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終.慕情の色彩 |
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![]() 万丈艶子 |
(結べば開く、解けば散る。それだけを言えば単純な話であるけれど、人の想いが容易く語れるものでないのは分かっている。分かっている、つもりだ。けれど何が一番正しいのか、或いは望ましいのか。決めるのがとても難しいから、この夜が来ても悩み続けて、それでも夜が明ける前にもう見慣れた扉を優しく叩いた。花雨さん。その名を呼ばう自分の声が甘いのは分かっていて、応える声に似た響きがあるように思ったのはいつだったか。ひとつきの間に、色々なことがありすぎて、今もどこか夢見心地でいる。良い意味でも、悪い意味でも。未だ街も人も眠っている刻限、そっと手を引いて。窮屈な籠から一時でも抜け出してしまいましょう。たとえ円舞曲を踊れなくとも、手を重ねて歩む時間がどれほど嬉しいかを、この心は知っている。)花雨さん、秋も終わりが見えてきて、空気の匂いも冬の気配がするんです。夜に聞こえていた虫の声も随分とか細くなってしまいました。(まだ暗い朝方、そう大きくない声もよく聞こえるであろうほど静かな街を、ゆっくりと歩く。九重葛が飾られていた、写真館の方へと。何処へ向かうとは告げないまま、お散歩に行きましょう、とだけお誘いしたけれども。もしかすると、あの日並んで歩いた道のりは、目ではないところで感じ取っているのかもしれない。)……わたくし、やっぱり花雨さんが学園を出られるのは、とても寂しいです。(たとえ理由が、病など関係なく、結婚の為であったとしても。惜しむ心はあっただろう。そして今、理由が異なるからこそ、常ならば抱かなかった気持ちが内側で重なって、刻まれて、自分でも形が分からなくなってしまった。どうしたいの、と問われれば答えに詰まってしまう。白い手をこうして重ねるのも、きっと今日が最後になる。何を選んだって、きっと。どうしてもっと自由で在れないのでしょう。花のように手足も目も口もなく、ただ黙して在ることが出来たら良かったのかもしれない。白い人形を作って、明日の天気ではなくて、たったひとりの未来を晴れやかに出来たらいいのに。) |
Published:2018/12/17 (Mon) 20:44 [ 30 ] |
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![]() 宝生花雨 |
(ひとのこころは複雑で、結んで解いてだけでは語れない曖昧なもの。けれど結果はいつだって、結ばれるか解けるしかないもの。花は散るために咲くものだから惜しんではいけない。乙女心も同じだと、そう、御家の淑女となる筈の身では思っていた。──夜明け前、扉が叩かれる音で身を起こせば、肩に一枚を羽織ってから迷いなくどうぞと告げた。優しい音、甘い呼び声、彼女がはこぶものをこの耳はしっかりと聞き分けるようになっていた。異彩の瞳をまろばせてレエス模様を揺らせば「艶子さん」と待ちわびたかのような甘い声音が夢見心地に彼女へと。明日は学園から生家へ帰る日だ。その後は別宅で暮らすことになるという。愛されている自覚はあったけれど、御家の外聞あらば本宅には置いておけないのだろう。宝生の子は自分だけではないのだ、愛だけでは世間体までを繕えない。理解しているから異を唱えることもなく、少ない荷物を纏めてあった。御家の淑女として役にはたたずとも、宝生に生をうけ育った娘として。けれど今は箱庭の中、まだただひとりの乙女でいることを許される。ならば手を引かれるまま、籠の中からすこうしだけ抜け出しましょう。お洒落もなく、円舞曲を踊るような軽やかな足取りにも及ばないけれど、重ねられた手のひらがどれほどあたたかく尊いものか、そうすることがどれほどにも愛おしいか、瞳に光を映さずともこのこころは知っているから。)……そうですね。触れてみると、よくわかります。艶子さんの手が、こんなにもあたたかいことも。(未だ街も人も眠っている刻限が故か、しんと冷たい朝の空気が身に染みる。静かだからこそ木々や風のさわめき、地を踏みしめる足音もよく聴こえ、香りを運ぶ。そのどれもが硝子越しには知りえないことで、そこに彼女の存在があれば世界にふたりだけしかいないような錯覚すら覚えた。行き先は聞いていないけれど、きっとそうではないかしらと思う場所はある。九重葛の写真館、ふたりでおもいでを切り取った場所。或いはそうであればいいとも、思っていたのかも。)……わたしも、さみしいです。艶子さんと過ごす時は、ずうっときらめいていて……、(彼女が今どんな顔ばせをしているのか、視力の落ちた乙女にはもう見えなかった。相槌をうつように同じく、さみしいと返す音はその指が奏でていた弦の音にも似ていただろう。過ごした時のきらめきは形を変え、まるで瞳に宿ったよう。恋は盲目というからこそこの瞳は盲いたのかしら。それならばこの恋は、いのちみぢかしものなのでしょう。瞳の理由を宝生は知らない。知らないからこそ、途切れた先の音を探して少し彷徨ったあとに、乙女であるからこそ紡げる恋をうたった。)わたしね、艶子さんのこと、すきですよ。(親愛、友愛、彼女がどんな受け取り方をしてもいい。ただとくべつなのだと、わたしは自覚してしまっているからそう、想いを込めるだけ。色褪せる前にうつくしく、ただ告げるだけで満足といった表情でやわらかに微笑んだ花顔は、異彩を嵌めた双眸を蕩かせて。ああ、なんて──ずるいおんななのでしょう。) |
Published:2018/12/18 (Tue) 12:31 [ 31 ] |
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![]() 万丈艶子 |
(どうして、女に生まれたならば籠の鳥のように、いつか摘まれる花のように、生きていかねばならないのでしょう。もしも、決して手に入りはしない自由があったのならば、どんな風に生きていて、どんな風に出会って、どんな風に笑い合っていたのでしょう。――考えても詮無いこと。そしてひとつ確かなことは、自由があったとすればこれほどふたりの間の秘め事が特別になることも無かった。いつか終わる儚い夢であるからこそ、いっとうかけがえのないものだった。たとえ瞳が異彩を宿さずとも、遠からず訪れる別れの時。仮初の、束の間の自由を謳歌し共に過ごした時間を寄る辺として、その先を生きていくのだろう。けれどまだ、箱庭は壊れていない。外側からこじ開けられるとも、内側から自ら開け放つとも。此処にはまだ春があり、ふたりだけの場所だった。きっと、立場が逆であったならば、己の親も同じようにするのだろう。愛情と憐憫と、地位と肩書と。全ての間で均衡を取る時に出す答えはおよそ似通っているのではないだろうか。だから特別、宝生家の人々を冷たいとは思わなかった。それでも寂しいと思う。失うばかりのひとに、また失わせてしまう道を選ばざるを得ないのが。もしも将来、自分が産んだ子供が瞳の色を変えたなら、きっと同じようにせざるを得ないのだろう。いくつも繰り返していく先で、いつか報われる時が来るとしても。ずっと先であろうから、自分達にはあまり縁がない話。早朝の円舞曲もきっと素敵だったでしょう。けれど静けさの中でゆっくりと歩み進むのも、とても心地よかった。手が冷えてしまわないかと心配しては、自分の手のぬくみをそっくり全部移せたらいいのにと思う。)わたくし、小さい頃からいつも手があたたかいのです。冷え知らずで冬には便利で、夏は嫌がられていましたけれど。(他愛のない言葉を返した。ぬくもりが融け合うことを口にしてはいけない気がして。けれど向かう先には、もう現像された写真が待っていることだろう。手を重ねて笑ったふたりの、ほんの三週間前のきらめき。)お会いしようと思っても、難しいですよね…お手紙を送っても、誰かに読み上げてもらうのは何だか嫌で。わたくし、この期に及んでも勝手で我儘なことばかり考えています。花雨さんの瞳が戻って、視力も回復して、お家に戻らずに済むようなことがありはしないかと。(全部を望むのは強欲で、何より虚しい。決して叶わぬと知っているのだから。大切なものと引き換えに奪って失うのと、このまま光を失って大切なものを胸に抱き続けるのと。どちらが幸せなのでしょう。つらい選択の意味を、今一度噛みしめる。何を言おうかと迷って、けれど先に花唇が告げた言葉に胸の奥が握り潰されそうだった。けれどこの答えをひとつ間違ったら、取り返しがつかないことになってしまう。だから、)…ありがとうございます。(ただ、それだけを告げた。肯定も否定も無い言葉は、けれど嘘だって無い。微笑みもきっと、見えていないのが寂しくて悲しくて苦しくて痛くて。けれど淡い青にレエスを宿した瞳が恋が齎したというならば。それはきっと、罪と呼ぶに相応しいのです。)――花雨さん。花雨さんは…目が見えなくなることを、恐ろしいと思いますか?(唐突な問いだった。人々がおよそ肯定する問いに如何なる答えがあろうとも、続ける言葉は変わらない。)わたくし、ちゃんと見つけて参りました。花雨さんの目が、また見えるようになる術。瞳の色は、戻らないそうですが。(けれどその瞳が証であるならば、どこか嬉しく思ってしまう自分もいる。浅ましくて自分が嫌になって、またその瞳に自分を映してほしいという欲望を踏み潰そうとして、けれど消せないまま。ただひとつ、自信を持って言えることがある――幸せであってほしい。) |
Published:2018/12/20 (Thu) 05:22 [ 32 ] |
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![]() 宝生花雨 |
(男に生まれるよりも余程に、不自由であることは否定はいたしません。儘ならず詮無いことの方が多く、御家のためと諦めるべき自由もございます。けれどこうして出逢ったことは、この生まれだからこそのもの。ふたりの秘め事多さも、それが如何に特別かも、思い馳せる儚い夢もすべてがこの出逢いだからこそ。別の出逢いは別のもの、どんな風にか笑いあったとしても、それは別のわたしたちのもの。だからわたしはこの出逢いこそがいっとうかけがえなくいとおしい。たとえこの瞳が異彩を宿し、視力を失いそして、淑女としての見本はおろか御家の為にすらなれなくなったとしても。遠からぬものが今になっただけ、とは流石に言えないけれども、寄る辺とするものは変わりない。あなたと過ごし謳歌した乙女の時を、ふたりだけの春を抱くだけ。なされようを嘆くほど、もののわからぬ娘ではなかったのは宝生の教育の賜物か、それともそういう性格か。さみしくないとは言わずとも、それは表出させることはあるまい。もしも繰り返してゆく先でもしもこのさみしさを和らげる方法が見つかったなら、そんな風に願うだけ。ただ今を生きる自分たちには縁のないことだから、望みはしないだけ。それよりも重なり引かれる手のあたたかさを、幾年も忘れぬように覚えていたかった。)それは素敵。わたしは逆ですね。ひんやりとしていて、夏には気持ちが良いそうです。(いつか妹がそう言っていたのを思い出す。しっとりと柔らかく、ひんやりとしていると。でもいつかあたためてくれるひとができますように。ねえさまはこころがあたたかいから――と、幼き日の懐かしの声が耳奥で響いた気がして、思わず花唇を綻ばせた。彼女との他愛ないこのやりとりが好きだった。きらめきを映せない瞳だけれど、瞼を下ろせばまばゆくひかるものがある。ふたり重ねた思い出に花弁のしおりを挟めるのだったらと、そんなことを思ってしまう。)わたしは嬉しく思いますけれど、艶子さんの外聞が悪くなっては大変ですもの。お手紙は……そうですね、わたしひとりでは読むことも書くことも、できませんから。……艶子さんのお気持ちは、とても嬉しい……嬉しいの。けれどきっと、全てが叶っても今までと同じようにはなりませんわ。(わたしのためなんて言うのは強欲なのだと知っている。けれど彼女の我儘はあんまりにも宝生花雨に都合が良いものばかりなものだから、そんな風にも思えてしまう。浅ましいこころだと知っているから、そっと仕舞い込むところもしようのないもの。されども望まれた通りにすべてが叶っても、けして元通りになどはなれない。それは彼女自身だって理解していることだろう。失いかけた視力を前に揺るがず穏やかな横顔は、まるでそれを受け入れているかのよう。受け入れるというよりは、大事の順序を決めてしまっているとも言えるだろうか。歌う花唇が想いを象れば、それだけで満足そうに微笑むなんてどれだけ勝手なことか。知りながら音にして奏した。礼の言葉を受けても揺らがぬ微笑みは、告げるだけで、などという傲慢さが現れている証左。彼女へ痛みを齎しながらも微笑む瞳のレエスは、薄青に透かされて麗しく恋を咲かせる。咲けば散るものと知っていて、けれど咲かずに散らすにはあまりにも惜しくて。)……恐ろしいです。今まで見つめることが出来たものを見つめられず、暗闇のなかで生きるのはとても、恐ろしい。――でも、(色彩を知るからこそなおのこと、きらめきを覚えているからいまさらに、改めてそれは恐ろしいと思う。そう正直に告げて眉を下げながら、けれど逆説で繋ぐその先は。)……でも、それより恐ろしいことがあると、気づいてしまいましたから。(そんな風に、そっと瞼を閉じて括られる。異彩を宿してからの自分は多くのものを失っていて、ひとつひとつが淑女として積み上げてきたものだった。それはかなしいと確かに感じている、けれど。それよりももっと、このこころを砕かれることの方に痛みを感じてしまったなんて。乙女としてはおかしくなくとも淑女としてはよくないことなのでしょう。けれどそれがほんとうなのです。)……わたしの目が見えるようになるには、今度はわたしの何が必要なのでしょう。(彼女が言い淀むことがあるのなら、きっと視力を戻すにも何か必要なものがあるのでしょう。なにかはわからないけれど――もしもそれがこころを殺さなければいけないものならば、失うのは視力の方で良い。御家の淑女としての役がなくなった今、散ってしまってもこころばかりはただわたしだけのものでいたいから。) |
Published:2018/12/21 (Fri) 08:10 [ 33 ] |
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![]() 万丈艶子 |
(いつか、女に生まれてもずっと不自由が少なくなる時代が来ますように。柵から抜け出せず、行き先を全て決められている生き方しか出来ないのではなく。今よりずっと、沢山のものから選べる日が来ますように。叶わなかった願いと祈りを積み重ねた上のいつか、誰かの涙が流されずに済みますように。――けれど今を生きるしか出来ないから、今選べるものを選び取り、分かち合った時と夢とを寄る辺としましょう。重ねている手は確かで、溶け合うぬくもりも本物。これが最後となるならば、静けさの中で生きるふたつの命はきっと、世界で一番に幸福と哀切を抱いているのでしょう。嘆きはいくらでも重ねられる。けれど重ねるならば、もっと素敵なものが良い。てのひら、ふたりの秘め事、ささめくかのよな笑い声。誰も知らない、ふたりだけの場所で。終わってしまうその瞬間まで。)ふふ、では今は、わたくしの手で暖を取ってくださいな。(花壇の傍らにしゃがみ込んで土に触れてばかりの指先は、少しかさついて、爪にも細かな傷がある。淑女たるべき娘としては、褒められた手ではなかった。けれど花に目一杯の気持ちを向けた結果であるから恥じてはいない。この手があったから、綺麗な花を沢山見てもらえた。もう、その瞳に花が見えなくとも。)……花雨さんに会いに行って悪くなるくらいの外聞なら、最初から無ければ良かったのに。(自分の外聞とは、つまり家の外聞だ。万丈家が今後も続き力を持つ家で在れるように。良家に生まれた女子は皆、家の為に生きねばならない。親しいひとを見舞うことすら儘ならぬとは、何と狭量なことか。お家の為と言われて、どれだけの人々が涙をのんできたのだろう。自分とてその仕組みの中から抜け出せない以上、足掻いたところでたかが知れている。それとも、そう思い込んでいるだけだろうか。壊れてしまえば決して元通りにはならない。継いだところで痕は残って、欠けたところは欠けたまま。もう二度と、共に過ごした日々は帰り来ないと分かっている。箱庭から春は去る。ふたりきりだった場所にひとりぼっち――違う、ふたりとも出て行くしかない。もう少し、あと少し。ふたりで共にいられたら、見えるものもまた違っていたのでしょうか。淡い青色、レエスに彩られた瞳。そこに宿るものをもう、気のせいだと一蹴など出来ない。迷いなく、自分の想いも声に乗せて伝えてしまいたかった。指先でつつけば容易く弾けそう。鳳仙花だってもう少しは堪えるでしょうに。けれど唇をきつく引き結んで、音奏でるかの如き声を聞く。嗚呼、どうしましょう。いっとう恐れるものが光を掴む為に必要なものであるとしたら、それを選ぶのは本当に最善なのでしょうか。取り戻せないものばかりの中、光だけでも得られたら。その先、違う何かを掴むきっかけを生みはしなかと期待していた。けれどそれは、嘘ではないけれども後からついてきた理由。本当は、もっと単純で浅ましい想い。貴女の瞳に、自分が二度と映らないのが恐ろしくてたまらないのです。またその瞳に、自分を映して微笑んでほしいのです。どちらを選んでも、必ず何かが失われる。)――大切なものと引き換えだと。(あのふたりは初恋と言った。それ以外の何かも、病を退ける為の鍵となり得るのかもしれない。けれども確かな答えはひとつきり。想いを踏み砕くのは、とても勇気が要ることだと。その痛みを抱えてあのふたりは今を生きているのだと。思うほどに苦しくなって、泣きそうになるのを堪えねばならなかった。貴女の為ですと嘯いたところで、死んでも尚、この痛みは付いて回るのでしょう。未だ選びきれぬまま。握っている手に少し力を込めた。答えを求めるように。でも誰に求めていたのでしょう。貴女でしょうか、自分自身でしょうか。それすらも分からないままに。重ねた手の間、生まれるふたりのぬくもりばかりがあたたかく優しく、切なかった。) |
Published:2018/12/23 (Sun) 01:39 [ 34 ] |
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![]() 宝生花雨 |
(夢見るいつかはそう遠くもなく形になるものかもしれない。けれどいつかは今ではないので、重ねるものは遠からぬ日にではなく今心震わせるものがいい。思い浮かべた時にすてきねとと笑えるような、ふたり重ねてきた秘め事のような。あたたかき春をよるべとして、ただただ微笑んでいられるように。)もうじゅうぶん、あたたかいですよ。(少しかさついた指先は、そのぶん愛情を注いでいる証だと知っている。今この瞳にはもうその綺麗な花を映すことは叶わないけれど、めいいっぱいに愛されて麗しく咲いた花をいくつだって憶えている。それはこの指先に愛された姿で、だからこそこのあたたかい指先をよりいとおしく思う。てのひらも、こころも、もう十分あたたかいのだと微笑むのも偽りなく。)……生まれた時から切り離せないものですもの。(生まれた御家の身分に関わらず、それはいつだってついて回るもの。それがすこうし他よりも大きく作用する御家に生まれただけ。良家に生まれ多くの教養を望まれる代わり、裕福に育てられたものの義務に等しい。生まれた場所を恨んだことは異彩を宿してからも一度たりとてなく、だからこそ子女として望まれる形の見本として手本のように生きてきた。失った今とて、その御家の為として乙女の時を終えようとしている。それでも恨みはせず――そう、紡いだものだけを胸に大切に抱えて常春の箱庭を後にするのだ。遅かれ早かれふたりきりではいれなくなる、日々は過ぎ行くばかりで返り来ないものだから。子女として御家の為に在るならばともかくとして、この瞳では時折顔を合わせたりお手紙のやり取りすらもできないだろう。それなら変わらぬ些末より、あと僅かなふたり共に在る時を少しでも多く、そのきらめきを少しでも多く感じて焼き付けておきたい。もはや秘める素振りも見せずに瞳に融かす愛情は、きっともう今しか伝えることなど出来ないから。恋を咲かせたレエス模様の瞳は、彼女の苦悩を映す事すら叶わない。ただその息遣いや空気の揺れ、聞こえる音や触れるものを頼りに想像をするだけ。弦の音がこころを映して揺らすように、誰かの奏する音もまた同じと知っている。それならあなたは――いま、どんなことを想っているのでしょう。)……大切な ものと。(反復するように声が落ちる。今のわたしにとっていっとう大切なものとは何でしょうか。それはきっと、いいえ考えるまでもなくこの、こころなのでしょう。御家の為の子女ではなくなったあの時、確かにとても苦しかった。とても胸が痛かった。けれどわたしはとても薄情なおんなだったから、何よりも強く浮かんだのがあなたの微笑んだ顔だった。きらめきに満ちて、花のように咲くその顔だった。それだけできっともう、答えは明白だったのでしょう。見えずとも、困ったように眉が下がった自覚があった。そのまま彼女のいる方へと視線を向けたつもり。ちゃんと顔を見られているかは、自信がないけれど。)……このこころと引き換えに、この視力が戻るのなら……ごめんなさい、艶子さん。折角見つけてきてくれたのに、わたしは……このこころだけは捨てられません。(暗闇は恐ろしい、あなたのことをもう見つめることが出来ないのだって苦しい。でも、このこころだけは捨てられない。今だけはと思っていたものだった。いつかはそっとしまって諦めなければいけないものだと。そうしてこころを捧げる先は、将来夫となる方になるのだと。けれどもう、御家の為や将来の旦那さまへ砕く必要のなくなったこころは皮肉なことに、異彩を宿し視力が失われたことによって自由となった。今だけは、いいでしょう?そう思って乙女の時を謳歌した。けれどもうたくさんを差し出したから、これだけは――いいでしょう?視力が戻ったところで、異彩を宿したままならば御家の為に呼び戻されることもそうないのでしょう。そうなったとき、どちらにしても痛みを抱えて生きてゆくのならば、あなたのこともあなたが手を掛けた花ももう、見つめることが叶わなくっても。あなたのことを、想っていたい。)お返事が欲しいとは、申しません。ただ、好きでいさせてください。艶子さん、……あなたのことを、ささやかにでも想わせて。(重ねた指先に少しだけ力が籠る。ただ捨てず、恋ふることだけはと薄青の瞳が揺れた。これだけは、このほんとうだけは取り上げないで欲しいと、奥底で切に願いながら。) |
Published:2018/12/24 (Mon) 01:29 [ 35 ] |
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![]() 万丈艶子 |
(もっと自由な世に生まれていたら、選べるものが多かったかもしれない。ドレスの女ふたりが手を取り合って円舞曲のステップを踏んでも、あたたかく迎えられたのかもしれない。夢のかけらをなぞる度に、傷が深くなるかのよう。全部、自分達には叶わないこと。)では、冷えるといけないので、離さないでくださいね。(手を重ねて握っている理由は、幾つあってもいい。この先ずっとあたためることは叶わないから、せめて今暫くはぬくもりを融かして渡していたい。弦から美しい音を生む指先が、もう少し春の中に在れるように。かつてのようは音を奏でられないとしても、その手が大好きだった。)そう、そうですね。分かっているのですけれど…(そのような家に生まれてしまったから仕方がない。貧しい家に生まれれば、学ぶことさえ出来なかったかもしれない。良家に生まれたからこそ得られたものも得られなかったものも数多く、その中で決して手に入れられない何かを望むのは烏滸がましい。理解はしているけれども、感情が追いついて来ない。まだまだこどもなのだと言われれば、否定も出来ないくらいに。些細なことで外聞が崩れ落ちれば、御家の先が無い。そうなれば困るのは自分だけではない。きょうだいも、両親も、連なる血を持つ者が皆。そう考えると結局、想いを振り翳す気が萎れてしまう。激情のようでいて容易く曲げられてしまう。幼い頃はもっと聞き分け悪くしていたことも多かったのに、いつの間にこのような娘になったのかしら。我が事ながら不思議だった。そして寂しくもあった。)…わたくし、色々な道を考えました。花雨さんにとって、何が幸いなのか。自分が選びたいものは何か。でも、どちらも最初よりずっと、分からなくなってしまいました。だって何を選んでも、何かは失ってしまって…それは仕方ないと分かっていても、とても悔しくて仕方ないのです。(何を選んでも、失うものの重さも大きさも、取り返しがつくものではない。自分の手は、あんまりにも小さい。)わたくし、とても浅ましい人間なのです。花雨さんの目がまた見えるようになったら、またわたくしの姿を瞳に映してもらえると思いました。花を見ていただくよりずっと…自分を見てほしいと思っていました。今も…どんなにか、花雨さんの瞳に、光が戻ったら…(ほたほた、目から涙の粒が落ちていく。雨よりもずっと少なく、ずっとゆっくりと。着物の上に染みを作っていく。泣いて何かが変えられるなら、涙が枯れ果てるまで泣くのに。この涙はただ、自分の心の軋みが姿を変えただけのもの。誰の為でもない涙。何を選んだとしても「これは貴女の為なのですと、傲慢でも偽善でも言えたほうが良かったのだろうか。いっそ自分を憎んで、それを糧にされたって、先に見えるものがあるなら。そう思っていたのに。握っていた手に、もう一方の手を重ねる。包み込むんだこのぬくもりも、今日限りなのでしょう。どんなに文を書こうとも、お見舞いをしたいと請うても、誰も許してはくれないのでしょう。美しい黒髪も、レエスが舞う瞳も。全部全部、見納め。二度目は無い。引き攣る喉をどうにか震わせて出した声が、みっともなくて仕方ないのは分かっているけれど。涙が止まらなければ嗚咽も絶えなくて、子女の美しさなんてひとかけらもありはしない。)ごめんなさい、ごめんなさい…選べなくて…せめて、見えていたら…違う道があったかも、しれないのに……優しくも出来ない、冷たくも出来ない、半端者でごめんなさい……!(大粒の涙が手の上に落ちる。涙なんて枯れてしまえばいいのに。それでも尽きずに目を濡らすから、また流れていく。坂道の途中、並び立つ自分達はどんな風に見えるのだろう。悲しい別れの時のように見えるでしょうか。それもきっと、間違いではないけれど。ただ悲しいだけで終われるものを、きっと恋とは呼びはしない。種が芽吹く土と同じ色の瞳で見つめるひとの、双眸に色を宿し光を奪ったのは自分なのだから。)花雨さん…わたくし、花雨さんをお慕いしています。好きです。誰よりも。叶わないと分かっていても、ずっと一緒にいたかった。(ずっと一緒。容易く響くことがどれだけ難しいかを知っている。病を得ずに生きたとしても、それぞれの道の先でどれだけ時間が重なったかは分からない。元より分かたれる道を歩まねばならなかったから、束の間の夢に遊んでいたのです。箱庭の中に終わらない春を招いて。箱庭の中にしか無い春の中で。包み込む手をそっと持ち上げて、自分の胸元に当てる。感じられるでしょうか。脈打つ音。命の響き。今も息衝く心の声。)わたくしの心は、どうか。花雨さんが持って行ってください。…ね?ふたりだけの、秘密ですよ。(その手に掴んでしまって。貴女と共に連れて行って。その先に何があるかは分からないけれども、せめて褪せぬ想い出が貴女の寄る辺になれますように。) |
Published:2018/12/25 (Tue) 18:50 [ 36 ] |
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![]() 宝生花雨 |
(いつかと夢見る未来はどうしたって今には為り得なくて、きっとそんなに贅沢なことを望んでいるわけではないのに、ささやかとは言い難い願いを抱いている。もしかしたら、はこの世にはない。起こったことがすべてだ。どれ程瑕が深くなろうとも、痛みごと抱いていくしかない。)ええ。……ふふ、優しい温度。(重なるぬくもりに緩めるのは伝わるあたたかさのみならず、寄せられたこころも含めてのこと。忘れられないもののひとつ、この先幾度となく思い出すだろう優しく愛情深い温度と、その感触。)でもね、生まれが此処で良かったとも思っていますよ。(環境の差を差し引いてもこの良家に、宝生の御家に生まれて良かったとこころから。儘ならぬしがらみも多く、その分身につけなければいけない教養も数多くあったし、与えられる分の不自由もあった。けれどこの生まれだからこそ、あなたに出逢えたのだと思うから。幼少期からささやかな秘密を共有して、内緒ねと人差し指を立てて微笑んで手を繋いだ、そんな思い出も残すことが出来たから。異彩を宿し視力を失う病を患い、少なからず御家に迷惑をかけたことには間違いない。その自覚があるにしては憤慨もののこころであろう。ひどいおんな、我ながらそう思う。それでも想いは変わらない。御家の意向に従いながら、けれど抱えるこころだけはただ自らのものとして。これほどに強情なおんなとはいままで、自分でも知らなかった。)……そうですね。すべてを失わずに済むのでしたら、わたしもそれがいちばんと思いますけれど。(何かを選ばない時はきっと、此度に関わらずあるもので。選べないものを天秤にかけなければいけない時もきっとある。何かを諦めて、失って、取りこぼしながらも手のひらに残ったものを大切にしていくしかこれまでも、これからもきっとできやしないもの。時計の針が進むことを止めないように、選べずとも待ってくれないものだから。)……艶子さんがそう想ってくださることを浅ましいというのなら、わたしのほうがずうっと浅ましく、ひどいおんなです。――わたしね、見えなくなることがとっても恐ろしかったです。あなたの育てたお花が見られないのも、お花を見つめるあなたが見られないのも、わたしを見つめてくれるあなたのきらきらとした瞳を見つめることが出来ないのも、とっても悲しかった。嫁がなくていいと聞かされた時に、もうわたしに御家の為に出来ることがないことも、とてもつらかったです。……けれどね、そのあとわたし、思ってしまったんです。それならずうっと、艶子さんのことを想っていられるのじゃないかしらって。(薄情なおんなでしょう。御家の為を捨てられなかった癖、叶わぬなら想いだけでも抱いていられるのではなんて思ったのですから。瞳に光が戻っても、異彩を宿したままならば御家の為にはきっともうなれはしない。その時見つめる世界にいっとう想うあなたを見つめられないのなら、せめてこころだけ残して閉ざされた世界に浮かべていることを選ぶだなんて、ひどく勝手なおんなでしょう。それでも天秤に世界か、あなたか、どちらかに傾けるならば今のわたしは迷いなくあなたを選ぶ。叶わなくっても、こころが翳ってしまうほうが軋んでしまうから。でもそれは、流れる彼女の涙を映すことも叶わないということ。拭って差し上げることも容易ではないということ。やっぱりひどいおんなね、何を選んでもあなたを苦しめてしまう。涙させてしまう。重ねられた手へ力を込めることで応えて、濡れて震えた声を耳にして探すようにそろりと片手を伸ばそうとする。その頬へ触れたくて。)選べないことは、なんにも悪いことではなくってよ。……選べないほどに迷ってくれて、ありがとう。(ぺたり、探し当てるように彼女の頬へと掌が触れる。濡れた肌をそうっと撫でながら、新しく溢れてくる粒を受け止めて浮かべた微笑みはちゃんと微笑みとして形作れていただろうか。瞳の奥がとても熱い、私にはほとんど何も見えないのに、じんわりと広がるそれだけは分かった。坂の途中で並び立つふたりを見咎めるものなど、早朝の今にはきっとだれもいない。別れの時のように見えるのならば、きっとそう間違いでもないのでしょう。艶めく黒が薄青になったこと、浮かんだレエスが舞うように繊細なこと、けれど光を得られないこと、どれも誰の所為でもない。ただ恋をしただけだ。初々しく、脆く壊れやすい初恋を、乙女が宿しただけ。あなたも、わたしも。)……ありがとう、艶子さん。わたしも、好きです。艶子さんが誰よりも、大好きです。(ずっと一緒、それは夢見ても叶えることが難しいといちばん最初に知ったことだったかもしれない。だってわたしたちは乙女であるけれど、同時に淑女となることを定めらているのだから。箱庭の中の終わらない春の中には、ずうっとはいられない。それでも描いてみた夢は、木漏れ日のようにきらめくだけのものになる筈だった。今は痛みと共に、それでも捨てられぬ想いとして抱えていくものになるだろう。束の間の夢、幻、けれど胡蝶のように惑いはしない。これはわたしの、わたしたちだけのもの。押し当てられたところから感じる命の音、脈打つ響きと共に息衝いたこころも、すべて。)頂いて、いきますね。ええ、これはわたしたちふたりだけの秘密です。(ほろり、レエスを浮かべる薄青から一粒が零れ落ちる。透徹はゆらゆらと揺らめきそのひとすじさえも白い模様を映すよう。それから精一杯、あなたのためだけに微笑みましょう。あなただけに見せる花顔の表情で、頂いたこころごと褪せず想い続ける約束のように。ふたりだけのさいごのひみつ、あなたにもどうかつらいだけのものになりませんように。)ね、艶子さん。……わたしを好きになってくれて、慕ってくださって……ありがとう。(いつか、見つめられないことが残念と思う日が来るでしょう。いつかなどとは言わず、ことあるごとにずうっとそう思い続けるかもしれません。けれどその次には必ずこうも思うでしょう。あなたをこうして想うことが出来て、とても幸せですと。あなたに好いてもらえたことが、誰に語ることもないふたりだけの秘め事であっても、わたしのいっとう誇らしい部分なのですと。) |
Published:2018/12/28 (Fri) 01:01 [ 37 ] |
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![]() 万丈艶子 |
(優しい温度と言ってくれる声が好き。弦を奏でる手、繊細な指先。癖のない黒髪。最初に会った時は、思い出せる限りでは憧れに似た感情と、姉のように慕わしく思う気持ちを抱いていた。心がどのように変わるかは分からない。恋も知らない砌では尚更。恋は甘いだけではない。苦味もある。痛みもある。それでも恋う心は容易く掻き消えず、故にこそ病にさえ喩えられるのでしょう。)……そう、そうです。だって万丈に生まれなかったら…花雨さんとは会えなかったのですから。どんなに生まれを恨むことがあっても、ただその一点が、恨みも全部流してしまいそうなくらい。(何もかもを恨めたら割り切れたのかもしれないが、物事とはおおよそ、そう単純には出来ていない。小娘と呼ばれるような齢でも理解していることだ。いつか摘まれる運命ならば、摘まれるまでの自由を謳歌ようとしたとて、何の罪があるというのでしょう。抗おうとしたわけもなく、今あるときに夢を見ていただけ。それとも夢から醒めるには、痛みが必要だというのでしょうか。それもまた、正解のひとつではあるのでしょう。今に至るには、何が欠けても足されてもいけなかった。万丈艶子でなければ。夫となるひとに心全て捧げぬのを不義理と言うならば、捧げる分はこれから作りましょう。だってもう、今あるものは渡してしまった。こっそりと、秘密裏に。けれどこれは失うというよりも、ひとつの結実のようにさえ思うのだから、不思議な心地に満ちている。恋とはどのようなものかと問われたら、花のようです、と答えましょう。美しく、芳しく、毒も棘も持っている。そして、己に深く根を張るもの。どうしようもなく心惹かれてやまない、手を伸ばしたくなるもの。)…花雨さんにそうやってずっと想っていただけるのなら、わたくし、随分な女ですね。(それは良い意味でも、悪い意味でも。けれど想われることを嬉しく思う以上、結局足し引きすれば嬉しいが強く残る。心を縛り付けたいわけではない。だからずっと想えだなんて決して言わない。言いたくはない。そう言ってもらえるこの身が、どれほど幸福なのか。体中に満ちる、熱と、痛みと。頬に触れるまでの手の動きのぎこちなさから、否が応でも分かってしまう。異彩宿した瞳が、もう光を宿せないのだと。ただ恋をしただけ。きっと、恋とは多くを与え奪っていくもの。触れれば壊れてしまいそうな脆い初恋は、特別な輝きを持つからこそ尚更。)……わたくし、花雨さんを選びます。(迷ってばかりの自分を、許してほしかったのかもしれない。けれどそれ以上に、幸せであってほしい。自分では決して渡せないものが世の中には多くあるから。けれど女の身であるのを悔いはしません。だってふたりで重ねた日々は、互いに女でなければあり得なかったのだから。きっと今、世界で一番切ないふたりとは、自分達だ。町も人も眠る早朝、選択と喪失と共にそれぞれの道を進んでいかねばならなくなる。きっと二度と、交わらない道でしょう。だからどうか、この朝、壊れてしまってほしいとさえ思う心臓の叫びを覚えていてください。これは決して、悲しみだけで出来ている鼓動ではないのだと。強さや早さなんて、いつか忘れてしまってもいいのです。此処には悲しみだけではなかったのだと、初恋が叶った喜びも確かにあるのだと。それだけは、どうか忘れないで。浮かべられた微笑みに、うまく微笑みかえせたかはあまり自信が無かった。涙は止まらなくて、ずっと泣いてばかりなものだから。涙一粒、その瞳から零れ落ちたのも、ふたりだけのひみつ。もう見えないなら、とびっきりの声で伝えよう。貴女だけが知る響きで。心の奥から震わせるように。)わたくしにも、言わせてください。花雨さん。わたくしを、好いてくださって…ありがとうございます。(いつか終わると分かっていた輝く日々の、愛おしさが連れてくる痛みをかつての自分は少しも知りませんでした。その痛みさえも全て尊いとはまだ、とても言い切れない。それでも貴女に心を渡して、全てを抱いて生きていくしかない。きっと幾度でも思い出す、帰り来ないふたりだけの箱庭、ふたりだけの常春。貴女と共に咲いていた季節。生きる中、至るところで貴女のかけらを見出して。この世界は、貴女によって繊細なレエスをかけられ、二度とそれを外すことは無いのですから。) |
Published:2018/12/29 (Sat) 23:41 [ 39 ] |
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