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續.渺茫なる春嵐の向こうに |
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![]() 種崎未稀 |
(急いで飛び出した身は、あまり多く持ち合わせている筈もなく。本当に、必要最低限といった資金は二人合わせても底をつくのは時間の問題だった。それでも、彼女の口から紡がれる情景の数々はもう光を映さない眸に実像を結ぶかのように鮮明だった。そう、確かに幸せだった。誰が、何を云おうとも幸せだったのだ。だから、彼女の告げた提案にも直ぐに頷く。「それは屹度、素敵なことね。最後の最期に貴女を見ることが出来ないのは少し怖いけれど……」「でも、今世も幸せで来世も幸せが決まっているだなんて、私は世界で一番幸せね」そう。だから──) (冷たい水に身を沈める。脚先、膝、腰──そして、胸元。もう光すら映さない暗闇も、この手を繋いでいる彼女が手を引いてくれているからなにも怖くないのだ。震える彼女の手をそっと包むように重ね)幸子ちゃんは、屹度見つけてくれるわね。信じているわ。だから私も、探すわ。運命を賭けて。──そうね、目印があれば屹度早く見つけられるわ。(重ねた手を愛おしげに撫でてから離す。拙い手が手巾を巻き付ける。)嗚呼、またこの手巾が私達を繋いでくれるのね。だったら、本当にもう何も怖くはないわ。(離れないように、ぎゅっと。つよく、つよく。繋いで、ほどけないで。最後の最期まで、つないで、て)幸子ちゃん。私、幸せ。幸子ちゃんと出逢えて、幸子ちゃんと、──最期まで、共に居られて。愛しているわ。誰よりも。ずっと。(微笑みが、彼女の最期の光景であればいい。さいごは、ただのわたしで) |
Published:2019/01/01 (Tue) 01:12 [ 44 ] |
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