あなたがたがしあわせになりますように。
そして、あなたのことを永遠に忘れられないだれかのことは、どうか忘れてください

恋情は涙石となりて、大海に沈む

***Story***

むかしむかし ある街に それは可憐な女の子がおりました。
“家の事情”で、両親と離れてひとり 遠い街からやってきたのです。
優しいおじいさんとおばあさんのもとで 女の子はのびのびと過ごします。

近くには、女の子と歳の近い男の子が住んでおりました。
大きな“夢”を抱えた、誠実な男の子でした。

ふたりは すぐに仲良くなりました。
そして互いに心惹かれ合うまで そう時間もかかりませんでした。

ふたりが出逢って、三度目の春がすぎた頃。
その心いっぱいに満ちた想いを ふたりは分かち合いました。


女の子はしあわせでした。
とても、とても しあわせだったのです。
けれど 花がいずれは枯れてしまうように。
泡沫がたやすく弾けてしまうように。

うつくしい幸福ほど 一瞬で立ち消えてしまうものなのです。




それは、いつか何処かで聞いたお伽噺。
どうして急にそんな話を思い出したのかは分からない。
夢追う少年とうら若き乙女の、初めての恋の結末だって覚えてない。けれど。

「……“初恋は叶わない”なんて、ただの伝説でしょ。」

目指す舞台がある。掴みたい夢がある。
離したくない手が、温もりが、笑顔がある。

天秤にかけて何方か一つしか得られないなんて、あるわけない。
どちらも手にしてこそ、立てるステージがあるはずだと

ぼくらはそう、信じてた。

And More

此度の物語の主人公のひとり──少女は、人魚です。それも人魚の国を統べる女王陛下の一人娘。王位継承権第一位に序せられる「人魚姫」でした。人魚の国の王族は生まれ落ちると同時に、王家に仕える魔女より涙の形を模した無色透明な宝石を授けられます。それは、いつか、生まれ落ちた姫君が女王に即位するときのための要石。人魚の国においては戴冠式にその魔法石をあしらった王冠を使用することが慣例となっておりました。そして、その魔法石の色が美しければ美しいほど、即位した女王は賢王であるとされ、永きに亘る御代が約束されるという言い伝えが国民全てに浸透しています。では、魔法石を色付かせる要因は何か。それはもっとも胸を焦がす「愛」の感情。けれど彼女は人魚族の次期女王。人魚の国ではまっさらな恋をすることなど許される筈がありません。故に人魚の姫は少女期を迎えると人魚ぞくであるという記憶を一時的に消し去る秘薬を服用し、自らを正真正銘人間であると認識した状態で人間界へと降りることを義務として課されます。記憶が戻るトリガーは、想い人とその思いを通わせること──即ち、初恋が叶うと同時、少女はその恋が叶えてはいけない恋であったことを知るのです。記憶が戻ると同時、少女の体は徐々に「人魚」のものへと戻っていくことでしょう。そうして魔法石はその時の痛みや悲しみすらを吸収して、恋の色を鮮やかに湛えるのです。(より詳しい説明は引き続き「世界観」をご確認ください。)