Story
「あの方は、恋の痛みをご存知だから、あんなにも素敵な演技ができるのね。」
舞台の上で華やかに舞い、歌うあの御方。
演目は、美しいはずの恋の、苦しさと切なさに惑う女性のはなし。
何よりも、切なさを融かしたひとみの色彩に、観客の皆が目を奪われた。
それは、”わたし”も等しく。
憧れていた女学院への入学を果たし、新入生歓迎のための式典において、
演劇部の花形としてスポットライトを浴びるひとりの女性に、そのひとみに釘付けになった。
玉眼症≪ぎょくがんしょう≫
ひとみが宝石のようになる病があるらしい。
多感期の少女のみに発症する、確立した治療法の無いふしぎな病気。
けれど、盲目にまで至る患者は少ないと聞く。
そうやって快復に至る乙女は、世界の彩を失わないことへの代償に、宝石のようでいて、けれど本物に比すると随分と翳りある虹彩と、恋を失った痛みを抱えて生きてゆくことを強いられる、とか。
「あのお方が、失った恋というものはどれ程、うつくしいものなのかしら。」
終劇の後、ぽつりと呟いた言葉。その結びと同時、目の奥がつきんと痛んだ。
埃が入ってしまったみたい、と友人に一言残し、
講堂を抜け、広く古い校舎を彷徨って漸く見つけた化粧室。
けれど、何度、ひとみを洗っても、つきつきと、目の奥から熱を帯びた痛みを感じる。
気のせいだろうか──自分自身の輪郭が、幽かに歪んだかのように見えた。
『あら。そこの、あなた──新入生?迷ってしまったのかしら。それよりも、具合でも悪いの?』
──鈴の音のような声音が響く。聞き間違うはずもない。
先頃まで皆を魅了した、あのソプラノ。
とっさに顔を上げて、鏡越しに、”彼女”の姿を見る。
彼女の眼窩には、矢張り、ややくすんだ色の双眸が嵌められていた。
ぱちり。
鏡を介して視線が絡んだだけ。たったそれだけなのに、世界が崩れる音を聴いた。
そうして、わたしは、彼女に、恋してしまったのです。
けれど、その恋は、熱と痛みでわたしを蝕むものでした。
「恋心は、星屑みたいにキラキラと輝いて、宝石みたいに綺麗で、
お花のように美しくて、お日様のように温かい。 ──でも、いつの間にか、
ちっぽけなわたしの中だけじゃ抱え切れないくらいの眩さと熱を帯びて、
少しずつわたしの世界を焦がしていくの。」
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More
都心から離れた長閑な街にある全寮制の名門女学院──私立花洛学園。貞淑と純真そして慈愛を校訓として掲げる学び舎の門を毎年くぐるのは上流階級の家庭にて蝶よ花よと育てられた麗しい才媛たち。とはいえ、成績優秀な学生に限った特待生枠も極々少数ではありますが設けられています。そんな乙女達の秘密の花園が「ブーゲンビリアをあなたに」の舞台となります。
巷では、「玉眼症」という病が少女達の中で流行っていました。仏像の目をより本物らしくみせるために水晶の板をはめ込む技法──玉眼。神仏のまなこに嵌められた水晶のように、少女達のひとみが変わっていく病。罹患するのは、多感期の少女たちのみであり、発症のトリガーは「初恋に落ちること」です。病の進行は、恋心の成長に伴うため人それぞれではありますが、初恋が叶うと其の瞳は本物の宝石のように変わり、その美しさを得る代償として視力を失ってしまいます。治療方法は未だ確立しておらず、光無き世界から逃れる唯一の方法は、初恋を失う──即ち、失恋すること、でした。
初恋はかなわぬものといいます。けれど、その言葉に秘められた真実が、
“初恋は叶えてはいけないもの”だったとしたら──
恋心が色を作って、光を作って、ひとみに集って、形になって、耀きを放つ。けれど、その代償として、「視覚」という感覚を失っていく。視覚以外の五感は残っているからこそ、好きになる心は留められない。だけど、好きになればなるほど、そのひとを見られなくなってしまう。宝石という形で具現化されていく恋心の美しさと、愛おしい人をみられなくなってしまう切なさ。甘いだけではない初恋の熱で、その身を焦がしてはみませんか?
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FAQ
玉眼症<ギョクガンショウ>
多感期の少女たちのみに発症する“恋心が強まるに伴い瞳が宝石化する”不可思議な病。治療法はなく、現在わかっているのは下記の情報のみ。
・発症するのは10代後半の少女のみ
・発症のトリガーは、初恋に落ちること(但し全員が罹患するわけではない)
・症状の進行は人それぞれ。恋心が強まると速まる。
・初期症状は、目の奥が熱を持ったように痛み、時折視界がぼやける程度。
・中期から虹彩の色に変化が始まる。また、視覚も徐々に衰えていく。
・初恋が叶うと、瞳が完全に宝石のようになり、視覚も失う。
・初恋が叶わなかった場合、瞳の色彩がややくすんだものに変わり、視力は回復。
花洛学園<カラクガクエン>
全寮制の由緒ある名門女子学院。花組、星組、月組、雪組とクラスが割り振られており、部活動も盛んである。特に、演劇部は学園の花形であり、一部の生徒には熱狂的なファンもいるという噂も。生徒の多くは上流階級の才媛達であるが、最近では特待生制度の導入により、ちらほらと一般階級の学生も見られるようになったとか。
乙女たち<オトメタチ>
「ブーゲンビリアをあなたに」の紡ぎ手となるPCは先輩少女と後輩少女の2人となります。このうち、先輩については、学年を3年生、部活を演劇部に固定させていただき、後輩少女については、学年を1年生、部活は演劇部以外とさせていただきます。
また、
先輩:元玉眼症患者であるが、初恋は叶わず、視力は失っていない。
後輩:新入生歓迎の行事において、先輩に一目惚れし、玉眼症を患う。
という点は共通事項として設定させていただきますことをご了承下さい。
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Info
Master
陽(@akicres1106)
真琴(@coco_macoco)
森本(@kurimorisann)
Title
ブーゲンビリアをあなたに
Twitter
@bgnvla_f_y
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