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弐.春はディミヌエンドに |
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![]() 仁科忍 |
(寮での秘密の作戦会議から早1週間。今か今かと待ちわびた日は、あっという間に訪れた。団子とたい焼きを食べつつ、熱いお茶を啜りながら交わした会話は全てがこの日に関するものではなかったが、実に実りのある時間だった。その証拠に容易く件の写真館に辿り着けたし、早めに着いたおかげで二軒隣にあるミルクホールも、外見だけではあるものの確認出来たからである。さて、時は少し戻り、同日昼過ぎ。部屋から出る前に念入りに鏡をチェックした後、打ち合わせ通りに仁科がとある部屋の扉を数回開いて、暫しの間、手持ち無沙汰の様に自ら選んだ一張羅の袖口の釦を外したり、つけたりしながらその部屋の主が出てくるのを待つ。無事出てきてくれたなら、ぱっとかんばせを明るくして。)御機嫌よう。待った?(女学生らしい挨拶を交わし、さも当然のように彼女の手を引いて歩き始めよう。会話の花を咲かせながら前々から確認しておいた道順を正しく通れば、昼中というのに灯るランプが見え、その二軒先に蔦の生い茂る門が見えた。)ああ、あすこだよね?ほら、あの蔦が生い茂ってる洋館。(少し遠いそこを指差しながらとなりの彼女に確認を。とすれば、という声に合わせてくるりと首を動かしたなら、ランプの灯るそこを見上げる。)此処が例のミルクホールね。うん、とてもいい雰囲気のあるお店。(楽しみだわと頬を緩ませるけれども、本来此処まで来た目的はミルクホールじゃない。後で、ね。と自分を律するように言えば、さあ目的の写真館まで向かおうか。門の前に立てば、重厚感に気圧されそうになる。奥に見えるブーケはクラスメイトが噂していたのとおんなじ。やはり此処が件の場所だと認識すれば、行こうと短く声を掛けて、門を押しあけようとそっと手を掛けた。) |
Published:2018/11/24 (Sat) 23:57 [ 14 ] |
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![]() 松島千歳 |
(楽しい時間が過ぎるのはあっという間だ。待つ時間もそれはまた然り。話題があちらへこちらへと移り変わるは平素通り。けれども作戦会議は入念に。――訪れた日を心待ちにしていた事は、平素より少しだけ早い起床時間と、少しだけ入念になった準備が指し示す。約束よりも早い時間に準備を終えてそわそわと待つ中、聞こえたノックの音に深呼吸を一つの後に扉を開こうとしてツキリ、と目の奥に痛みを憶える。此処数日のコレは多分、目の使いすぎだろうと片付けた。)ご機嫌よう……待ってない、ぴったり。(何時も通りの挨拶の後に紡ぐ言葉は何処かふわふわとした心地の侭。画材と財布のは言った鞄を片手に、手を引かれて歩く事に淡い暖かなこころを憶えながらもすっかりそれが自然とばかりに受け入れて歩む道すがら。声は弾むし心もまた然り。見える光景が全てあまりにも輝いて見えるものだからそれらを瞼の裏にしっかりと焼き付け歩む。そうする内、聞こえた言葉に静かにうなずいた。)ん、そうなるね。……で、ミルクホールもご明答って感じかな。……嗚呼、ふふ、うん。こりゃしのを描く舞台にゃぴったりだ。(ははは、とこぼす笑い声は控えめながらも楽しげに。入り口も帰ったら絵の題材になんて事を考えていたのは単に、これからの写真撮影に向けての気恥ずかしさと浮足立つ気持ちを抑えたかったが故に。そうして向かった写真館もまた、絵の題材にちょうど良さそうなんて考えながらも聞こえた幼馴染の声に勿論、と頷いてせっかくだからと彼女が手を掛けた其の直ぐ側に自らの手を添えて、門を押し開けよう。)……いい雰囲気だね。(そんな言葉をポツリと溢しては、今度は松島が少しだけ前に出て、彼女の手を引くようにしながら中へと向かおう。そうして視界に入ってきた女性に、ゆるゆると頭を下げては。)えと……写真、二人一緒に、お願いしたくて。(そうしてから頭を上げて見えた女性の瞳に思わず胸がざわめく感覚を憶える。準備をするから待っていて、と告げられて、幼馴染と二人になればゆっくり、視線は彼女へ。)……きれいな目の、人だったね。(ぽつり、思わずそんな言葉が溢れた。) |
Published:2018/11/26 (Mon) 16:53 [ 15 ] |
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![]() 仁科忍 |
ふふ、ならよかった。千歳ちゃんを待たせるのは、心が痛むからね。(いつしかそばに居るのが当たり前になって、それから手を繋ぐのが当たり前になった。いつか離れなければならないなんて想像すらできやしない。右手に確かに彼女の温もりを感じながら、予定の道順を辿っていく。ふたりしてこんな風に歩いていけるのはあとどれくらいだろう、とふと頭に浮かんだけれど、折角のお出かけの日。そんなこと口にするのも憚れて、それを吹き飛ばすように頭を軽く左右に振った。)外見がこれだけ立派となると、中も随分お洒落なんだろうね……ああ。写真も物凄い楽しみだけれど、甘味もまたまた楽しみになっちゃうな。それに、千歳ちゃんがどんな絵を描いてくれるのかも。(興味は益々ミルクホールの方へ。かと言って、写真を蔑ろにしているわけでもない。ただ、頭の中で考える比重が、ほんの少し甘味への関心が強まっただけのこと。見たこともないこの店の甘味へ想いを馳せるのはさえ置いて。重厚感のある門は、ギィという音を立てながら女ふたり分の力でも容易く開くことが出来た。拓けた先には先ほどちらと見えた赤い花が、もっと良く見える。彼女の手にひかれるままに、次いで中へと入ろうか。)お願いします。……。(隣に少し遅れて頭を下げ、仁科も声を発するけれど。頭を上げてすぐ見えたその瞳の美しさに、はっと息を呑んだ。女性が去ったのを見て、隣の彼女に小さな声で答えよう。)凄く瞳が綺麗な人だね。まるで、宝石みたいだった。(宝石のように輝かしくて、美しくて、そしてどこか寂しいような。そんな印象を持つ瞳だった。)あれは外国から来た人だって噂されるのもしかたないわ。(クラスメイトがよくよく噂している事は本当なのかも知れない。けれど顔つきは、瞳以外は日本人そのもののように見えたのだけど、と腕を組んで頭を捻ろう。いくら考えたって、女性の出生など分かるはずもなく、思考はこれからの写真について移ろう。)ね、どんな風にして撮る?何かポーズでも取った方がいいのかしら……。僕、こういうのってあまり経験がなくって。 |
Published:2018/11/28 (Wed) 16:38 [ 16 ] |
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![]() 松島千歳 |
(彼女の言葉に少しばかり肩を竦めて見せるものの、表情は何処か柔らかなまま。――歩む道がどこまでも、いつまでも続けばいいなんてぼんやりと思いながらもたどり着いた目的地のひとつを見上げる。)ね、これは楽しみ。……ん、期待、していいよ。しのの絵なら、絶対うまく仕上げる自信あるから。(少しばかり視線をそらしてそんな言葉を零す。写真も楽しみ、けれども絵を描くのだってそうだ。少しばかり軽くなった足取りで向かった写真館。ゆっくりと門を押し開く間、共同作業なんて言葉が脳裏をよぎってはふるり、と首を軽く横へと振った。赤い色を視界の端に、嗚呼、こんな色も綺麗だ、なんて思考は片隅に。絵を描く時にこの色をどう出すかなんて考えてしまうのは性の様なものとして。)…………。(無言で見つめる先の女性のあの瞳もまた、どんな風に描けば綺麗に見えるか、なんて考えながらも幼馴染の方を見やれば、やはりその黒曜の様に美しい瞳にこそ魅入られてしまう気がした。ね、なんて短く溢しながらこくり、とゆったり頷こう。)……綺麗で、でもそれだけじゃない、というか。なんて、言えばいいんだろうね、ああいうの。……絵にしたら映えそう。なんて、言ったら失礼かもだけどね。…………嗚呼、そんな話もあったっけ。よくわかんない、けど。……しの、学級の子の噂話にも詳しいんだね。(拗ねたような語調で、少しばかり唇を尖らせる。子供っぽい、とは分かっていても何故かこの反応しか出来なかった。かと言って何時までも拗ねるわけもない。息を吐いて、吸って、もう一度吐いてから瞳を伏せて――チクリ、また目の奥が痛む気がして眉間を軽く抑えてから再び幼馴染へと視線を向けよう。)ん……正直私も、あんまりない。家族写真とか前に撮ったってくらいで。……んー……やっぱなんかこう……自然体、で?(ぐぐぐ、と首を傾げてそんな言葉を零した。しばし悩ましげに考え込んでいたけれど――ふとした途端、クツリ、と喉を鳴らした。)ふ、ふふ……嗚呼、ごめんごめん、なんか……ふふ、こういうのに悩むのもちょっと面白くってさ。二人で立つか、座るか……片方立って片方座るか、が収まりいいのかな。(無難な答えになってしまったけれど、そんな言葉を溢してはどう? なんて続けてみた。) |
Published:2018/11/29 (Thu) 23:26 [ 17 ] |
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![]() 仁科忍 |
うふふ、そんな自信のある絵を描いてもらって、一番に見られるなんて僕ってば幸せものだなあ。(一番気に入っている絵師に描いてすぐに見せてもらうなど、贅沢の極みでしかない。頬を僅かに紅潮させては、ほんの少しの未来に馳せて目を細めつつ。よろしくね、と彼女に笑いかけようか。見たことのない瞳の輝きに視線を奪われる。まるで宝石のような瞳は、本当に外国に行けば沢山見当たるのかしらん。仁科の想像では、誰でもじゃない、外国でもほんの一握り。例えば何かに選ばれた人にしか、その輝きは手に入らないように思えてならなかった。)ああ、確かに。あの瞳なんか、千歳ちゃんならさぞ綺麗に描くんだろうね。(彼女の描くものなら何でも見てみたい。そう思うからこそ口から勝手に言葉が滑りだす。いつかあの女性を題材にして描いてはくれまいかと願うけれど、心の奥底では何故だかチクリと痛むようで、やや眉間に皺を寄せた。)? だってそりゃそうだよ。聞きたくなくっても勝手にピーチクパーチク甲高い声で言うんだもの、嫌でも詳しくなっちゃう。あっ…………なあに、もしかして妬いてる?(拗ねたような素振りに気が付けば、不思議そうに首を傾げる。教室では彼女と居る時間もあるけれど、ほかの友人と共にする時間もあるわけで。そんな中、こんな女子が好きそうな格好の的が話題に登らない方が可笑しいのだ。さも当然と言わんばかりに説明をした後、その表情の理由に気が付けばにやりと笑みを深めて顔を覗き込み事実確認をすれば、何やら不快な様子を察して「大丈夫?」と心配そうに眉を下げつつ尋ねよう。)そっか、千歳ちゃんも……うーん。自然体、ってのが一番困るのよね。どうしてもカメラの前じゃあ笑顔が上手に作れなくなっちゃうから。(やや上方を向きながら、口角を無理やり指で引き上げる。どうすれば自然体な顔で居られるのだろうか。彼女に絵を描いてもらう時には苦労はしないというのに、こういう時は強張ってしまうのはどうしてだろう。うーん、と低く唸りながら悩んでいれば、突然聞こえる笑い声に驚いたように双眸を丸めて頬から指を離して彼女の方をふり向こう。)えっ、何なに?僕なにか可笑しなことでも言った?もー、突然笑い出すから吃驚するじゃないか。……そうだな、いつも千歳ちゃんを見下ろしてばかりだから、たまには見下ろされたい。てことで、千歳ちゃんが立って、僕が座るってのはどう?(提案された格好を想像してみては、彼女が座っているのとふたりが立っているのはいつもと同じで詰まらないと判断し、こちらからもそんな提案を。すればタイミングよく女性が出てきて、写真を撮る準備が出来たとのこと。再び彼女の手を取って、行こう、と声をかければカメラの前まで移動しようか。) |
Published:2018/12/01 (Sat) 21:28 [ 18 ] |
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![]() 松島千歳 |
(彼女の言葉がやはりくすぐったくて、少しばかり視線をそらして、それでも『ありがと』と小さな声で零す。よろしくの言葉にはただ静かに頷いた。――何時かに祖父に連れて行ってもらって見た絵画を思い出すようで、けれども絵の中には見つけられなかった瞳に思いを馳せる。あの瞳が見てきた物語を、少女は知らない。呼気を漏らして、友を見た。)ん……どうかな。結構難しそう、こう……ただ宝石を見たみたいに描いても、あの色は出ない気がする。……あと、私はしのの絵描いて、しのの目をきれいに描く方がきっと、楽しい。(ただ素直な言葉であったから、まっすぐに、すとん、と言葉は落ちた。そうしてから吸い込まれそうな黒い色をジィ、と見やる。眉間に皺が寄ったようにも伺えれば何も問わずともゆるりと首を傾げてみせる。)…………あ、ああ、そう、いう? …………そ、そういうん、じゃ……あー……そういうの、なのかな。……嗚呼、ほんと、ごめん、子供っぽいな。(写真を撮る前だというのにグシャリと頭を掻いてしまった。慌てて手ぐしで整えて、視線をさまよわせる。――覗き込んでくる瞳をまっすぐ見たかったけれど、キツリと突き刺す様な、けれども滲む様な淡い痛みはそれを許してくれない。『平気、なんでもない』という言葉は平素通り何処か平坦な調子で。)……笑えって言われて笑える方が珍しい気がする。あの人がいいよって言ってくれたら、こう……何時も通り喋りながら撮影してもらうのもありなのかな?(彼女を真似して自身の口角も無理やりちょいっと持ち上げて見せるけれどどうにも不格好な笑みになっている気しかしない。実際そうなっているはずだ。――考える時間だって楽しい。目を丸くする彼女を見てはやはり小さくふふ、と笑って。)いや、ふふ……ふふ……本当、ごめんごめん。……ん、じゃあそうする? せっかくだし。(こくん、と頷いて笑みを深める。溢れる笑声は今度は楽しみに向けてのもの――そうして、招かれるままにカメラの前に。女性へと写真のイメージを伝えて、椅子を一つ借りたならば幼馴染が腰掛ける前にそっと、彼女へと手を差し出した。)……えすこーと? っていうの? ……させてよ、たまにはさ。(に、と笑ってそんな言葉を、ぽつり。彼女が頷いてくれれば椅子に腰掛けるまでのエスコートの真似ごとをしてみるつもりだ。) |
Published:2018/12/03 (Mon) 22:39 [ 19 ] |
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![]() 仁科忍 |
(意識しなければ聞き逃してしまいそうな言葉を拾っては、「こちらこそありがと」と肩を竦めて伝えよう。)そっか、そういうものかー……絵の世界ってのは、凡人にはわからないことだらけですなぁ。あはは、そういうもの?ならもっとよぅく見て描いて貰わなきゃ。(見た物をそのままキャンパスに乗せればよいと言うわけでもないらしい。色が出ない、とは、きちんと描いている人にしか分からないのだろう。彼女の言うことは、絵を描かない仁科には到底理解出来そうもない。よく見てとは言ったものの、改めてじいっと見られれば気恥ずかしくなるもので。眉根を寄せていたのを戻して頬を赤く染めながら、「今は見なくていいけどね」と消え入りそうな声で呟きながら眼をそらそうか。)そそ。知りたい訳でもないのに聞こえて来ちゃうの。別に、謝らないで。千歳ちゃんがそう思ってくれていて、僕はちょっとだけ嬉しかったんだから。(友達と呼ばれる関係性であるのに、こんな感情を持ち合わせるのはおかしいだろうか。自身の気持ちに微かな疑問を持ちつつ、笑いながら自身も彼女の髪を直すのを手伝おうか。――平坦な答えは、様子が変だと分かっているのにそれ以上聞いてはいけないような印象を受けて、そう、としか返せなくて。胸あたりにモヤモヤしたものが広がったようだった。)やっぱり千歳ちゃんも難しいって思うよね?ふふっ、よかった、僕だけじゃなくて。ああ、自然体ならいい写真になりそうだものね。折角だから、それもお姉さんに提案してみましょうか。(自分だけじゃないと安心したのも束の間。同じような格好をする彼女を見て、思わず笑みが溢れた。名案にぱっと手を離してぽんと手を打った。確かに、それならば自然な笑みが撮れるかも知れない。畏まって直立不動で撮るのも写真らしくていいかもしれないが、せっかくの機会だ。何枚でも撮って貰おう。)もー、千歳ちゃんったら。うん、ありがと。(決まったなら行動は早い。さっさとカメラの前へ言って、写真を撮ってもらおうとするのだけど。思わぬタイミングで差し出された手に目をぱちくりさせては、その意味を探るように首を傾ける。)ああ! ありがとう、嬉しい。(エスコートなんて、許嫁の彼にさえしてもらったことなんてない。その初めてが彼女なら、嬉しさは何倍にも膨れ上がるというもの。手を取り、導かれるままに椅子に腰をかければ仁科の準備は万端。緊張故か少し咳払いをして、カメラへと向けば背後の彼女の準備も整ったのか、女性が撮りますよと声をかける。――さん、に、いち。カシャリと音を立てて切られたシャッターには、さて、どんなふたりが写るだろう。) |
Published:2018/12/05 (Wed) 01:08 [ 20 ] |
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![]() 松島千歳 |
……そんなこと言ったら、私だってわかんないことの方が多いよ。――ん、そういうもの。じゃあお言葉に甘えてしっかり見させてもらいますんで、宜しく。(絵の勉強を専門にしてきたわけでもない。なんて苦笑して肩を竦める。それでも、親友を、幼馴染を……彼女を、絵に描くならばとっておきにしたかった。可愛らしく頬を染める彼女を見てクツクツと笑いながら『ごめんごめん』なんて軽い謝罪を一つ。彼女の前出もなければきっと、こんな風に笑ったりもできなかっただろう。――嫉妬、だなんてやましい、はしたない、そんな風に揶揄されるであろう感情を抱いてしまうのだって、きっと。)…………あり、がと。(どうにか絞り出した短い言葉はぼそぼそと、口籠る様に。嬉しい、といってもらえて嬉しいと言うことだとか、自分でも少しばかりおかしいくらい彼女のことが気になってしまう事実だとか。髪を直す事を手伝ってくれるのが嬉しいのだとか、様々な感情がぐるぐると渦巻いていく。ゆっくりと息を吸って、吐いて。どうにか渦巻いたものを吐き出そうとするけれど、代わりに産まれた痛みに首を傾げたくなるのを抑えて。曖昧に笑うばかりだった。)……じゃあ、そうしよっか。あの人なら多分、いい感じに手伝ってくれる……というか撮ってくれるよ、きっと。(こうしてなんでもない事にああだこうだと悩んで、一緒に考えて、選び取って。かけがえのない時間を、けれども失わない今はただの幸せと信じて。試行錯誤を重ねる時間だってきっと、彼女と一緒ならば楽しいと確信している。そうした末にはきっと、最高の写真が撮れると信じていた。なにせこうして会話している間に浮かぶ笑みはごく自然なものになってくれるから。軽い謝罪を紡ぐ声すら弾んで、思いつきの行動への反応についつい表情を綻ばせる。)たまには、まかせて。(自信たっぷりなんて言うものとは程遠い、けれど楽しげな声でそう告げて共に行こう。見よう見まねだから不格好なエスコートになってしまったかもしれないけれど、それでも――まばゆい光に包まれて撮った一枚はきっと何よりの思い出に。そうしてその後に重ねた時間もまた、かけがえのない宝物。失うわけがないと、信じ切っていた。) |
Published:2018/12/05 (Wed) 04:04 [ 21 ] |
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