なんでも、西洋の言葉で”薔薇色の人生”という意味なんだとか。
千代ね、それを聞いて、まるで千代のための言葉と思ったのよ。
綺麗で、可愛くて、いい香りに包まれて──幸せばかりが咲いているの。
ね、あなたもそう思うでしょう? 千代の世界は、そういうものだって。
山縣 八千代
Yachiyo Yamagata
Profile/Data
誕生日│学年│身長│バストサイズ
宝石(石言葉)│印象色
愛されることに対して微塵の疑問も抱かぬ傲慢な娘だ。けれど、娘はその傲慢さを認知すらしていない無邪気さも備えていた。自らの存在価値の高さを盲目的に肯定し、また、他者が自ら向ける視線を顧ることもしない。正確には、娘は、自らへ向けられる視線に込められた負の感情を無意識の内に削ぎ落として仕舞うような、絶対的な自信をその身に飼っている。斯様に傲慢な性情を持した所以は、両親の育て方に起因するだろう。生まれは船舶業を営む一商人の家。爵位等、権威に通ずるものはなに一つ持ってはいなかったが、所謂大戦景気によって財ばかりは膨らんでいった。娘の母は大層な浪費家で、御雇外国人であった仏蘭西人設計士にサロンを有する自宅建物を建築させた後は昼も夜も問わず女王の如き振る舞いを繰り返し、娘へと「新しき世界」の華々しさを植え付けていく。他方、成金に対する上流社会の認識等、白眼視以外にありえぬことは明白で、父親は名実共に「一流」へとのし上がることばかりに躍起になっていた。さりとて、一朝一夕に得られぬからこその権威。そこで娘の両親が思い至ったのが「権威ある華族」とのパイプを得ることであり、その重要な任を人知れず与えられたのが一人娘たる八千代であった。両親にとって娘は何れ家に恒久の栄華を齎す代え難き存在。故に何かにつけては「あなたは私たちの天使よ。」とお姫様以上の厚遇を施し、宛ら宝物のように日々──娘が欲する物は全て与え、全てを肯定し、嫌なことは娘が認識するよりも先に遠ざけ──甘やかし続けた。かくして膨らんだ自尊心は人一倍。難しいことや辛いことは誰かが代わりにやってくれて当然という世界を生きる娘では、鏡に映る娘自身の姿すら確りと捉えられていないのだろう。
祖は徳川三代将軍の治世にまで遡る。受け継がれ続けた血脈は、先の戊辰戦争にて参謀に任じられ華々しい武勲をあげた。かかる勲功により遂には子爵に叙せられる誉れを得たのが穂波家の前々当主。されど前当主の暗愚さが名家に暗雲を齎し、権威はあるも財を持たぬ平民華族と陰口を叩かれるに至る。故に穂波家にとっても財あれど権威なき山縣家との縁談は良縁であった。次期当主とされているのは図体と態度ばかりがでかい放蕩息子。齢二一。この男自身、山縣と同じように盲目的に自らの存在価値を肯定し、更には、甘やかされて生きてきた身であるがゆえに、ある種似たもの同士であることは否めない。なお、両者の直接の面識は10年ほど前に一度、結納の契を交わすとして執り行われた会食にて顔を合わせた程度である。