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壱.いとけなくとも戀の花 |
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![]() 松島千歳 |
(授業と授業の合間。少女たちの喋り声で満ちる教室内でも、松島千歳は無口であった。少女たちの輪に入っていくこともなく腰掛けたままじぃ、と外を見ては空を見て、校庭を見てを繰り返すばかりであった。勿論、気にかけてくれる様な学友に声をかけられれば最低限を返しはしたがその程度。――或いは、幼馴染が声をかけてくれたならば少しばかり、その声は弾んでいただろうけれども、何かしら大きな変化はありはしなかっただろう。そうこうして、時間は過ぎ去り、放課後。ご機嫌ようの挨拶とともにぱらぱらと寮へと帰っていく学友たちに上辺ばかりのご機嫌ようを告げながら、真っ直ぐに向かうのは幼馴染である少女の席。もしも彼女が他の学友と話しているようならばほんの一拍ほど間を置いてから『ちょっと、忍借りる』とだけ告げて。そうではないならばそのまま、彼女の手をとって、彼女が荷物をきちんと持った事を確認してからその手を引いて暫し無言で、廊下を進むつもり。)…………ちょっとだけ、用事。……来週、暇?(拒否さえされなければ廊下を少し進んで、周囲の人がまばらになった頃に。拒否か、或いは静止されれば周囲から人が捌けてからぽつり。そんな言葉を投げかけよう。ただ真っ直ぐに、吸い込まれてしまいそうな程に黒く、美しい彼女の瞳をじぃ、と見つめて。小首を傾げる事もなく、ひどく淡々とそう問うた。理由は、まだ語らぬまま。……なにせ松島千歳は、彼女を誘ってみる、という行動ばかりで手一杯、用件を告げるという事項など、すっかり頭から抜け落ちていた。) |
Published:2018/11/15 (Thu) 01:40 [ 3 ] |
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![]() 仁科忍 |
(学園や過保護な親という籠に押し込められた色とりどりの小鳥たちは、今日も今日とてようく囀る。その囀りがより喧しくなるのは、決まって戀の話題だった。やれあそこのカフェーの店員が素敵だの、やれあの子の結婚相手はイマイチだの。そんなことばっかりだったから、いつでも仁科は聞き役だった。時折息継ぎというように、話の合間を縫っては幼馴染である松島千歳の許へとやってきて、二、三会話を楽しんでからまた小鳥たちの囀る中へと戻っていく。それが仁科のいつもの授業と授業の合間の時間の過ごし方だ。さて、時間は過ぎて放課後。このまま寮へ戻るのもよし、何処かへ寄り道して帰るのもまたよいだろう。御機嫌ようと去っていく少女たちの背中を見ながら、自身はどうしようかとひとりで考えあぐねているうち、目の前に現れた幼馴染の姿。不思議そうに目をぱちぱちと瞬く間に手を引かれていく。)え、ちょっと、……千歳ちゃん?(どうしたのと尋ねても、あのすこうし灰色がかった瞳はこちらを一瞥もくれない。どうしたのだろうと疑問を抱えたまま、頸を少し下げた先にある揺れる長い黒髪を見つめる。自分にはないそれに名残惜しさを感じつつ、触ってみたい衝動に駆られるけれど、生憎片手は荷物、片手は彼女で塞がっているから手は伸ばせなかった。漸く足が止まった、人の疎らな廊下。こんなところで何を告げられるのだろうと色々な意味で心臓が騒がしく鼓動する。未だ手が握られているならば、緊張故に掌が汗ばんでいることなど容易に感じ取られてしまうだろう。それでもきっと、仁科の方から振りほどくことはないけれど。)………………へ?それ、だけ?(なんだ、と胸を撫で下ろす。不安や変な期待を持ってしまった自分が情けなくて、思わずくすくす笑ってしまった。一頻り笑ったなら、こちらも彼女の瞳をじぃっと見返しながら返答しようか。)うん、大丈夫。暇だよ。それで、何処かへ行きたいの?それとも、僕の行きたいところへ付き合ってくれるとか?(質問の真意を探るべく、こちらもまた質問してみようか。) |
Published:2018/11/15 (Thu) 17:02 [ 4 ] |
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![]() 松島千歳 |
(つるり、と手が滑ってしまいそうになるものだから反射的に、彼女の手を握る力を強めていた。強制したいわけではない、けれども離れたくない。どうしたっていっぱいいっぱいになってしまって、彼女が問いかける声も頭に入ってきていなかった。漸く心を落ち着けて、短く呼吸を数度の後に問いかけた言葉への返答に、少しばかり罰が悪そうに視線はさまよう。)ん……そんだけ。……あ、そう、か。用件、言ってなかった……無理強い、とかしない、し。しのが……よければ、その。……一緒に、でかけたくて。(笑声に目を丸くしたのはほんの一瞬だ。ついで帰ってきた質問には、と目を見開いて、これまた罰が悪そうに頬を掻きながら漸く用件を口にする。やや、逡巡の間を置いてから呼吸をひとつ。)なんか、学級の子がたまに噂してるさ、学校出てちょっと行った所の……ミルクホールの傍の、瀬尾写真館に行ってみたくて。よかったら、しのに付き合ってほしいな、って。(運命の相手と一緒に写真を、という噂云々は抜きにして、写真というものにそも興味があったのがひとつ。ふ、と顔を伏せて再び考え込む間はほんの、一瞬。ゆるゆると顔を上げて、ほんの少しだけ口角を持ち上げよう。)……思い出、ほしいんだ。しのとの。(明日にはこの学園とお別れ――なんて事があるわけではない。一応は卒業までこの学園に通える予定であるのだから、後一年と少しの猶予はあるとわかっている、それでもなんて思うのは松島のちょっとした我儘。それでもなんだか気恥ずかしいものだから、頬を掻いて、視線をぐるりと一度上方へ。)流行りとかはどうでもいいけどさ。しのとの写真があればもしも辛い時も頑張ろうって思えるお守りになってくれる、かなー……なんて、思って。……繰り返すけど、あの、強制はしない。無理強いはしたくない。(予防線のような言葉をついつい付け加えながらも視線を真っ直ぐ合わせようと彼女を見る。)……あと、うん。写真館に行った後にさ、しのが行きたい所あるなら一緒に行けたら、嬉しい。(ぽつり、そう付け加える声は何処か楽しげに。) |
Published:2018/11/15 (Thu) 22:35 [ 5 ] |
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![]() 仁科忍 |
(彼女と繋がっている部分だけがやたらと熱い。暑過ぎて溶け出してしまいそうだったけれど、ちょっとでも離れたくはなかった。自分自身が情けなくて笑っていたのも落ち着いたというのに、今度は彼女の様子が可笑しくてまた笑いが始まってしまう。)ふ、ふふ……あはは、は。それくらいのお誘いなら、わざわざこんなところまで連れ出さなくったって良かったのに。(賑やかな教室では、声を聞き逃すとでも思われたのだろうか。そう思うと少し癪だ。今まで一言でもこの声を聞き逃したことなんかないというのに。はあ、とため息を吐いて、笑いの終止符を打とう。告げられた写真館の存在は、勿論仁科の耳にも届いている。喧しい小鳥たちが最近熱心に噂していたあの場所を、まさか彼女の口から聞く日が来るとは思わなかったけれど。)ああ、それなら僕も聞いたことがあるよ。本当、あんな噂どこから出来たんだろうね?(如何にも乙女が考えつきそうな噂の出所は、きっと探したところで見つかりっこないだろう。一瞬伏せて見えなくなった顔に首を傾げつつ、再び見えた笑みに、次いで出た言葉に、仁科もぱっと笑みを浮かべてその続きを聞こう。)お守り、か。もう、そんなに遠慮なんてしなくたっていいってば。(いちいち気を遣ってくれる優しさはいつまで経っても慣れない。むず痒そうに笑めば、鞄を持つ手を顔の高さに上げて左右に振り、僕たちそんな遠慮する関係じゃないでしょう?と困ったように眉を下げた。そんな折、も一度先の言葉を頭の中で噛み締めれば、困り顔も自然と笑みが滲んでくる。)……うん、いいね。お互いにふたりで撮った写真を持つのって素敵ね。(辛い時って、例えばお嫁に行った時とか?と言いかけたけれど、言葉にするのがなんだか怖くて飲み込んだ。)え、そのあと付き合ってくれるの?……そうだな、何か甘いもの食べたいから、一緒に付き合ってくれる?勿論、無理にとは言わないけど。(さっきの仕返しとばかりに、最後に付け足して。) |
Published:2018/11/16 (Fri) 23:52 [ 6 ] |
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![]() 松島千歳 |
……他人に、聞かれるの恥ずかしかった、だけ。(結局はうつむいてボソボソとそう零す。どうにも彼女の事となると無意味に妙な不安に襲われてしまう。ある意味では好意の裏返し。大きく息を吸って、吐いてを二度ほど繰り返してから、短い呼吸で間をひとつ。)ね、本当に。写真館に皆行くから、なんというか……写真館の人に迷惑とかかかりそう。……まあ、何ていうか。行こうとしてる私が言うのもあれだけどさ。(口が上手い方ではないという自覚は或るが、それにしたってうまく喋れていない気がして視線は彷徨いかけるばかり。呼吸で間を再び置いて、ぐるぐるとする頭で言葉を紡いだその後に見えた彼女の笑みにぐぐぐ、と松島の口角は更に持ち上がる。彼女の前だけで見せる笑顔だった。)ふ、ふふ、ごめん。何ていうか……ありえないって分かっててもしのに、嫌われたりちょっとでも嫌だなって思いさせたくなくって、さ。後なんていうか……こういう事に誘うのなんか、気恥ずかしかった、から。(へにゃり、と眉を下げながらも確かな笑みを彼女へと向ける。ゆらゆらと揺れる鞄をなんとなく見やればやや間を置いてからそうだったね、と言わんばかりにちょっぴり口角を持ち上げた。)ん、しのの事忘れたりするわけないけどさ……形として残ってれば、ふとした時にちゃんとこんな幸せな日々もあったんだって思い出しやすそうだし。(互いに、一瞬でも考えたことは同じなのだろうふと思いながらも口に出さないのもまた同じ。期限付きの幸せだなんて考えたくもなかった。次ぐ言葉にはに、と笑って深く頷きかけて――ちょっぴり、面食らった様な顔をひとつ。後、気まずそうに視線をそらして頬を掻く。)……勿論、断るわきゃない。……ぷ、ふふ、嗚呼、なんか……やぁ、おかしい。(ついク、クと喉を鳴らしてはゆるゆると肩を竦める。)甘い物ったらシベリアとか食べたいなぁ。写真館の二軒隣のミルクホールでも行ってみる? あるいはしののおすすめの場所があるなら是非そこに。(カラカラと声を上げて笑うことこそないけれど弾む声はありありと週末を楽しみに思うことを告げているだろう。) |
Published:2018/11/17 (Sat) 17:25 [ 7 ] |
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![]() 仁科忍 |
なあに、今更。千歳ちゃんってば恥ずかしがり屋さんだ。(友人を誘うのに、どうして遠慮がちになることがあるのだろう。自分とは違う考えを持つこの人に、淡い期待を抱いてしまいそうになる。けれどあり得ないと心の中で自嘲し、彼女のその遠慮がちな気質を茶化すようにして笑った。)うーん、まあでも普通は家族の記念とか、大事なお祝い事の時しか利用しないでしょう?でも僕たち学生が大勢行くことによって、多少なり売り上げに貢献しているのだからいいんじゃないかしら……なんて、こんな事他の子に聞かれちゃロマンチックのカケラもないって怒られちゃうかもしれないけどね。(学生が賑わう写真館。それはきっと繁盛していることだろう。金を払いさえすれば良いというのは乱暴な考え方かもしれないが、そう思わなければ気がひけるというもの。彷徨う視線に微かな心配が過ぎるけれど、深くなる笑みに安堵して、繋いでいた手を解き、その手を彼女の頭上へと。)も〜、気恥ずかしいのは仕方がないとしても、嫌われたらなんて考えなくていいの。(いいね?と念を押しながら、先程頭上に乗せた手をぽんぽんと軽いては、にっと笑みを浮かべた。)……そうだね。それに、今まで毎日見ていた千歳ちゃんの顔が、卒業したら見られなくなるのも寂しいものね。ね、……もし僕たちがそれぞれお嫁に行っても、会ってくれる?(あと少しの猶予はあれど、いずれかはそれぞれ他の人のものとなってしまう。約束を持ちかけたのは、ふたりが散り散りになった後のこと。未来のこと過ぎてまだ嫁に行く実感も湧かないというのに、ただただ彼女が己を忘れないという言葉が欲しくて、縋るように尋ねた。)ふ、ふふ……ごめんなさい、つい。(鞄の持つ手で口元を隠しながら、大声を上げて笑いそうになるのを堪えて肩を揺らした。)シベリアかぁ、それもいいなあ。牛乳と一緒に食べると美味しいんだよねえ。ああ、でもあんみつもいいな、うーん……って、此処で悩んでいても仕方ないよね。ミルクホール行ってから悩みましょう。(頭の中に浮かぶ甘味はどれも魅力的なもの。思い浮かべるだけで涎がたらりとしそうである。しかしそれも机上の空論。実際に涎が垂れていないかこっそり手で拭い確認しつつ、写真館の二軒隣を思い浮かべる。)僕、そのミルクホールまだ入ったことがないの。千歳ちゃんは?行ったことある? |
Published:2018/11/19 (Mon) 16:42 [ 8 ] |
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![]() 松島千歳 |
あんま、言わないで……自分でもなんか意味わかんないしこっ恥ずかしい。(片手で口元を覆ってはやはり少しばかり視線を逸らす。奇妙な感情である自覚はあるからこそ羞恥心で顔が熱い。見ないでくれとは口にせずとも視線は逸らしたままだった。)……ん、でもまあ……一応それだしいっか、て事に……しとくのがいいのかもね。最低限の礼儀はまあ、弁えとけば許される……と、思いたい。浪漫、はまあ……そういうの好きな子達のお心に任せちゃおっか、って事で。(へらり、とした笑みを浮かべてそんな言葉を一つ。ロマンチストな少女が聞けば何よと怒り出しそうだけれど彼女と己と二人の間なら、むしろ此のくらいが丁度いいなんて言わんばかりに軽く肩をすくめて。ぼんやりと彼女の手を視線で追いかけて、その手が頭上にのせられれば目を丸くしてまばたきを一つ。)ん。……わかった。(自身より少しばかり上にある瞳をじ、と見やる。気恥ずかしさでまた顔が熱いが今度は視線を逸らす事はなかった。短い言葉はけれども平素より何処か明るく、穏やかに。)ね、本当に。……実家は近いけど、追々はどうなるかわかんないし。……当たり前、しのが呼んでくれるなら何時でも、何処にでも行くよ。遠いんなら、汽車に乗ってでも行く。……しのも、また私の絵見に来てよ。手紙もさ、いっぱい出す、から。……だから、約束。(言葉にしてしまうとなんだかうら寂しさをこんな時から感じてしまう。それを振り払うように下手くそな笑みを浮かべて小指を差し出してみよう。子供の戯れであるけれど、少女の時分なれば許されると信じて。)…………ま、まあ、えと……お互い様って、事で。うん、なんかごめ……ううん、有難う。――ん、そうだねぇ。案外予想もしていなかった良いメニューが在るかもしれないし。在ったらそれにすりゃいいだけだし。しのと一緒なら悩むのも、楽しい、きっと。(子供のように瞳を輝かせて、その癖なんでもない風な口ぶりでそんな言葉を紡ぐ。)……実はまだない。人伝にちょっと噂聞いただけ。だから、その……初めて、おそろいだね。……なんて。(そう呟くように溢しては気恥ずかしそうにはにかんで、約束の日に思いを馳せる。)……折角だし、美味しそうに甘い物食べるしのでもスケッチしようかな。いい?(ささやかな思い出を切り取って、絵に残せるならば其れもいいかも、なんて思いつきからそう尋ねる。表情は淡く期待に満ちて。) |
Published:2018/11/19 (Mon) 19:15 [ 9 ] |
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![]() 仁科忍 |
ご、ごめん。(彼女の照れたような仕草が仁科の心をむずむずさせて、思わず仁科も視線を逸らして口をもごもごさせながら謝罪の言葉を述べよう。)そそ、あんまりピーチクパーチク騒がなければ迷惑かからない、と思おう。まあ僕たちには浪漫って文字はちょっと縁遠いものねぇ。(うんうん、と同意を表すように深く頷く。そういうものは好きな人に任せておけばよいのだ。無理やり浪漫だのを理解することもあるまいて。頭上に置いた手で髪の質を確かめるように何度もやわく撫でる。明朗な返事が帰ってきたなら、髪型を乱さぬ程度に更にその手を忙しく動かそう。)お相手様の都合によって変わってくるものね。……僕たちには、どうしようもないことだよ。ん、それはもちろん!なんなら船に乗っても千歳ちゃんに会いに行くよ。それで、いっぱいまた絵を見せて。約束。絶対、ね。(彼女が願ってくれるなら、例え火の中水の中どこまででも。胸につくんと突き刺すような痛みが走るけれど、気にしないフリをして差し出された小指に自らのそれを絡めよう。幼少期から何度こうして約束をしただろうか。)そうだね、行ったことがないとこだもの、今決める必要なんてないか。ふたりでいーっぱい悩もうね。(メニューの前でふたりしてうんうん悩むのも今しか出来ないこと。それを楽しむのもまた良いだろうと頷いた。)うふ、うふふふ、お揃いってむず痒いけど嬉しいわ。(あまり馴染みのない響きに、今度は此方が恥ずかしくなってしまって、肩を竦めてくすくす笑おうか。)僕の食べているところ?うーん、食べてるところ見られるのは恥ずかしいんだけど……でもまあ、千歳ちゃんの頼みなら仕方ない。その絵、ちゃんと見せてくれるならいいよ。(見られることの恥ずかしさよりも、その絵が見たいという気持ちが勝り、かつあまりに期待に満ちた瞳がこちらを見つめるものだから。暫し悩む表情を浮かべるも、条件付きで了承しようか。) |
Published:2018/11/20 (Tue) 22:46 [ 10 ] |
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![]() 松島千歳 |
(彼女の言葉にチラリ、と視線を向ける。極小さな声で『気にしないで』と紡ぐ言葉は早口に。)花洛学園の生徒は出入り禁止……とか言われない様にすれば平気なはず。……そうそう、そういうのは好きな子に任せてさ、私達は、私としのだから楽しめる方に楽しめばいいのさ。(そう言うが早いかふん、と小さく鼻を鳴らした。互いに見えるものの方向性が重なったようでなんだか嬉しくて。同時、頭を撫でるようなその手付きも嬉しくて。溢れる笑みはほんの小さな声。)……会う方法はいくらでも、あるもんね。はは、船で来てくれたらその時はまたちゃんと描かなきゃだ。二枚くらいささっと描いてまたお互いの思い出にってね。……うん、絶対だ。(指切りげんまん、なんて子供の戯れになってしまうのかもしれないけれど、それでも。小指が絡めば上下に数度。言葉はなくとも心の中で戯れの言葉を謎しながら。幼い日からいくつか重ねた約束が脳裏をよぎる度懐かしく、けれども終わりを憶えてはうら寂しさが胸を打つ。それでも努めて、表情は和やかなまま。)しのと一緒なら、悩む時間も絶対楽しい。絶対だ。(首肯が見えればつい声は弾む。昔なじみで有るからこそ感じられる近しい距離の楽しみを胸に。)…………わかる、自分で言っといて結構、こっ恥ずかしかった。……嗚呼、これもお揃い?(そんな言葉を紡ぎながら双眸を細めて楽しげに喉を鳴らした。幼馴染相手だからこそ楽しめる距離感、彼女相手だからこそ感じる気恥ずかしさ、全てがなんだか特別で、ちょっぴり楽しかったものだから。)勿論、しのが見てくれるって言うなら。ふふ、嬉しいな。艦船の絵も好きだけど……しのの絵描くのも、好き。人物画はあんまりなれてないけどね、しのは描くの、楽しいから。(了承の言葉と共に添えられた条件に二つ返事で頷いた。週末に持ち寄る荷物に増やす色をぼんやりと考えながら楽しげに、半歩前へと。)……そろそろ帰る? なんていうかこう……出掛けんのさ、しのと私だけの秘密が、いい、から……えと……作戦会議は、部屋か帰り道で続けてー……なんて。(どう? とつけ添え首を傾げる。内緒話がしたいとはらしくもないと思いつつ、たまには乙女らしい楽しみも感じてみたい、なんて。) |
Published:2018/11/21 (Wed) 02:24 [ 11 ] |
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![]() 仁科忍 |
もしそうなったら、全花洛学園の敵になっちゃうのが目に見えてるなぁ……。女の子からの謂れ無い誹謗中傷……そして始まるいじめ…………うん、ここは絶対に規則正しく行かなきゃね。(あり得ないとも言い切れない未来を真面目に思案したと思えば、口調は次第に茶化したものへ。とは行ってもその未来が本当になってしまっては困るから、写真館では大人しくすることだろう。)会うのが難しくったって、電話でならおはなしも出来るから、大丈夫。じゃ、会う日にお宝が増えていくのね。それってとっても楽しそう。(移動手段や通信なんかは大昔のままじゃない。今はもう大正という時代で、遥かに便利になっている。大丈夫、と紡ぐのは自分自身に向けてだったかもしれない。そうやって誤魔化してやらなければ、いつでも彼女との別れを思って涙してしまいそうだったから。会った際に渡してくれるという絵はきっと何よりの励みになるだろう。頭の中ではそんなこと思いつつ、小さい声でかの歌を紡ごう。)そりゃあ悩むのが楽しすぎて、日が暮れないよう気をつけなきゃだ。(彼女と何をするのだって楽しい。今こうして予定を立てるだけでも、こんなにも楽しいのだ。少し遠い未来に思いを馳せつつ、声を漏らして笑おうか。)色んなお揃いが出来てくるね。(彼女とおんなじ気持ち。そう思えばき恥ずかしさだって尊いものとなろう。)わあい、艦船と同じくらい好きって、千歳ちゃんにとってはかなり好きって事よね?そうやって言ってくれるの、とっても嬉しい。僕もね、千歳ちゃんが描いた絵、とっても好きだよ。(彼女が目を輝かせるというそれと同列ということは。言葉をそのまま反芻すればするほど、自惚れてしまいそうになる。喜色満面の笑みを零し、半歩動くのを見て漸く頭の上から手を引っ込めた。)もちろん、いいって言うに決まってる。あ、でも帰る前にさ、今甘味の話してたら甘いもの食べたくなっちゃったから、途中でたい焼きでも買わない?(今にも腹の虫が騒ぎそうな腹を抑えながらそんな提案を。それを寮へ持って帰って、熱いお茶と共に食べながらの内緒話。乙女らしいかはさておき。) |
Published:2018/11/22 (Thu) 17:29 [ 12 ] |
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![]() 松島千歳 |
(彼女の言葉に肩を竦めては『其れは本気で怖すぎる』なんて冗談めかしてこぼす。其の数秒後にはどうにもおかしさに耐えられない、と言わんばかりに肩を揺らしていた。彼女と己ならばそんな事態には至らせまい、なんて信頼感を胸中に。)嗚呼、そっか……そう思うと便利に、なったねぇ。や、私達が産まれるよりずぅっと前じゃぁそんな風に気軽に連絡とったりあったりもできなかったかもだしさ。……ん、増やすよ、絶対。会うたびに、いんにゃ、あえなくてもさ、いろいろ送るよ。絵は多分手紙でも小さいんなら送れるしね。だからさ……ん、大丈夫。(最後の其れは宛ら自分自身に言い聞かせるかの様に。結局は思う事は同じで、けれども明確な終わりを意識してしまうのは怖かった。だから意図して、何時も通りであろうとしていた。笑みも不器用ながら、彼女だけに見せる何時も通りだ。)おっと、そうなっちゃ困るね。……まあ、しのとならそう言うんでも楽しそうだけどさ。――ご明察、その通りだし当たり前。……しのが居てくれたからさ、私はこうやって此処でもやって行けてるんだって本気で思ってるよ。ははは、有難う。女のくせに無骨なもんばっか描いてってたまーに言われるからね、しのにそう言ってもらえるだけで凄く嬉しい。(ふ、と呼気を漏らしては人差し指をぴん、と立てて顔の横でくるりと回した。声は弾み、どこまでも楽しげに。笑顔ばかりが満ち満ちる此の瞬間が永遠ならばいい、なんて夢物語は胸にしまって。彼女の提案を聞けばいいね、とばかりに深く頷いた。)ん、是非に。折角だし二個ずつくらい買ってっちゃう? それともたい焼きとお団子一緒に買って帰るのもありかな。……店の人、ちょっくらオマケしてくれたりしないかなぁ。……なぁんて。(ク、ク、と喉を鳴らしては新しい楽しみに胸を躍らせる。何処かごく普通の、穏やかな、ささやかな楽しみは彼女と一緒だからこそ。――帰り道、そうしてちょっぴりの買い物の時間、松島の表情がいつも以上に明るく、キラキラ輝いた瞳をしていたのはきっと誰が見ても明らかだったはず。) |
Published:2018/11/23 (Fri) 19:10 [ 13 ] |
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