏ね、思ったことは思ったままに発言し、何故それがいけないことなのかを理解するまでに多くの時間を必要とする。実年齢よりも幼く見られることが多いのはその所為か、それとも未だに恋を知らぬが故か。

First Love

初恋に味があるとしたら、何味だと思う?つずらは、甘い蜜の味だと思う。だからね……舐めて、触って、だきしめたいの。危ないことかな、いけないことかな。………でも、つずらは舐めてみたいの。触ってみたいし、だきしめて、大切にしてあげたい。……初恋って、とくべつ…なんでしょう?だったら、知らないまま大人にはなりたくない。………つずらの夢はね、恋をすることだから。いつか素敵な人に出逢って、その人と恋に落ちて…そうして、そうしたら……うん。それがいちばん幸せだから、後はどうなったって……いい、の。